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2018年12月29日(土) ■
TOKYO No.1 SOUL SET『真冬の完全試合』
TOKYO No.1 SOUL SET LIQUIDROOM LAST YEAR・END PARTY〜ONE MAN LIVE 2018〜『真冬の完全試合』@LIQUIDROOM ebisu フロアから「パパー!」と叫んでたの、新宿リキッドでしかと見ています。画像は1Fエントランスにあった記念撮影コーナー。BFバーエリアではneco眠る森くんがカレー売ってた。 というわけで、新宿時代から続いた年末のリキッド公演が最後となりました。DJに山下直樹(ex. ZOO, SLITS, SKYLARKIN)!!! VJはタケイグッドマン!!! アフターパーティMCはP.O.P上鈴木兄弟と世代を繋ぐ。ゲストなし(トーイは別枠ね)のワンマンライヴは久しぶり。1DJ1Poet1Singerのトライアングル、唯一無二の剥き身のソウルセット。満喫。幕開けは「グランプリ」トラックにトーイのフリースタイルをのせて。久しぶりの「O’TAY」。近年の名曲「Stand Up」、感涙の「ヤード」「SALSA TAXI」。トーイがステージに上がるようになってからの「Jr.」には感慨を覚えずにはいられない。そんなトーイと俊美がハモる「Innocent Love」を聴けるのはとても幸せなこと。さよならだけが人生だ、あの小説の中で集まろう。 MCでもぶっちゃけられてましたが、まあ集客が年々減ってきたことも終了の要因。「毎年これくらいきてくれればね!」「最近の曲どうせ知らないでしょ! 反応でわかる! 出してんのよ!」よく喋るようになってからのビッケは毒づきっぱなしボヤキっぱなしで、あの俊美から「バカヤロウ!」の言葉を引きずり出す程でしたが(笑・あの罵りあい笑ったわー)「長く続けるのって大変なんですよ」「でも好きな音楽を続けたいから大変なのにやってるの!」のボヤキにはジーンときたよね。リスナーも歳をとっていくわけで、ライヴから足が遠のき、忙しくしているうちに好きなバンドの新譜が出ていることにも気付かなくなっていくもので。でも毎年この日にリキッドに行けばあの三人が、あの曲が待っている。そんな安心があった。彼らもその辺り思うところがあったようで「普段バラバラに活動してて、あとのふたりが何やってるか知らなくてもリキッドがあるからいいやと思ってたところがあった」「一度リセットして、三人がどうなるか見てみたい」みたいなこともいっていた。今はもう事務所もないのでブッキング等も自分たちでやってるとのこと。でも今ってそういうところ多いし、もともとソウルセットって別に事業やってたひとたちだし、大丈夫なんじゃないかなとも思います。「感動的に終わろうとしてるけど次のライヴもう決まってるんですよ! 解散はしませんよ!」というわけで三月のFEVERも楽しみ。 ライヴ後はそのままフロア開放でアフターパーティ。関係者と観客の垣根なく日頃の感謝と挨拶をしたいんで、とのことでそのへんをうろうろしてる三人。声をかけられ撮影に応じ、サインを書いて笑い合う。こういう空気もクラブ育ちの楽しさだった。しかしヒロシくんのファンサ初めて見た気がするわ(笑)あのおっかなかった男が……。ボソッと書くが川辺ヒロシは自分内一生もんのNo.1トラックメイカーゆえ、とても声なんぞ掛けられませんでした。遠くから有難う有難うこれからも聴いていくねと手を合わせる(怖い)。暮れの感謝のご挨拶ってことで三人からジャンケン争奪プレゼントもあり、笑顔笑顔の楽しいパーティ。そうだった、クラブのパーティってイヴェントじゃなくてパーティっていってた。それを思い出させてくれた。 年末の恒例がなくなるのは寂しいし、いろいろ懐かしい気持ちにはなったけど、ソウルセットはこれからも続く。積年の望み「WILLING OR NOT」は聴けなかったし初期トラックの「too drink to live」も聴けなかった。楽しみも続く。
2018年12月22日(土) ■
『オイディプスREXXX』
『オイディプスREXXX』@KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ 芝居納め。ギリシャ悲劇『オイディプス王』を河合祥一郎の新訳、杉原邦生の演出で。タイトルの「REX」は王の意、「XXX」はコロス以外の役を演じ分ける三人のキャストと物語に繰り返し登場する三つの道、とのこと。REMIXの意もかけているかな、鳥の目を持つ杉原さんにはぴったりの題材ではないかと思っていたのですが、まさに、な仕上がりでした。ここで忘れないでおきたいのは、杉原さんは常に古典に敬意を持って接し、2500年も前から演劇が続く意味を考え続けていること。空間だけでなく、時間も鳥瞰となる。ポップでモダンな演出のもと、台本の台詞と役者たちの芝居は真っ向勝負。杉原演出だからコロスはラップだろう、とかカラフルなステージングになるだろう、とかこちらは観る前に予想する訳で、実際そうなる。それでもこのひとが手がける作品は必ず「現代から古典をしかと見つめる」ものであり、「変わらない」ものに対して非常に真摯な目を持っている。 入場と同時に目に入る装置や美術に驚かされる瞬間が大好きなのですが、杉原さんの作品にはそれがある。今回はこれでした。鳥肌。 (今作の舞台監督・藤田有紀彦のツイート) 古代からの劇場構造であるコロシアム式の客席が、最新の機材で組まれている。ギリシャ悲劇を上演する場、を観客にまず意識させる。蜷川幸雄演出の『2013年・蒼白の少年少女たちによる「オイディプス王」』 もこの配置だった。この手法はさい芸でネクストシアターやゴールドシアターの作品を上演する際よく用いられ、ステージを囲む三面が客席となっていた。今作は四面全てを客席とし、演者は四方の角から入退場する。