I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
kai
MAIL
HOME
|
|
2018年08月20日(月) ■ |
|
SPARKS SUMMER SONIC EXTRA |
|
SPARKS SUMMER SONIC EXTRA@Shibuya CLUB QUATTRO
(クアトロに向かう途中。いいプレゼントだったわ)
夏の祭りはSPARKSで終わり〜。終始ニッコニコで観ていたので顔筋エクササイズにもなる多幸感、No.1 in Heavenだよ、なんでこんなにかわいいのかよ(孫)。てかメイル兄弟からすれば孫の世代のリスナーもいっぱいいますよ。すばらしいことですね……。フェス出演やFranz FerdinandとのF・F・Sがきっかけになったか、ここ数年でリスナー層が再び拡がったように思います。彼らのキャリアにおける、何度目かの充実期にあるのでは。老若男女でフロアはパンパン。キラキラした顔でまだかまだかと待っている。
メンバー編成は昨年のワンマンと同じ。今回は爽やかボーダーマリンルックから一転、おそろの黒Tシャツに白ジャケットでキメてます。サポートの5人のパンツはカーキで、ラッセルのパンツは黒、白ジャケットはちょっとデコラティヴなフロントマン仕様。ロン兄は定番の白シャツ、パンツ、ネクタイです。暑かったからかジャケットは最初から着てなかった。思えば昨年のジャケット、皆に合わせてかボーダー柄だったんだよね。貴重だったな……。最新作に伴うツアーだった昨年とは違いコンセプトなくベスト的な選曲……のようでいて、近年の作品もしっかり馴染んで収まっている。「Missionary Position」では正常位が最高♪ の大合唱、もはや鉄板曲じゃないのこれ(笑)。た、楽しい。
それにしても伸びのよいファルセットを維持するラッセルの喉の強さには恐れ入る。ロン兄はダンスのとき以外無表情のようでいて今回結構な率で微笑していた。ときどきちいさく口を開けてラッセルと一緒に唄ってた。ああなんて素敵なんだ。グッときたのは、「My Way 」から「When Do I Get to Sing "My Way"」に繋げたとき。ちょっとお! 帰宅後改めて歌詞読んで、じんわりきてしまった。この流れにはやられたなあ。
QOTSAの面々(ジョシュ以外)も来ていたそうです。あんな大男たちなのになんで気づかなかった〜! その後ジョシュも合流し、すしざんまいにいたとの目撃情報あり(笑)。気づいたひとってピャウ氏くらいだったな……何せ目の前にいたので。仕事柄メモをとらねばならぬので、片手がふさがって拍手が出来ないでいるときはメロイックサインを掲げていました。冷静に観ているようでいて歓声あげてたし好感度高かったです(微笑)。ミュージシャンやクリエイターのファンが多いことでも知られるSPARKSらしいエピソード。ねじれているのに親しみやすいポップなメロディ、下ネタなのに瑞々しくすら感じるリリック、唯一無二のTwo Hands One Mouth、愛を唄い愛される麗しの兄弟。日本を好きでいてくれてうれしい。元気で、また来てね。
-----
セットリスト(setlist.fm)
01. What the Hell Is It This Time? 02. Hasta Manana Monsieur 03. Unaware 04. Propaganda 05. At Home, At Work, At Play 06. Tryouts for the Human Race 07. Probably Nothing 08. Missionary Position 09. Hippopotamus 10. B.C. 11. The Rhythm Thief 12. Edith Piaf (Said It Better Than Me) 13. Never Turn Your Back on Mother Earth 14. My Way (Claude François cover) 15. When Do I Get to Sing "My Way" 16. The Number One Song in Heaven 17. This Town Ain't Big Enough for Both of Us 18. My Baby's Taking Me Home encore 19. Change 20. Amateur Hour --- Note: "Suburban Homeboy" was on the printed setlist but did not get played. "Summer Sonic Extra" performance.
-----
MIOさん画像シェアさせて頂きます、有難うございますー!
