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■ 青空と君と(ミスフル)(司馬と比乃)
世界は広くて、なんだか飲み込まれそうだった。
青い空に、白い紙飛行機が飛んで行った。 同じかたちの淡い影が屋上の床を滑り、ドアをくぐったばかりの司馬は顔を上に向ける。予想通りの姿が給水搭の上で脚をぶらつかせていた。
「あ、シバくーん。やほー」
膝の上に何枚もの紙を広げ、比乃が手を振る。 必然的に見上げることになった司馬が表情を和ませる気配がわかると、比乃はさらに嬉しそうに笑った。
「いい天気だよねー。見て見て、紙ヒコーキ!」
いえい、と言いながら比乃は新たに作った白いそれを司馬のほうに見せた。 見上げる司馬からは笑う比乃と白い紙飛行機が青空に浮かんでいるようにも見える。
「司馬くんもおいでよー」
気軽な口調で誘われたが、司馬はひかえめな笑みで首を横に振った。比乃のような軽量級だけならまだしも、狭い給水搭の上に自分まで上ってはうっかりタンクを踏み抜いてしまいそうだ。 何より、普段は見下ろしてしまう相手の笑顔を青空とセットで見上げるのもそう悪くない。
「そっかー、じゃあ見てて。いくよー」
小さな掛け声と共に、比乃の手から飛行機が飛んだ。 宙を切って飛ぶ白い紙飛行機。 青い空にこの上なくよく映えるそれは、迷いなく真っ直ぐ飛び続け、やがて屋上のフェンスも越えて行った。 その軌跡をすべて目で追い、太陽の眩しさに瞳を細めた司馬の上に明るい声がかかる。
「よく飛んだでしょ?」
己の功績を自慢する子供の声。 司馬が笑ってそれを肯定すると、比乃が全開の笑顔を見せた。 よく笑う比乃には、青い空がよく似合う。見上げたままの司馬はそんなことを思う。
ああどうかと、願うならこんな日が相応しい。 どうか、君がいつまでもそんな風に笑っていてくれないかと。
青い空に雲が見える。 笑ってくれる人がいるだけで幸せなのだと思えた午後。
**************************** …短い。 林さんこの交換物「司馬と比乃」でしたー! 私はこの見返りに笛のアンダートリオを頂くのです!(その割にはなんだか短いよー…)(ゴメン)。
珍しく司馬くん視点オンリー。 しかし喋らないキャラというせいか、端から見たら比乃くん一人芝居に…。 しかも実は紙飛行機ネタは以前から三上(:笛)で書こうとしていたのですが、比乃にしたら三上より可愛いだろうなあ、ということで書いてみました☆ という裏話。 三上くんは成績が良くなかった古典のテストで紙飛行機を折り、飛ばして「ああせいせいした」と思った直後に、「あんな点のテスト用紙誰かに見られたら…!」と青ざめて探しに行く話でした。おバカさん。
2003年08月07日(木)
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