「空間構成」としてフジワラテッペイアーキテクツラボがクレジット。プラン出しは杉原さんが行ったのではないかな。席数とステージの広さを考えればこれ以上拡げられなかったということもあろうが、客席の傾斜はかなり急。最後列だったもんだから壮観です。こ、こええ! 照明が近い。NBAの試合を観るのってこんな感じか? 正方形のステージがリングにも見え、格闘技を観る気持ちもこうか、などと思う。古代、格闘技も劇場で行われた。この過剰さも蜷川さんの遺したものかもしれないな、と思う。幻の師弟関係 だったふたり、蜷川さんが観たらどう思うだろう、きっと悔しがってすぐ「ネクストで上演する!」とかいったかもしれないな。と、通路挟んで隣の席からメモをとっていた杉原さんを見て思ったのでした。 閑話休題。それにしても何度観ても酷い話だよ……今回コロスにすごいイラッとしたわー変わり身の早さというか、あんたたちさっき迄あんなに持ちあげて讃えてたじゃん! という。だんだん「オイディプスが(知らずに)したことってそんなに忌み嫌われなきゃならんもんかな」と迄思えてくる。「HERO」を引きずり出し、消費してぽいと捨てる。狂乱に陥り慟哭する当事者をドン引きして遠まく、現代的=普遍的な民衆の姿が見える。軽やかな残酷さを、6人のコロスが表現する。それぞれに役名があるところにも注目。民衆は個人の集まりだが、民意は個人の思い全てをフォローしえない。対面式の客席。向かい側の観客に目をやる。眉間に皺を刻み込んだ男性がいる。口を覆う老婦人がいる。ああ、ここにもコロスがいる、民衆がいる。あちら側から見える自分もそうだろう。この世界には、黙して語らず、ただただ「HERO」の行く末を案じていたひとたちもいた筈だ。演出は彼らのことも掬い上げる。自分はどっちだ?! 音楽はTAICHI MASTER、作詞とラップ指導は板橋駿谷。『グッド・デス・バイブレーション考』 で強烈な印象を残した肉体派が、その姿を晒さず存在感を見せる。 罪を南果歩が、救済を宮崎吐夢が担う。預言者は罪を伝え、母の懺悔を羊飼いが受けとる。オイディプスを救ったよき羊飼いは次のHEROへと姿を変える。中村橋之助は唯一ひとりの役を演じるため、他者の視点を得られない。誰も彼に代わることは出来ない。ラストシーン、オイディプスとの別れを嘆く娘たちの姿はない。天上から小さな泣き声が聴こえてくる。盲目となったオイディプスと同じ視界を観客も得る。それ迄の大音響のラップから一転、耳をすます。最後の最後で、オイディプスはコロス=民衆と心を分かち合う。素晴らしい演出だった。 ----- 帰宅すると、藤田貴大と柳楽優弥が対談していた 。ああ、今年も蜷川さんの新作が観られなかった。まあ、これからもうずっと蜷川さんのいない世界が続くのだ
2018年12月21日(金) ■
カタルシツ演芸会『CO.JP』
カタルシツ演芸会『CO.JP』@六本木Super Deluxe か、カレー食べたい。 コントと演劇の境界をさぐった(が特に結論は出さない)結果、ゴリッゴリのコントになりました。ということで安井順平、水を得た魚でございます。コントは「霊媒師」「万引き」「インタビュー」「転校生」「手術」「ボタン家」「名探偵」の7本。ブリッジとエンディングに小ネタがあったので、全部で10本弱というところか。カレーが! 食べたくなるんですよ! でもルーはシチューなのよ!(千秋楽迎えたのでオチを書く) 安井さんと板垣雄亮が安心と信頼のクオリティ、というのは了解済だが、薬丸翔と東野絢香の若手ふたりがまたよくてなー。間の良さもだが、羞恥心のタガを外すことにてらいがないようにすら見えた。いつも思うがイキウメは若くて巧い役者を見つけてくるのうまい。どうやって探してくるんだろう。それとも前川知大の演出妙技で、そのポテンシャルが開花するのかな。ナイロン100℃の役者さんたちにも思うことだが、リズム、間合い、テンポが徹底しないと出せない笑いには技術と訓練が不可欠なのだなあ、とゲラゲラ笑いながらもゾクゾクする。好プレー続出の緊迫したラリーを観ているようでもありました。ここという一瞬を逃すと、笑いの構造はあっという間に狂ってしまう。繊細な作業でもある。 コントごとに演者は違うキャラクターを演じているのだが、それでも各々の「地」が見えるように感じる。それを「芸風」というのかもしれない。安井さんはああだし(ずっといってるが「理路整然と罵詈雑言」ってキャッチ考えたひと最高)、薬丸さんはこれから他の作品で観ても今回のあれこれを思い出して笑ってしまいそうだし、板垣さんのはんなり口調が出てくるとホッとするし、東野さんは今後コメディの仕事がガンガンきそうな気がします。こういうところもイキウメの特徴で、出演者の未来を拡げるような仕事を外部に見せる律儀さがある。 「働き者」(とクレジットされていた)のイキウメンが裏方さんをやっておられ、観客の微笑を生んでおりました。森下さんは寒いなか外で案内をしているし、大窪くんはエントランスで朗らかに来場者を迎え、盛さんは諸注意アナウンスを任せられるしっかり者(当日パンフレットのイラストも素晴らしい)、浜田さんはふんわり気が利く接客をしていた。あの倍音出てそうなよい声で「席はお決まりですか……」「上着は預かりますよ……」「奥の方まだ空いておりますよ……」と声をかけるので、逆に客の方がオロオロしていた。ニコニコして見てしまいました。なんかすごい「劇団」ぽくなったよなあ、以前前川さんの実家で劇団員が猛烈なおもてなし(主に食の面で)を受けるという話を知ったとき、第三舞台の面々がツアー中に岩谷真哉の実家へ立ち寄りごはんを食べるのが恒例、という話を思い出していた。最年少の大窪さんがごはんやおやつをいっぱい与えられるとか、ファミリーぽくていいよね。 この場所のスーデラに来るのはこれが最後かな、移転先が無事見つかるといいなあ。前に出る相撲を思わせるプログラムの数々、有難うございました!