岸野社長とメイル兄弟とエドガー・ライト。さりげなく一緒に写っているのは上野耕路! 来てたのね! 気づかなかったよ〜! ライト監督は現在SPARKSのドキュメンタリー映画を制作中。今回の来日公演にも動向しており、この日も撮影クルーが入っていました。ライト監督、昨年のフジに来てたのが話題になったけど今年はサマソニに参加(仕事でもあるが)と、ホント音楽好きなんですねえ。ソニマニには来たのかな、大好きなCORNELIUSは観られたかな(『AUDIO ARCHITECTURE』には行っていたようですね)。
社長はいつものごとく物販コーナーにいらっしゃいました。彼らが日本で何度目かのブレイクを果たしたのは社長の尽力が大きいと思う、ずっとインディーでSPARKSを招聘してきた方。O-WESTでのお誕生日会(Out One Discのパーティ)にR&R Brothers名義のメイル兄弟が出演したこともありました(ロン兄のエレピがRolandじゃなくてYAMAHAのMOTIF XF8だったの貴重だった)。これからも宜しくお願いします。
|
2018年08月18日(土) ■ |
|
『SONICMANIA 2018』その2 |
|
『SONICMANIA 2018』@幕張メッセ
■NINE INCH NAILS(CRYSTAL MOUNTAIN)
本日のメイン、最初から最後迄。ポジションどりを誤って序盤はひとの背中しか見えず、全身汗でびしょびしょのひとに飛び込んでこられ、移動したらウェイ系の集団が目の前で自撮りをはじめ、また移動したらずっと指笛吹いてるアホの子に音を遮られ。最終的には下手側の後方ブロック二列目で観ました。かろうじてステージを見ることは出来た。スクリーンはしっかり見えた。いやー焦った…トレントが数十メートル先にいるのに肉眼で見ないまま終わるのかとめっちゃ焦った……。個人的にはやっちまった感がありましたがライヴの内容は素晴らしかったよ!
終わってから話したが、フジのグリーンステージだと観客エリアが傾斜になっているので後方からでもステージ見えるんですよね。で、サマソニのマリンで落ち着いて観たい場合はスタンド席に行けばよい。しかしマウンテンはステージもあまり高くないし中途半端な位置から観るメリット全くないねと。音も場所によって全然違う。トレントのMC全然聴きとれなかった。あのマリンの音響を制したNINのクルーをしてこれか……もともと音楽用のホールじゃないし、反響の多いスペースじゃないから仕方ないのか。バンドは悪くない、私の心構えが足りなかったと反省ですよ。という訳で単独で来てください(笑)。
ステージ両袖の照明群は人力で操作、自由に動けるカメラマンをひとりステージ上に配し、スクリーン映像はそのカメラからのみ(スイッチングなし)、終始モノクロで徹底。流石こういうとこ他のアクトとは一線を画すわあ。瞬時にフェスを単独公演ばりのカラーに変え、一見さんにバンドの特性を見せつけ、コアなファンの期待に充分応える。しっかりリハをやらなければ成立したない演出には、バンドとスタッフ間の信頼関係と充実を感じる。ある意味ヘルシーさも感じます。
最新作と旧作をバランスよく、アッパーで攻撃的なナンバーと、ポップでありつつ展開の妙を聴かせるナンバーのバランスもいい。2013年のフジと同じくフェスなのにオープニングが最新三部作の一曲目、というところにもトレントの自信(というかドヤ)が窺えます。間髪入れず鉄板の「Wish」でオーディエンスを阿鼻叫喚に陥れるショウ運びもニクい!
