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2002年02月25日(月) ■ |
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2002年2月25日。 |
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田口ランディ著「もう消費すら快楽じゃない彼女へ」(幻冬舎文庫)より抜粋。
若い頃に、好き放題に身体を商品化した少女たちが結婚し、年をとっていく。「女として売れるうちに高く売るのよ〜」と豪語する少女たちも10年すれば30歳だ。その時に、彼女たちは、何の空虚も感じずに母として生きていけるのだろうか。生身の身体をもてあまして子供の背後霊で生きる毎日。昔はスケベな目を向けた男が、「おばさん」と自分を軽蔑するようになったら。亭主がセックスをしなくなったら。そうこうしているうちに若造りも限界に達したら。腹がたるんで、話題もなくて、社会性もなくて、貧乏で、なにもかも「うざってえ」って思ったら。子供のままでいたい少女たちが、年だけとったら、どうするだろう。自分なんか居てもいなくても同じだと感じたら、なにで空虚を埋めるだろう。幼児虐待、不倫、精神病、ギャンブル、犯罪…。それらの選択肢が必然的に残っていく。
ユング心理学者の河合隼雄氏が、著書のなかで語っていた。 「女性の自己実現の困難さを思う時、私はそれを女性にすすめることをためらう」子供と老人を道連れにして、女の不可解な犯罪はもっともっと増えるだろう。
〜〜〜〜〜〜〜 長い引用で申し訳ない。
最近とみに多くなったと感じられる幼児虐待。 先日も、幼児虐待で告発された母親がインタビューを受けてて、「私は目つきがきついから、そんなふうに言われるんだ」といって、 次の会見では、整形して画面に登場してきた。 自分が責められる理由を自分がした「行為」にではなく「外見」に求めてしまうアンバランスさ。
「性の商品化」は今に始まったことではなく、人間の歴史とともに綿々と続いてきたものだ。ただ、最近は、そういった人々が「生活のため」ではなく「自己実現の手段」として風俗や援助交際を自発的に選択しているような気がする。「風俗で働いてる、そこらへんの普通の女の子とは違う、社会に適応できない私。」 ホームページやテレビ番組には、そういった主張があふれている。 で、実際に、そういうのでインパクトが得られる年じゃなくなったら、「お払い箱」にされてしまうわけだ。 それで、売れなくなったタレントのように、自暴自棄になっていくだけ。 でも、今の世の中、そういったほうが「普通」になってしまっているのです、むしろ。
自己実現をしなくてはならない。 そういった現代社会のプレッシャーって、けっこう大きなものなのかもしれませんね。 自分なんか居ても居なくても同じ。それは、ひとつの現実。 でも、この世の中に「居なくてはならない人間」なんて居ないってことに気づくところから、大人っていうのははじまるのかもしれない。 天皇陛下が崩御されても、美空ひばりが亡くなっても、 僕らはみんな生きている。
「自己実現をしようとしない生き方」、「裏方に徹する生き方」っていうのもひとつのスタイルなのではないかな、と思う今日この頃。 「普通のひとが普通に生きていく」それって、すごく難しくて、すごく素晴らしいことなんじゃないかな、って。 「ドラマチックな人生」の時代は、もう終わった。
蛇足:「精神病」は、あくまでも「病気」なので、虐待や不倫などのカテゴリーに含むのは、どうかと思います。どこまでが「病気」なのかは難しいけれども。
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