2018年12月19日(水) ■
『マイ・サンシャイン』
『マイ・サンシャイン』@シネクイント スクリーン1 魅力は多々あれど、何故かすんごい奇妙な仕上がりになってる映画に不思議と愛着がわくことってある。まさにそんな映画だった。『悲しみが乾くまで』も同じような意味で好きな映画なんだけど、思えばこれもハル・ベリーが主演だったなあ。ツッコミどころやひっかかるところはすごくあるんだけど、どうにも憎めないのです。あ、それこそが魅力なのか? つらいストーリーだけど、なんともチャーミングな作品。 1992年、ロサンゼルス暴動が起こる迄の数週間(かな?)。ロドニー・キング事件は知っていたがラターシャ・ハーリンズ事件は知らなかった。このことでロサンゼルス在住の黒人と韓国人に分断が起きたことも。大きな事件がふたつ、小さな理不尽は数えられない程。そんななか、こどもたちを保護し育てる黒人女性がいる。隣人の白人男性と諍いを起こしつつも、彼女は懸命に働き「家族」との愛情あふれる幸せな時間を過ごす。しかしついに起こった暴動に、彼女とこどもたちは巻き込まれていく。 こまごまいうと、いろんなことが気になる。気になり過ぎて、ストーリーに集中出来ない。彼女はケーキのデリバリーを仕事にしている。それだけでこどもたちを養っていけるのかな? (恐らく)生活に困窮しているひとが住む、治安のよくない地区に住む彼は何者だろう? 苛立って大声を出したり、窓から家具を放り出したりしているのでヤク中だろうか? どうやら「今は書いてない」もの書きらしいが、その背景は描かれない。思わせぶりな問題の数々と、彼らの暮らしの情景がなんともちぐはぐなのだ。そのうち彼女はまた新しいこどもを拾ってくるし、彼は優しい一面を見せ、やがてふたりは恋におちる…か……? という展開がスタイリッシュでアーティスティックな映像で描かれる。アーティスティックな映像というのも曲者。作家性の押し出しが強く、時折我に返ってしまう。ついでにいうと、日本公開の際レイティングをPG12にしたためだろう、ボカシが入る場面もあってここでも集中力が途切れた。R15でよかったのではないか。 それでも彼女が「家族」を愛する気持ちの強さには惹きつけられるし、こどもたちの儚い恋愛模様には切なくなるし、LA暴動が勃発する迄にどういうことが起こったのか、ということをより詳しく知ることが出来たのはよかった。緊迫した道をひとつ奥に入れば、のんびり笑えることも起こっていた。原題は『Kings』。ロドニー・キング、キング牧師、そしてバーガーキングも含まれるかな。ひとの善性に光が当たる。ひとは助け合える。そこに注目すると、この映画を憎めなくなる。甘いのかもしれないが、こういう描き方もある。重い主題から一歩ひけば、ダニエル・クレイグがニヒルな魅力(おま、そこで煙草吸うか! そこでパンツ見せるか!)とかハル・ベリーはホントかわいいわー(ゴキブリにキャーキャー騒ぐ姿は少女のよう!)とか楽しめます。まあ楽しむことにちょっとした罪悪感も抱いてしまうがな…彼らの仲が深まっていく頃、「家族」の「長男」は辛い時間を過ごしているのを観客は知っているからね……。「長男」と「次男」の間に起こっていることを「母」は知らない。そのことも観客は知っている。 前述の話をすると、『悲しみ〜』のハルも随分困ったちゃんだったなー。ベニシオ・デル・トロを慰みものにしてさ(言い方)! でも好きなのよねー、これ。困った映画だよ(笑)。 橋が映る度「ここかな、ここかな」と思う。LA暴動というと「Under the Bridge」が刷り込み属性です。ニュース映像のBGMに度々使われ、RED HOT CHILI PEPPERSが大ブレイクしたきっかけになった曲。自身の薬物問題を抱えたアンソニー・キーディスが書いたごく個人的な曲が、1992年のLAを象徴する曲になった。webのない時代、それを数ヶ月遅れで知った。そしてRAGE AGAINST THE MACHINEの『The Battle Of Los Angeles』。90年代西海岸のアメリカン・オルタナティヴ・シーンは、こうした社会的問題を知る門戸でもあった。 劇伴はニック・ケイヴ&ウォーレン・エリス。よかったよ。トレント・レズナー&アッティカス・ロスと並んですっかりサントラ界の売れっ子ちゃんですね。 それにしても今年は光州事件 、6月民主抗争 、そしてLA暴動と、この手の映画をよく観たなー。世界はますます分断していく。 -----・『マイ・サンシャイン』は感動作? 実はゾンビ映画級のパニックが街を襲う!┃シネマズ PLUS このタイトルはどうかと思うが、暴動シーンはたしかに緊迫感のある映像でした。信号が破壊され、公衆電話は通じない。勿論携帯電話なんて殆ど普及してなかった時代です。バーガーキングのくだりは実際にあったことのようです。いい話