サポートではなくアッティカス・ロスが加入し、プロジェクトとしてのNINは今二人組。レコーディングにおいては古参ですが、ライヴではどうなるのだろうと気になっていました。が、基本は変わらず。アッティカスはステージで暴れたり走りまわったりはしませんし(笑)、物静かに構えて全体のサウンドデザインを統括しているような印象でした。そんなアッティカスがいることに安心してか? トレントはステージを降りてオーディエンスに頭をつっこんだり(日本犬が「なでれなでれ!」と向かってくる装い)、元気よく厚い胸板でバシャバシャタンバリンを叩いたり(ゴリラタンバリンと名付けたひと天才)とのびのび動きまわっている様子。ホントこうやって見ると兄弟みたいだね、実年齢は逆なんだけど、ステージにおいてはトレントがやんちゃな弟に見える。
ロビン、アレッサンドロ、アイランの三人はなんだかんだもう長いので、トレントの再現したい音を鳴らすためのパートチェンジもお手のもの。今回アレはんがベース弾く場面が多かった。そしてロビンがめっちゃ唄うのよこれが! あの怪鳥音声を活かした煽りやガナりだけでなく、コーラスもハモリも!「Shit Mirror」では渾身のスクリーム! トレントとデヴィッド・ボウイの「I'm Afraid of Americans」で、ボウイのパートを唄うのがロビンなわけですよ。いやーなんかしみじみした。トレントの声の状態もよかったし、今回は殊更歌が印象に残ったなあ。新作のサウンドは原点回帰+ボウイへの思い+アッティカス加入による新展開、と明らかに耳に刺激的なものだったというのにね。これは自分でも意外だった。
で、スクリーンなのですが、NINが二人組になったのってトレントとアティカス、じゃなくてトレントとロビン? てくらいロビンがずっと映っていた。ステージ+映像映えするルックスだというのは万人が頷くところだと思いますが、それ程ロビンの仕事が多かったということもある。ホントよい右腕…素晴らしかった……給料あげたげて! いい加減役員報酬ももらっていい頃よ! というかこれ、両方知ってるひとにしか伝わらないたとえだが、蜷川幸雄演出における勝村政信のようなポジションだよなあと思っていたのでした。ボスの嵐の時代を知っていて、新しくやってくるプレイヤーにそのマナーを伝授する。さりげなく屋台骨よね…アーロン・ノースのアグレッシヴなギターとステージングも好きだったけどね。贅沢いえばふたり一緒のステージ観てみたかったよね。元気でいてくれるといいな。
ちなみにアレはんはどこにいるのってくらい映らなかった。で、実物も随分様変わりしており、メガネにウェーヴロン毛に上下黒のTシャツ+ハーフパンツというどこのメタルのあんちゃんかという…てかしばらく違うひとかな、アレはん辞めたって話は聞いてないよなとまじまじと見つめ、いやこれアレはんだわと気づいたときの衝撃といったらなかった。ジョナサン・デイヴィスかな? とか思った(ちなみにこのあと帰宅したらジョナサンの奥さまが亡くなっており驚いた…なんてことだ……)。
メンバーはアッティカスが加わったのみですが、どの楽曲も編成が更新されており「Copy of A」が生ドラムになっていたり逆に「Only」が打ち込みドラムになっていたり(その間アイランはギター)と、レギュラーメンバーでどうライヴを展開させるかの追究は続いている様子。こういうところには勤勉さを感じますし、一定の期間メンバーチェンジをしていないからこその利点もある。かつての危なっかしさは影を潜め、プロフェッショナルの仕事見せて頂きました! と敬意を表したくなるステージでした。なんでもトレント、日本のことを「全世界で一番好きな場所」といったそうだけど、リップサービスではないと思える。単独を観たい欲が高まった反面、日本にこんなにNINファンがいるんだなあと目の当たりに出来のはフェスの醍醐味でもあったな。Tシャツ着用率、シンガロングの強さ、地鳴りのような歓声。バンドとオーディエンスの素敵な関係。
-----
セットリスト(NIИ Live Archive)
01. Branches/Bones 02. Wish 03. Less Than 04. March of the Pigs 05. Piggy 06. The Lovers 07. Shit Mirror 08. Ahead of Ourselves 09. God Break Down The Door 10. Closer 11. Copy of A 12. Only 13. I'm Afraid of Americans 14. Even Deeper 15. Gave Up 16. The Hand That Feeds 17. Head Like a Hole 18. Hurt
-----
セトリ並べるなんてファンのやることだ(笑)、マイブラと同じステージだったことも嬉しかったようです。数年前話題になった(…)、サマソニで来日組にだけ配布されるという寿司チケットにも二枚目の画像のイラストにもにっこり。ご家族も来ていたそうだしトレント一家のよい夏の思い出になったかな?
