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2002年12月14日(土)
心に染みた、偶然のBGM。


「幽玄漫玉日記(6)」(桜玉吉著・エンターブレイン)より。

(昨年9月11日の同時多発テロの情勢不安定な頃、半ばむりやり沖縄を訪れたときのエピソードから)

【翌日からは、バイクを借りて、海にばかりいた。
日がな一日 陽光に晒され
夕方、キャンプハンセン前の小さな歓楽街の周りでバイクを止める。
夕日に煙る基地出入口は全く静かで 街中で米兵に混じりタコスを買い
 食いながらそぞろ歩く。
 街中も人はまばらで やけに薄暗くひっそりとしており オレンジ色の空が恐ろしい。
 とある店の前で 足が止まった。

 大音量で流れるボブマーレイの「ノーウーマン ノークライ」
 参った。 しみた。】

〜〜〜〜〜〜〜

 この間、テレビでガンダム(テレビ版)の最終回を観ていたら、僕の記憶にあるガンダムの最終回と、どこかが違ったのです。どうしてなんだろう?考えていたら、思い当たる節が。
 ああそうか、これはテレビ版だから、「めぐりあい宇宙」が流れてこないんだなあ、と。
 人間の記憶というのは、ときにはBGMとセットになっていることもあるみたいです。

 ところで、BGMというのは、もちろん計算されたBGM(映画音楽とか、結婚式のようなイベントのBGMとか)というのもあるのですが、意外と、偶然のBGMとセットになった情景が記憶に残っていることってありませんか。
 それは、ちょうとカーステレオから流れていたとか、部屋で流れていたとか。
 
 僕には、10年くらい前の記憶が強く残っています。
 それは、ちょうど冬の時期。ずっと好きだった女の子に意を決して告白して、見事玉砕しての帰り道のこと。もう真夜中で、僕は放心状態で、ついさっきまで彼女が座っていた助手席を見ていました。
 すると、カーステレオからは、広瀬香美の「ロマンスの神様」が…
「ボーイ・ミーツ・ガール、ロマ〜ンスのかみさま…」

 それまでは、平然としていたつもり、だったのですが、
なんだか、あまりの悲惨さと滑稽さに笑い泣き、でした。
 そのあまりのタイミングの悪さも、今となってはいい思い出なのですが。

 あと、末期の癌の患者さんの部屋に行ったときに、偶然、松任谷由実「ユーミン・ベスト」の「翳りゆく部屋」がCDから流れていたこともありました。
「か〜が〜やきは〜もど〜らない〜 わ〜たあしが〜 いま〜」
まで聴いたときに「あっ、次の歌詞は『死んでも〜』だ、いかん、それは…」と思いつつも、急に患者さんの私物のCDを止めるわけにもいかず、内心すごく気まずかったのを今でも覚えています。

 確かに、計算されつくしたBGMもいいけれど、偶然耳にとびこんでくる無作為のBGMが心に染みることって、けっこうありませんか?