2018年12月15日(土) ■
『日本の歴史』
シス・カンパニー『日本の歴史』@世田谷パブリックシアター 観てから十日くらい経って今これを書いてるんですが、この間ずっと脳内で「I・N・G・A、因果♪」とか、「俺平清盛だ〜♪」とか、「なんとかなるもんだ〜♪」とか、歌が鳴っている。油断すると口ずさんですらいる……コワい!(笑)急遽CD化決定したとのことで、ロビーで購入受付が行われていました。あの楽曲たちを多くの観客が持ち帰り、何度となくメロディや歌詞を思い浮かべ、口ずさみ、やがて届いたCDを聴いて、一緒に唄うんだなあと想像する。すごい痛快、すごい楽しい。 そう、とにかく楽しかった! 卑弥呼の時代から大平洋戦争迄の1700年を約二時間半で。しかもミュージカルで。三谷幸喜の大胆な試みは、荻野清子という音楽家と七人の達者な役者を得て、日本どころかアメリカにも舞台を拡げる。幕開けはテキサス州のとある荒地。当然観客はあれっと思う。「日本の歴史」じゃなかったっけ? こういうところ、三谷さんらしい。疑問は「因果♪」というキーワードで繋がれる。アメリカのとある家族の年代記に、日本の1700年が交差していく。 場は3つ。日本の1700年、アメリカの100年、遠い未来のとある教室の数ヶ月。 日本の歴史を教える「先生」がいることで、舞台を楽しみつつも頭のどこかに「え〜と? この人物ってどの時代のひとで、誰とどういう関係にあって、どうなったんだっけ?」と浮かぶモヤモヤが見事に補足される。講義というテイでスクリーンに家系図や年代を映し、歴史上の有名人と無名のひと、差別する側される側、畜産、石油、ショウビズという資本の変遷を見せていく。なんとかなると唄ってもなんとかならないのが世界の因果。アメリカの兄弟が争うとき、日本では源氏の兄弟が争い、メキシコ系アメリカ人が素姓を隠してサクセスストーリーを駆け上がるとき、黒人武士の弥助は本能寺の変を知らせるために走る。芸術を愛するアメリカの少年は成長し、戦場へ送られる。「因果……か?」という部分はあれど、北京の蝶のように世界は繋がっており、死者に暖かい眼差しを向け、新しい命の誕生を祝福する。 登場人物は50人以上。それをとっかえひっかえ演じるのは七人の侍ならぬ七人の役者。人種も、性別も、年齢もあれよあれよと演じていきます。ときには息があがり、ときには転換幕からはみ出して、ちいさな声で「…つらい……」とぼそり。その度にどっと笑いが起き、観客を味方につける。誰が、とはいいがたいなあ、全員が素晴らしかった。シルビア・グラブはオープニングから観客を虜にし、川平慈英は近代アメリカを体現。秋元才加は現代を引き受ける力強さ、新納慎也は能天気であればあるほど哀愁が漂う。宮澤エマのキュートな歌声(そういえば彼女は人物ですらない役も演じた)! 中井貴一のコメディとシリアスのシームレスな表現、香取慎吾の抑圧と解放の表現。驚かされた、という意味では、初のミュージカルとは思えない歌声を聴かせてくれた中井さん。あの、なんていうんですか、ミュージカルの歌唱法って特徴があるじゃないですか。言葉をはっきり聴きとらせ、感情も込めるという。ちゃんとこれだったんですよ。いやービックリしたな……出落ちみたいな登場だったので(前の席だったので濃い〜舞台メイクに吹きだしてしまった)「これは中井さん、芝居メインでいくのかな」と思ったところがどっこいでしたよ。 オーケストラピットはなく、舞台上に役者とともにいる。ピアノ、ギター・バンジョー・マンドリン・ウクレレ、チューバ・ウッドベース、ドラム・パーカッション/ティンパニ。コンパクトな編成で、軽快な演奏で、ダイナミックな世界を描く。荻野さんの楽曲もキャッチーかつ過去のミュージカルの名作へのオマージュが感じられ、これはスタンダード化するのではと興奮しますよ。はあ、因果〜♪ これシス・カンパニーのレパートリー作品にならないかな。再演してほしいです、スケジュール揃えるの大変だろうけど、是非同じメンバーで!