いやホント今回はロビンの職人ぶりに感嘆しました。こういう撮影で何故か顔を隠すところもらしさが現れてるな。お給金あげてもらって!(笑)
|
2018年08月17日(金) ■ |
|
『SONICMANIA 2018』その1 |
|
『SONICMANIA 2018』@幕張メッセ
いや〜涼しくて助かった! 目当てのアクトが多過ぎて(NINと丸被りでジョージ・クリントン翁を観られなかったのは根に持ちますよ……両方好きなひとかなりいるだろうに何故こんなタイムテーブル組んだよクリマンよお)休んでいる暇がなかった。7時間以上いたけど、座ったのって合計しても30分くらいじゃなかったか…昨年よりひとつステージが増え、その分休憩するスペースが減ったこともありほっとひと息つく場所もなかったよ……。例年どおりの暑さだったら、屋内といえどもきっとバテてた。
幕張のAEONでごはんなど食べだらだらしてから出発。いや、近所にないんですよAEON…楽しいね、これが地元にあったら他の街に買いものとか出かけなくなるってなんか分かる……地方都市が画一化していく図をちょっと実感。何せウチの田舎にも出来てますからねAEON。老舗百貨店が閉店して、すっかり繁華街の様相が変わったようだが先日の帰省は空港と実家の往復で終わったので次回帰ったときには行けるかなー。行けないだろう。
-----
■DORIAN CONCEPT(SPACE RAINBOW) 途中から途中迄。Squarepusher好きならとちょこちょこ名前を聴いていた。ジャズ基盤のIDM、microKORGのバカテク使い手、ライヴとなるとインプロバキバキ、そしてここにも絡んでくるThundercat、そのうえディストリビュートはBEATINK。好きにならない要素がないじゃないか(笑)。確かに気になる音だった、次回はじっくり聴いてみたい! BRAINFEEDER勢に加わったばかりのLouis Coleもそうだけど、このドリアン・コンセプトも注目されたきっかけはYouTubeに公開した演奏動画だったとのこと。YouTubeはすっかりクリエイターにとって欠かせないツールになってますね。
という訳で、SPACE RAINBOWはFlying Lotus率いるBRAINFEEDERがジャック!『BRAINFEEDER NIGHT IN SONICMANIA』のタイトルで、転換DJもBRAINFEEDER勢がノンストップでフロアをクラブ化。いや〜これ恒例になりませんか、そして次回はルイス・コールを連れてきてほしい! DJが絶対鳴らしてくれると踏んでたんですが自分がいないときで残念(「When You're Ugly」がかかったそうです)。 てかなあ、もうちょっとブッキングがあとだったらルイスも来てたかもしれないね、惜しい。次回がありますように! ステージ入口にはFlyLoのライヴ用3Dメガネが山積み。確保しておく。
■NINE INCH NAILS(CRYSTAL MOUNTAIN) (長くなるので別頁)
■THUNDERCAT(SPACE RAINBOW) 三度目の正直、念願のサンダーキャットちゃんですよ! とはいうもののNINと被っていたので途中から最後迄。クリマンェ……。 音源で聴いてる曲ばかりではあるものの、トリオ編成でDrsもKeyもイントロからブリッジからアウトロからもはや原曲どこよというインプロ合戦なので、盛りあがりどころはイントロやサビではなく演奏が白熱した瞬間。こういうところはジャズ、ビートミュージックのカラーだなあと思う。アホかというくらい巧いやら気持ちいいやらかわいいやら。 キャットちゃんはプロテクターみたいな衣裳でゴキゲン。ドラゴンボールのコスプレだとは思うがどの登場人物かわからない。誰だ……と思っていると「ベジータ!」と声がとんだので、ああベジータなんだと理解(笑)。それにしてもいっつも演奏しづらそうなケッタイな恰好(それがまたよく似合うしキュートなんだが)なのになんでこんな流れるように弾けるかね。ギターの弾き語りとなんら変わらない流麗さでベースを爪弾き、つらつらとヴェルヴェットヴォイスで唄います。ひけらかしない、もったいぶらない。美しい! 三人が三人とも隙あらば原曲から展開させたリズムとリフをブッ込んでくる、結果原曲なんだっけとどんどん未知の領域へと入っていく。ひとつの曲が演奏によってこんな遠いところ迄行ける、見たこともない景色が見えてくる。プレイヤーが音楽の不可解さを探検していくさまを、オーディエンスに分けてくれる。 音源ではルイス・コールが参加している「Bus in These Streets」も聴けたし、前回来日時にMV撮影した「Tokyo」も聴けてうれしかったし、一緒に唄えて楽しかった(トーキョーではなく「トーキーヨー♪」ね)。今度こそ単独フルで観たいです、待ってます!
