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2002年04月02日(火)
2002年4月2日。

幻冬舎ホームページ「アンテナ」「モザイク」改稿にあたって〜田口ランディさんの著書内での無断引用についてのコメントより抜粋。

【私は自分がパソコン通信の会議室の延長線上で文章を書いて来たことを認識した。現実的には私の本が印刷物になっているのに、あまりにも急激にデビューしてしまったために、ただただ書き捨ててきたような状態だったのだ。
(中略)
 私としては、藤森さん(作品を無断引用された人)と一度でもいいから、会って話がしたい、電話でもいいからお話しさせてほしい、ということを大場氏を通して再三お願いしていた。
 それは、実在の人物と自分がやりとりしているのだ、と確信したかったからだと思う。
 そのために、時間を置いて大場氏を通じ何度か藤森さんに打診したが、最終的に2002年1月末に連絡したさいに、大場氏から「今後も藤森さんがお会いになることはないと思います」というお返事をいただいて、藤森さんと直接に話し合ってコンセンサスを得ることは断念した。

 正直なところ、一度も会っていない、インターネット上でしか知りえない人物と他者を通して交渉し、その要求を受け入れて作品を改稿するということには版元は疑問を提示していたし、私自身抵抗もあった。ネット上での著作権の問題はまだはっきりしていないのにそこまでの必要があるのか、というご意見もいただいた。

 だが、私が藤森さんのオリジナルな表現を侵害したという事実はまぎれもないことであり、それは藤森さんと会う会わないという問題でも、ネット上かどうかという問題でもなく、あきらかに間違った行為であると考えた。】

〜〜〜〜〜〜〜
今回の無断引用についての田口さん側からの見解。
田口ランディさんは、現代社会、とくにインターネットに造詣が深い作家だと認識していたので、今回の無断引用については、ちょっとショックを受けました。
「パソコン通信の会議室の延長」であり、「一度も会っていない、インターネット上でしか知りえない人物」というのを実体として受け入れるという姿勢が、彼女の現代性であると僕は思うのですが。
確かに「会ってくれない、直接話せない」という人物と交渉するのは、骨が折れるというか、どうしようもないところもあるだろうけど、職業上の守秘責任(といっていいのだろうか、ちなみに藤森さんは、SM嬢だそうです。風俗関係の人にとっては、客の秘密を守るというのは、とっても大事なことらしいです)ということもあり、藤森さんが表に出たがらない理由というのもよくわかるし、それは、田口さんも承知されているはずなのですが。
 なんとなく、幻冬舎が悪者にされているような気がするのですが、いちばんの問題点は、「(ネット上の)他者のオリジナルな表現を侵害した」という、この一点なのです。それを「友達だから」「ネット上のもので、著作権もはっきりしないから」というような、とってつけたような理由付けは、作家として情けない。まあ、誰しも、どんな作品にも「参考にしている文献」や「モチーフ」はあるとは思うのですが、明らかにそれとわかるような表現では…

おそらくご本人も言われているように「時の人」になってしまい、粗製濫造を自己強迫的にやってしまったというのも、この「無断引用」の一因では、あるのでしょうが。
でも、僕は田口さんの作品、大好きです。もっとも現代を切り取っている作家のひとりだと思っています。たぶんこれからが正念場になりそうなので、いいものを書いていっていただきたいなあ。

WEB上だったら、セーフだったのかもしれないですけど…