2018年12月14日(金) ■
移動レストラン『ア・ラ・カルト』〜美味しいものは心を動かすところにある〜30th anniversary
移動レストラン『ア・ラ・カルト』〜美味しいものは心を動かすところにある〜30th anniversary@東京芸術劇場 シアターイースト 勿論演者としても素晴らしいのだが、いうまでもなく。しかし彼女が描くものを観続けられることに、これ程感謝した年はないかもしれない。 30th anniversary、おめでとう! 自分は円形の二年目から、東京でやった公演は欠かさず行っているかな。しかし数え方がよく分からなくなっている。白井さんと陰山さんが離れたときとか、青山円形がクローズした前後に一年お休み、というのがちょこちょこあった記憶が……この日「29回来てます!」といっていたひとは、どういう数え方をしたんだろう? というのも今回、シリーズ皆勤またはそれに次ぐ出席率の方に大吟醸のプレゼント(高泉さんのご実家近所の酒蔵さんにつくって頂いたんですって。特製非売品!)コーナーがありまして、29で挙手した方全員が貰っておりましたの。自己申告制なので、これから来るひとにも知らせておいてくださいねとのこと。今年はやめとこうかな、というひともチケットとって行ってみるといいぞ(笑)。 いやいや、プレゼント関係なく今年の『ア・ラ・カルト』はとてもよいので、ブランクあるひとにも是非観てもらいたい。継続することで失ったものも多いが、得たものも多い。タカハシは婚約者を失ったが、ひとのいい後輩をつれてくるようになった。柳腰のベテランはレストランを去ってしまったが、生真面目さが笑いを醸し出す若手のギャルソンが入店した。無口で静かにダンスを踊る老夫婦と入れ違いに、愛すべき憎まれ口を叩き合う老夫婦が来店するようになった。最初の数年は痛みを感じることもあったが、傷はその痕を残し乍らも癒えていくものだ。新しい出会いを嬉しく思う気持ちは、年を重ねても消えないもの。レストランは移動式になり、禁煙(恐らく・苦笑)になり、時代とともに変化していく。その変遷は日本という国の時代も映し出す。ビターでスウィートな人生の数々。年を経るごとに、高泉さんの描く情景は深みを増す。観ている自分も歳をとり、そうした機微を感じとる力がついたのかもしれない。それもビターなものだが、スウィートなことでもありますね。 中山さんはすっかりこのレストランの住人。後輩も入って貫禄すらあるし(生来のふてぶてしさとデリカシーのなさが愛嬌になるよねーホント。ほめてる)、山本さんと高泉さんの老境パートは年々味わい深くなっているし、今年で三年目かな? の釆澤さんがすごくいいポジションとってます。いい座組。にっこりにっこり。 ゲストはROLLY! 団地妻三郎パートは観客揃って頭打ちの手拍子になるの笑った…わかってる……。なんでも今年は雪印コーヒー特需(同じ55周年でPRソングの依頼が。「歌詞、『ゴーゴー、ゴゴー!』だけなんですよ」)やQUEEN特需(言わずと知れた『ボヘミアン・ラプソディ』!)があり、充実した一年だったそうです。新車も買ったと(笑)。芝居もお笑いも達者でたよりになる。てか団妻とか、ちょっと変わっているけれど普通の…というかナチュラルメイクでスーツ着るようなキャラクターって『ア・ラ・カルト』でしか観られないのではなかろうか。そして何より、このひとの歌声で年末を迎えられる幸せ。いやホント彼がこのレストランの常連って心強い。 音楽家の方々も毎回素敵なアンサンブルを聴かせてくれます。二年ぶりに観た中西さんがモフモフになっててビックリしたが、渋くて格好よかったな。余談だが最近職場のおじさまが「俺はこれからエイジングを楽しむんだ」と白髪を染めるのをやめてロマンスグレーになったんですが、家族の大反対に遭って一ヶ月で断念することに…似合ってたんだけどなあ……ステキな歳のとりかたというものは、ひとそれぞれの解釈があるものだなとしみじみしたりしたのでした。 といえば、客席。しばらくは「もう管理職な世代だね〜」といってたけど、今や「もはや会社役員だね〜」な方々が大半を占めている。「おまえ百まで、わしゃ九十九まで、ともに白髪の生えるまで」が現実的になってきたな……それも素敵なことだけど、若い世代も入ってきてほしいなあとは思いますね。そうそう、釆澤さんが生まれた頃、高泉さんは劇団を旗揚げしていた んですって。演者側にも若い子がいることだし(笑)ご新規のお客さま、是非。音楽家と役者が繰り広げるレストランの光景。美味しいものと人生が、ショウタイムと沁み入るお芝居で描かれる。こういう舞台ってなかなかないと思いますよ。きっとまた来年、このレストランは現れます。
2018年12月13日(木) ■
LOUIS COLE!!!!!