■MY BLOODY VALENTINE(CRYSTAL MOUNTAIN) 途中から最後迄。FlyLoの3Dメガネ同様先着順だった耳栓は既に配布終了、しかし自前のを用意してきたので大丈夫。なんだか轟音芸みたいなとりあげられ方されること増えたけどいつからかなあ、2008年のフジからかな。このあとから耳栓配布が慣習になったような。PAチェック用の音量計がスクリーンにときどき映り込んでたんですが、これもサービスだよねもはや。平均110dBだったそうです(笑)。実際のところトレモロノイズが続くとサンドストームみたいな響きになってきて、「音でけー!」と思うものの不快ではないし低音が気持ちよい。 というわけでエリア入ると同時に耳栓して快適に聴いたんですが、あれよねソドムとゴモラの振り向いちゃダメとか浦島太郎の玉手箱を開けてはいけませんのアレで、外してみたくなるよね(笑)。しかし今後のことを考えて自重しました。しかしこれを毎回やってるメンバーの耳はどうなってるんだ。そうそう、ケヴィンのアンプが面白くて笑った。他の三人見えないんじゃないのってくらい、壁のように建て込んでた。 「Soon」も「You Made〜」もノイズアウトロも(どうもホロコーストノイズとはいいたくない)聴けて満足。で、本音いうとNINでこれくらいの音量ほしかった。
■FLYING LOTUS(SPACE RAINBOW) 途中から最後迄。またコスプレしとる……浅野忠信のツイートによるとスーパーサイヤ人だったそうです。なかよしレーベルかBRAINFEEDER。 到着時点で激込み、密集地帯から抜けられず後方の中途半端に明るい位置から観たせいかメガネもらってたのにも関わらず3D効果があまり得られず、没入出来なかったのが残念。音は文句なしに好きなやつだったんでまたの機会を待つ、てかまたエレグラ規模のオールに行きたいよー寒い季節のオールが大好きなんだよーBEATINKさんお願いします(名指し)。
■電気グルーヴ(CRYSTAL MOUNTAIN) 途中から最後迄。日出郎が出てくる迄、ノンストップでおそらく同じBPM。赤い靴履かされた感強し、身体は疲れてる筈なのに延々踊れる。こういうとこやっぱDJでフロアを操り続けてきた卓球の凄みを感じるなあ。大バコの使い方もお手のもの、瀧はゆうゆうとステージを練り歩き、ビートにのって激しく踊ることもないのにフロアをニコニコさせていた。私もニコニコして踊った(笑)。横綱相撲だわー。フロアを楽しませることにかけては出し惜しみしないよね。 ヴィジュアルもしっかりソニマニネタを仕込んできて流石電気のクルーと感服、電気なりのNINのロゴウケた。そういえば昨年もShobaleader Oneのネタ仕込んできてたものね。ぬかりないし、フェスの醍醐味を知り尽くしてる。 日出郎さんは艶やかな気合い入ったドレスとメイクでベテランドラァグの心意気、しかと受けとりました!
シェアさせて頂きます、画像アップ感謝します!
-----
・その他 SONICはUNKLEを通りすがりにうっすら聴き、Marshmelloをわあ〜ほんとにかぶりものしてる、deadmau5みたーいとチラ見したくらい。今回初登場のelrowはエリア内に入場せず(しかしすごく盛りあがってるようだった)。このelrow、例年のフードエリアを1/3くらい潰してつくったステージなのでした。よって食事やおやつ、休憩用に用意されていた長テーブルとベンチが大幅に減らされ、パレット積みのテーブルとお風呂でこどもが座るようなちっちゃい簡易椅子があちこちに置いてあるだけという。パレットが正方形に組んであるのでものすごく相席しづらい……椅子がまたステージ後方に持ち込んで座って観るのに丁度いいサイズ。こんなん盗難に遭うんじゃないの、こんなに居心地悪くちゃフードエリアの売り上げにも影響するんでないのと余計な心配もした。ベンチだと寝ちゃうひとがいるからかなあ。それにしてもなあ