LOUIS COLE@Shibuya WWW X ルイス・コールがやってきた! Brainfeederと契約(「ハイパー・マルチスペック・アーティスト」「Brainfeederの隠し玉」というキャッチがついてな。ウケる)、アルバム『TIME』リリース後初の来日ということもあり話題性は充分、日本のディストリビュートはBeatinkというのも心強い。いや…KNOWERの『LIFE』をリリースしたUNIVERSAL JAZZは、正直少しズレてた印象があってな……。どのリスナー層にアピールしてよいか定まっていない感じで、宣伝展開にも不可解な面があったので。確かにジャズ界隈からのひきも強いし、クインシー・ジョーンズらベテランからの支持も強いけれど、これ迄ユニバーサルから出してきたものとは違うタイプのアーティスト。クラブ層にもリーチし、YouTubeでどんどん新作を出すスピード、フットワークの軽さは、大企業の宣伝展開とは相容れない部分もあったのではと推測します。 これとか殆ど話題にならなかったもんね…お知らせもひっそりすぎてな……。・超絶360°ライヴ映像が公開!映像をシェアして直筆サイン入りVRゴーグルが当たるキャンペーンもスタート!┃UNIVERSAL JAZZ ・KNOWER超絶360°ライヴ映像(PC・スマホ対応。VRゴーグルなしでも楽しめます)┃VRTGO ちなみにこの360°イヴェント、観覧申込フォームが壊れてて(ていうか該当アドレスにアクセスしてもなんもない)私が問い合わせメールを出したらやっと修正されたよ。告知が出て一週間くらい放置されてたけど、それ迄他に応募したひとはいなかったんだろうか……。 しかし大手からのフィジカルリリース、それに伴うフェスと単独公演に加えて日本の友人たちによる企画公演もねじこめるという縛りのなさはすごく有難かった。おかげで5月はソロ 、バンド 、デュオ と三形態観ることが出来ました。 というわけで、ルイスが米西海岸新世代ジャズ〜ヒップホップからのビートミュージックシーンを牛耳る(?!)Kamasi WashingtonやThundercatを擁する(カマシはもうOBだっけか)Brainfeeder所属となり、日本でもいよいよ注目されるきっかけとなるのではないかと思います。全公演完売、当日券もなし。フロアの様子も全く違った。半年弱でこうも状況が変わるのかとゾクゾクする。ルイスとつきあいの古いKazさん(後述)がオープニングDJで、ルイスとSam Gendelの(覆面バンドだけどどう見てもな……)CLOWN CORE やKNOWERをかけてもフロアは平熱に近い状態。ライヴ本編でも、YouTubeにしか音源がない「Bank Account」等は反応が薄かったので(5月は「銀行口座の歌だ!」ときゃあきゃあ盛り上がった)、この当たり乖離がありそうです。ダワさんも「LOUIS COLE好きで、KNOWER知らない人多い感じがする」 といっていたし。ここが繋がれば今後もっと面白いことになりそう、楽しみ。 前置きが長いよ。さてフロアには5月のソロセットとほぼ同じ機材と楽器。ひとつ違うのは、フロア奥に随分高〜いスタンドシンバルが置かれていること。BATTLESのアレくらい高い。この夏〜秋のルイスの活動っぷりはすさまじく、半年ちょっとの間に20曲近く新曲が増えている。当然セットリストは違ってくるわけで、新曲のどれかであれを使うのかな? とか思う。それにしてもなんだろう……前日の追加公演(ルイス曰く「明日のための練習です」(笑))の様子を検索していたときこんなツイート もあったので気になる。 開演がかなり遅れ(スタッフの様子からしてDJが随分延長されたっぽい)期待でパンパンの空気のなか、自作の出囃子とともにルイスは「When You’re Ugly」MVで着ていた筋肉全身タイツに黒のパンツ、吉川晃司かターミネーターかで意見が割れる(笑)サングラスでにょろっと現れたのでした。ウォームアップか、最初にKeyで弾いたフレーズはチャルメラ。ここちょっと記憶が曖昧、いしやきいも〜♪ だったかもしれない。ちょ、どこで覚えてきた! 笑いとどよめきが起こる。挨拶、感謝の言葉に続いて『TIME』からのナンバー「Freaky Times」でスタート。リフ、リフ、メロディ、ドラムソロ。ルイス・コールといえば、の構成。待ってましたと言わんばかりにフロアから歓声が飛ぶ。 ぽそぽそしゃべり、ぱたぱた弾いて、ばたばた叩く。たびたび説明あり。今何を操作してる、ベースラインを録ってる、このソフトでループさせてる、唄います、間奏です、さてドラムに行きますよ、叩きますよ〜。どのようにして音が重ねられ曲が出来ていくかの見える化が歴然、MVどおりの痒いところに手が届きまくるプレイ。そして唐突に始まり唐突に終わる、ひょろ長い腕を振りまわすダンス、ダンス。どなたか書いてたけど「独演会」という言葉がぴったり。そして例のシンバルは、スティックを投げつけて鳴らすためのものだった。バシャーン、見事命中、フロア大ウケ。 それにしてもなんというか、言葉は悪いがせわしない。シーケンサーや他のプレイヤーに任せてドラムだけ、歌だけに集中したらさぞ高クオリティなライヴになりそうなものを、ハイパー・マルチスペック・アーティストの名に恥じぬ全部自分でやりますステージ。そして余韻に執着することがない。幻想的なハーモニーやコアッコアなリズムを矢継ぎ早に繰り出し、フロアが興奮、陶酔していると「ハーイ出来上がり〜、じゃあ次ね」とバッサリ。美しいアウトロが印象的な「Night」をあんな終わらせ方するかね(笑)。 シャイな性格の裏返し? あふれまくるサービス精神? ひとつに凝り固まりたくないのか、ユーモアは絶対不可欠という信条か、もしくはDIYでやってきた矜持の現れか。ひとを喰った感じはしないんだよね……あれが標準仕様な様子。5月のソロでも感じたけどギークっぷりが強烈で、やっぱりどこか閉じている。でも独りよがりじゃなくて、フロアの反応にとても敏感。「When You're Ugly」の前には「このタイトル、友だちに『俺/私のこと?』」ってよく訊かれるんだけどそうじゃないし、皆のことをいってるんでもない。ここにいる皆はセクシーだと思う」なんてことも話してましたね。それをニコニコして聴いているオーディエンスもシャイなひとが多かったような感じがしたな。とっても盛り上がるんだけどバカ騒ぎする輩はおらず、様子をじっと窺ってる感じ。 やはりいちばん盛り上がるのはドラムパート、スツールに移動すると大歓声。「Bank Accont」後半のスロー/ファストは圧巻でした。遅いクリックを鳴らしていても、そのクリックを128分割したグリッドが脳内にあるんじゃないかというリズム感。ギアチェンジの際、アクセントを「置く」感覚。みるみる複合リズムが併走していく。オープンハンドの演奏スタイルに左利きかと思っていたんだけどキックは右脚だし、左右どっち起点でも自在にリズムを操っている。力む様子は全くない、しかし繰り出される音は太く、芯にヒットしてる感じ。YouTube発表のMVがバズッたばかり、ホーンセクションがバリバリに格好良かった「F it up」もひとりで、音の隙間にドラムをぶち込んでやりきって、これがまー格好いい。KNOWERでもエレポップ/バンドセッションと2ヴァージョンで楽曲の魅力を多角的に見せてくれますが、そのワザをここでも。ルイス・コールという多面が過ぎる魅力を堪能したステージでした。 いやーもう隠し玉とはいってられないでしょう、編成によっては大バコも湧かせられる。次はビッグバンドを呼べるんじゃないかな? 呼んでほしい! Beatinkさん期待してます!!! といいつつも、あの「閉じた」感覚はずっとだいじにしてほしいなと勝手なファンは思うのでした。 ----- セットリスト(setlist.fm ) 01. Freaky Times 02. Thinking 03. Bank Account 04. Phone 05. Everytime 06. When You're Ugly 07. F it up 08. Night 09. After the Load is Blown 10. Who cares encore 11. Mean It ----- ライヴ後なんとトレンド1位に、本人もビックリ。また来てね!・LOUIS COLE / 満員御礼!全公演SOLD OUT!驚異のバカテク&絶妙にキレの悪いふしぎな踊りで観客を魅了した最高のライヴを披露!!┃Beatink Beatinkにレポートあがりましたん。キレの悪いふしぎな踊り……・ブレインフィーダーはなぜ日本にとって特別なレーベルなのか? コンピ『Brainfeeder X』を機にレーベル・スタッフと振り返る10年┃Mikiki 今後も楽しみだぜ〜VIDEO 本編ラスト、「Night」〜「Who cares」があがってました。ね、このあっけない終わらせ方! 東京の翌日、京都公演のすごいよく撮れてる動画。シェア有難うございます! はああ、ため息 KazさんのDJよかったなー。2018年の今、フロアで、爆音でJane Childの「Don't Wanna Fall In Love」を聴けるとは! 大好きだったよこれ〜! Kajagoogoo(!)もかかったで…Kazさんまだ若かろうに何故にこうも80年代……。で、DJの流れとしては前述のCLOWN COREやKNOWERで〆てルイス登場、といきたかったんだと思うんだけど、開演が遅れたためピークが何度もあった(笑)。色々聴けて楽しかったです 追加公演でルイスが着ていたこのTシャツにウチのTLは震撼していましたが、後日WhiteLightWhiteHeat改めWLWHさんがこんなことを書かれてました。 ルイスは怖い映画好きだそうだけど、それだけではないヒントがこのTシャツには隠されているような気がしてきたぞ?
2018年12月04日(火) ■
『鈴木家の嘘』公開&サウンドトラック発売記念ライブ
明星/Akeboshi 映画『鈴木家の嘘』公開&サウンドトラック発売記念ライブ@六本木Super Deluxe ----- 明星/Akeboshi:Vo, Key, G 川照:Drs 佐々木大輔:Tp, Hrn, Fhr, Tin whistle, Perc 酒井絵美:Vn --- トークゲスト 野尻克己(『鈴木家の嘘』監督) ----- 橋口亮輔監督作品の映画音楽家としても知られているAkeboshiさんの最新作は、橋口組の助監督を務めてきた野口克己初監督作品、『鈴木家の嘘』サウンドトラック。mouse on the keysの川さんも参加しており、この日のライヴにも出演するというので出かけていきました。motkではおなじみ、佐々木さんも一緒です。Akeboshiさんの声を実際に聴くのはmotk『the flowers of romance』release tour 以来、ご本人のライヴには初めて行きました。 ふわっと出てきてふわっと話し、ときどき話して笑わせて、ふわっと帰っていく。地声からもう倍音鳴ってますみたいな深い声。あたたかく、厚みがあるのに軽やかな声。なんて不思議な声。いやー、すごいな。ピアノとギターのリフからみるみる風景が拡がっていく。色が滲んで姿を変える水彩画のよう。 「ジャズでもやりますか」。サウンドトラックから、ということでインストも数曲。