・今年のサマソニは原点回帰!クリエイティブマン清水社長インタビュー【前編】│AndMore! ・【中編】 ・【後編】 「ファンが待っていたラインナップ」。動員が減るのは覚悟の上でのブッキングだったそうだけど、こちらとしては有難いことですしめちゃめちゃ歓迎です。ソニマニは混んでたけど(笑)
・終了後は某ラブホの女子会プランで12時間のご休憩。やっぱ宿あるとよいわ、特に夏はお風呂に入れるっての大きい! 汗だくで満員電車に乗らないで済むってすごくいい! アメニティ揃ってるし仮眠もとれてよいことづくめでした。スパもよいんだけど女性専用で24時間のところって意外と少なくて、オールあとだとチェックイン時間が合わないんですよね。今後もいろいろ探していきたい
|
2018年08月16日(木) ■ |
|
QUEENS OF THE STONE AGE SUMMER SONIC EXTRA |
|
QUEENS OF THE STONE AGE SUMMER SONIC EXTRA@STUDIO COAST
いや〜二年連続でQOTSAを観られるとは…ディストリビュートがHostessからBEATINKにかわったことと関係あるのかしら……ヘンな話、バンド側には伝わらないままキャンセルになった公演がいくつかあったそうですからね(インタヴューでジョシュが「キャンセルしたのは一回だけだ」といっていた)。まあNINはHostessになってからもきてくれてるし、相性やタイミングもあるのでしょうね。何はともあれ嬉しいことです。
という訳で昨年のフジから一年ちょっとの来日。単独公演は2003年の赤坂BLITZ(1、2)以来。「雨に唄えば」〜「時計じかけのオレンジ」のテーマにのって(シビれた!)現れたメンバーを迎える野太い大歓声。サマソニ前、平日のコーストと、どのくらい埋まっているか不安だったんだけど、19:30開演はお盆休み明けの社会人に優しい。フロアはパンッパンでしたがな、どんだけ入れたの……というくらい。やっぱり単独はうれしいね。たくさんの大人がQを待っていたんだなあとジーンとする。いやキッズもいたかもしれんが、ライヴなれしてるひとが多かった印象。フロアの密集度はすごくてモッシュや発生していたけど、ヘンに荒れたりしていなかった。
低身長にやさしい(ジョシュなみのイカついひとも多かったからポジションどり誤ると視界ゼロになるねん)上手側バルコニーの最前が確保出来たので視界も音も良好。メンバーの動きもよく見えたけどこの日は照明がすばらしい効果をあげていた。ステージだけでなくフロアも染める色彩、リフやリズムにピタリとシンクロする明滅、メンバーのシルエットを放射状の逆光で浮かびあがらせ、絶妙のタイミングで客電を点し、シンガロングの様子や観客の表情をステージに届ける。曲の展開を熟知しているスタッフの仕事ぶり。ステージ上にはポール状の照明も立てられており、メンバーがキックを入れたりもたれかかったりするアクションもいちいちサマになる。あーサマになる。ステージ全体を見渡せる位置から観られてよかったなあと、まずステージの出来に感動。
それにしてもカッコいいリフしかないな! ソリッドもソリッド。ギター3本で繰り出されたらペンペン草も生えない重戦車っぷり。がっごよすぎでオエーとかなってた……ペンペン草も生えないって前にもいったような気もするが他に語彙のない人間ですよ。バリッとスーツ、ド派手な柄ジャケット、革ジャン、ネルシャツそして上半身裸とヴィジュアルでは全く一貫性のないバンド(こうして書くとフロントマンがいちばん地味だナー)が一体となって爆音鳴らすその風圧、破壊力、そこに乗るのがジョシュのスウィートでメロウな歌。なんだよ! もう笑うしかない。最新作『Villans』と前作『... Like Like Clockwork』から半分くらい。何せ前回の単独以降四枚もアルバムが出ている訳ですから初めてライヴで聴ける曲も展開も多い。アルバム音源、そしてフジ同様「〜Millionaire」からくると思っていた「No One Knows」が「〜Deaf」の次に始まったときのフロアの大 混 乱(めちゃどよめいたよね…「今?!」みたいな)、続いて大 歓 声とリフの大 合 唱には爆笑しつつ鳥肌がたったよ!
ジョシュはゴキゲン。昨年のように杖をついたりふらついたりしていなかったし、しょっちゅう照明にキックを入れていたので(笑)脚の状態もいい様子。前方のファンから日本国旗を受けとって掲げてくれた。そのあとどうするかなーと思って見ていたら、そおっとアンプの上にひろげてくれた。敬意が感じられたなあ。SNSで募集していたメッセージの寄せ書きもスタッフさんが受けとってくれたそうだし、どんだけ待ってたかが伝わっているとうれしいな。楽器をおいて一服タイムもあり、タバコをくゆらせ乍ら照明に寄りかかってポーズをとるというもはや恒例? の伊達男コーナーもちゃんとありました。またこれがいちいちサマになり、男も女もキャーキャーいう。ダンサブルな「The Way You Used to Do」ではフロアを横ノリのステップで踊らせて、「Make It Wit Chu」では終盤のリフレインをフロアに任せ、シンガロングをニヤリとしつつ聴いていた。格好いいが過ぎてもはや笑える。続いての「Villains of Circumstance」では自身の歌声をじっくり聴かせ、フロアを静まり返らせる。いやはや自由自在。
トロイが思いのほかあばれる君で面白かった。Qのカラー(と勝手に思っている)、エフェクターかましたフィンガーノイズをよく鳴らしているのってトロイだったんだなと気がついたりして、その仕事ぶりにもほれぼれ。セオドアは重くて粘りのあるセットをどばどば叩き続けるので、ソロが始まるとが、がんばれ! と手に汗を握る。ヘンな話だが体力あるよね……。「Sick, Sick, Sick」はトレント節がすごいと改めてしみじみしたりした。
夏のお祭り初日から燃え尽きた感もありましたが、明日はオールでSONICMANIAです。NINを万全の態勢で迎えねばとクエン酸のんで寝ました。
-----
セットリスト(setlist.fm) 00. (SE) Singin' in the Rain (Nacio Herb Brown song) (Gene Kelly version)〜A Clockwork Orange Title Music --- 01. If I Had a Tail 02. Monsters in the Parasol 03. My God Is the Sun 04. Feet Don't Fail Me 05. The Way You Used to Do 06. A Song for the Deaf 07. No One Knows (w/ Jon Theodore's Solo) 08. The Evil Has Landed 09. In the Fade 10. Smooth Sailing 11. I Sat by the Ocean 12. Domesticated Animals 13. Make It Wit Chu 14. Villains of Circumstance 15. Little Sister 16. Sick, Sick, Sick 17. Go With the Flow --- encore 18. A Song for the Dead
--- Note: "You Think I Ain't Worth a Dollar, But I Feel Like a Millionaire" was on the printed setlist before "A Song for the Dead", but it wasn't played. (そうなのセトリには「〜Millionaire」書いてあるけどやんなかったの、なんでだ……)
-----
サマソニとの比較(シェアさせて頂きます、画像アップ有難うございます)。単独あるからとやめといたがやっぱり変えてきたなー。無念
|
2018年08月14日(火) ■ |
|
『カメラを止めるな!』 |
|
『カメラを止めるな!』@TOHOシネマズ新宿 スクリーン9
SNSで大評判、上映館が大幅に増えたおかげでようやく観に行けました。K’s cinemaで公開が始まったばかりの頃、頑固レヴュー(笑)が好きでいつも愛読している新聞記者の方がこの記事(全文読めないけど記事が載った時期の目安として張っておきます)を書いていて、とても気になっていたのでした。なんとTOHO新宿最大スクリーンのTCXが完売です。500人近いひとたちとハラハラドキドキですよ! 映像的にはTCXでなくても充分楽しめるものですが、音がめっさよくて細かいところ迄聴こえまくるので、後半「ああ、さっきのあれ!」と気づきやすくてより笑えたかも。以下ネタバレありますので未見の方はご注意を。この映画は予備知識なく観た方がよいです。