『ぐるりのこと。』『恋人たち』の曲もやってくれました。川さんのカウントから、音源とはまた違うアレンジ(と思われる)の演奏が始まる。スティックとブラシの使い分け、マットを敷いてミュートするスネアの音色、そしてハイハットの使い方。いやー左足の妙技がよく見えたワー。思えば(というかポンチさんから指摘されてあっそうかと思う。気づけよ)川さんのドラムセットって、motkでは下手、nine days wonderでは中央に位置しているので、上手側から演奏を観る機会ってなかなかないんですよね。キックとハイハットペダル、下半身だけでこんなに多彩なリズムが出せるのだなあ。そこへあの手数の多い上半身ですよ。フィルが! すごく繊細! 音量はフルパワー時の半分以下だったと思いますが、その分テクニカルな面を満喫出来ました。やっぱすごいなー。細やかな手仕事とおちつきのない下半身(というと語弊がありそうだが・笑)、素晴らしい……。ついでに普段着ぽい格好で演奏することもあまりないので貴重であった。まあ、普段着もほぼ黒で揃えてたがな。靴はadidasでした、ってこれはmotkのときもそうだったわ。 佐々木さんはティン・ホイッスルからスタートし、金管三種にクラベス等のパーカッション、エレピも一曲やって大忙し。「頼んだ訳じゃないんですけど、あれもやれますよ、これもやれますよ、こないだ新しいこれ買ったんですけどいい感じですよ、っていってくれるから。こちらもついつい……」とAkeboshiさん。この日の楽器は総重量約15kg、全部持って電車できたそうです、ヒィ。 中盤、ハンディカメラを持った怪しげな男性がするりとステージ脇に。記録用の映像を撮るのかな? と思っていたら「僕のマネジャー、田中くんです」。高校の後輩だそうで、ひとしきりいじられる。本人はやく演奏に入ってほしそうにもじもじしてる。「はやく始めてほしい?」と訊いておいてそこからまたひとしきり喋るAkeboshiさん、いじわるか(笑)。しかし「じゃ、五分後よろしく、」とようやく演奏が始まった五分後、田中くんの役割に驚かされることになりました。 ギタートリオで一曲演奏。それを田中さんが撮っている。エレピに戻り、「再生してください」。壁面に今撮った映像が映し出され、カウントとともに再び演奏が始まる。撮影はこれのためだったのか! ワンテイク目にツーテイク目の演奏が重なる。ギターにエレピのリフが絡み、ヴォーカルがハモる。リズムパターンも違うものを重ねていく。ループマシン使ってリアルタイムでリフを重ねる独演とかは聴いたことあるけど、バンド形式でこういうやり方観たのは初めてだったなー。アイディアって素晴らしい、それを形に出来るプレイヤーって素晴らしい。また皆さん楽しそうに演奏するんだこれが。リラックスしてる様子だけど、お互いなんか仕掛けたろ的ないたずらっ子揃いって印象で終始ニコニコ。 それでもメロディは儚いし切ないし、演奏した先から消えていく。Akeboshiさんの音楽は、ひなただったり蛍だったり、ちいさいけれどあたたかい。掌につつんだ、と思ったときにはきっともう消えてる。だいじに聴いていきたい音楽。 ライヴ後はAkeboshiさんと監督のトークショー。飛び入りで出演者の木竜麻生さんも参加し、撮影現場やMV「点と線」制作の様子が聴けました。野尻監督はとにかく粘るらしい。「じゃ、もう一回やってみようか」「すごくよかったけど、もう1パターン撮っとこうか」といわれると「野尻組だ〜!」と思うとのこと。出演者の岸本加世子さんが「もう、しつっっっっっこい!!!」といってたそうですよ(笑)。MVは映画本編の一年後という設定だそうですが、登場人物としてだけでなく、役者として成長した一年後の木竜さんの姿が捉えられてよかった、という話をされていました。 「ここ、閉まっちゃうんですよね」。そう、ビル老朽化のためスーデラは来年閉店。移転先を探しているとのことなので、再オープンを待ってます、みたいなことをいっていた。ライヴスペースとしても個性的だし、スクリーンとして使用出来るコンクリ打ちっ放しの壁面は、今回のようなイヴェントにも重宝されていた。この日も壁いっぱい使った映画の予告編と「点と線」のMVを観ることが出来ました。しかしここで田中くんがやらかしてくれた、これを〆に観て、イヴェントをしっとり終える筈の「点と線」映像の頭出しもたもたする、やっと始まったと思ったら途中で停まる(笑)。Akeboshiくんに「やっぱり今日は(打ち上げで呑んで)田中に運転してもらおうかな」なんていわれてましたははははは。 最後はサイン会。長蛇の列が出来てましたよ!「デビューしたばかりの頃モーションブルー横浜でサイン会をやったら、案の定(地元なので)同級生がきて、そいつにはふざけたいい加減なサイン書いたんです。そしたらすごく怒られたんですよね(怒ったのはその同級生か事務所の偉いひとかは不明)……それが嫌な思い出として残って、もうサイン会なんてやらない、と思っていたのに……」なんていってましたが、楽しそうに対応してましたよ。木竜さんがにこやかに対応していたので心強かったのかもしれませんね、微笑ましく夜は更けていったのでした。 ----- VIDEO ・明星/Akeboshi - ''点と線'' 〜映画「鈴木家の嘘」主題歌〜 --- 出演・文字:木竜麻生 監督:野尻克己 --- Drums:川昭(mouse on the keys) Contrabass:真船勝博 Cello:徳澤青弦 Violin:梶谷裕子 Trumpet:佐々木大輔 Accordion:良原リエ --- Music, Lyrics, Piano, Vocal:明星/Akeboshi・『鈴木家の嘘』公式サイト