映画は三部構成。とあるケーブルチャンネルでオンエアされた、30分のホラードラマ。最初の3分の1でそのオンエアされたもの、次に撮影に入る迄の一ヶ月、そしてバックステージの様子込みで再び撮影現場を撮る。所謂“ショウ・マスト・ゴー・オン”を、時系列を入れ替えて見せる。生放送、ワンカットという手法は、幕が開いてしまった限りはどんなことが起こっても最後迄通すという演劇の成り立ちと非常に似通っており、実際ステージ上のトラブルをバックステージで解決していくという題材を扱った舞台作品は多い(今作の原案も舞台作品だったようです)。タイトルそのもの、東京サンシャインボーイズの『ショウ・マスト・ゴー・オン』が代表的ですね。さまざまな事情を抱えた表方と裏方が、舞台の幕を下ろすものかとありったけの機転をかき集める、その度にありったけのハプニングが起こる。恐ろしいのは、『ショウ〜』にいた腕利きの舞台監督が『カメラ〜』にはいないところです(笑)。
果たしてオンエアされたものは、あちこちに「?」が浮かぶシロモノに。今の妙な間は何? あの端っこでボサッと座ってるひとは何なの? 今「ポンッ!」て聴こえなかった? カメラが動かなくなってるよ? これらが何故こうなったかが、最後の30分であきらかになります。弱気でたよりなかった監督が、作品を完成させるために火事場の馬鹿力を発揮する。その勢いに圧され、エゴの強い役者や適当に場をこなそうとしていた役者、現場の事情を鑑みない製作陣が我を捨てて協力し始める。というかせざるを得ない。そこへ監督の家族も絡み、「カメラを止めるな!」とひとつになる。パズルのピースがパチパチとハマり疑問が解けていくことの爽快感、あいつダメでヤなやつだと思ってたけどいいとこあるじゃんと気づく爽快感、そして作品が完成した(当初と仕上がりは違うけど)! という爽快感。エンドロールではすっかり笑顔。
劇中では展開上問題のあるひとがフィーチャーされる訳ですが、その背後には黙々と働くスタッフたちの存在がしっかり映しだされています。泥酔した役者に特殊メイクを施すスタッフ、手詰まりの状況を打開するべく時間を稼ぐスタッフ、予定変更のカンペを出すために脚だけメイクして映り込むスタッフ。彼らは臨機応変にも程があるという事態を収拾するべく奔走する。舞台にしろ映画にしろ、作品はカンパニー全員が「最後迄投げださない」ことで完成する。そんな現場愛に満ちた作品でした。とても気持ちよく映画館を出られる、レーティングもなかったようで家族連れも多く、夏休み映画としても抜群の楽しさです。ひとを、道理を信じることが出来るあたたかい世界。こういう映画がどの時代にもあってほしいなと思った次第。監督は上田慎一郎。ENBUゼミナールがまたひとつ快作(怪作?)を世に送り出しました。
-----
・そうそう、音楽もよかったです。「美代ちゃんのハッパ」の前奏みたいな格好いい曲もあるのでレピッシュ好きも観るといい〜
・周辺でも話題になってましたが今回の映画がヒットする経緯、『運命じゃない人』に似てたねと。当時の口コミやwebでの拡がり方は正にこんな感じだった。面白かった、でも内容を知らないで観た方がいい、何をいってもネタバレになりそうだから喋れない、とにかく観に行って! てな評判が日に日に増えて……。ツールは変われど、小さな規模でつくられたものがあれよあれよと知られていき、歓迎されていく様子をリアルタイムで体感出来ることってとてもハッピー
|
2018年08月11日(土) ■ |
|
『八月納涼歌舞伎』第二部 |
|
『八月納涼歌舞伎』第二部@歌舞伎座
『東海道中膝栗毛』。「再伊勢参!? YJKT(またいくの こりないめんめん)」の副題です。三作やってひと段落なのかな? といった趣のYJKT。ミックスグリルのような全部入りっぷりが楽しい楽しい、葬式にトランプから花輪がきてたり宿で美少年コンビに出されてるお膳がお子様ランチだったりと遊び心満載。舞の場面もたっぷりとって、華やかな早替り、待ってましたの宙乗りは父子ペアと叔父甥コンビがいっぺんにふわふわふわり。芝居はサービス満点で、観客の観たいものを見せ、聴きたい話をお望みどおり、といった余裕も。そんななかしっかり若手の見せ場を作り、そのチャレンジをエンタテイメントとして成立させる猿之助さんの心意気よ。猿之助さんはご近所新橋演舞場で公演中の『NARUTO』にも出ているので、序盤なかなか登場しないのはその都合かなと思ったり、そういうところを考えるのもお楽しみのひとつです。舞のつるべうちはダンス合戦の趣もあり、構成の杉原邦生さんの腕が冴えている様子。
襲名とともに美少年ぶりも披露している染五郎くん、ご本人はそう呼ばれることがとても嫌だそうですが、芝居の上ではプラスなこと。「親の顔が見たい」なんて台詞も飛び出すその親、幸四郎さんはダメ大人っぷりを嬉々として演じます。そして今回は右近くんが持ってきました、いやはや堂々とした舞っぷり、芝居っぷり。そんな晴れ姿を右團次さんがスマホで撮りまくり、「おまえの願いなら仕方がないのう」なんて親バカぶりを見せてくれ、猿之助劇団のファミリーっぷりにしみじみしたり。そういうところも観客が待ってるところかも。中車さんは笑いに徹し、獅童さんはしっかり要所を押さえ、七之助さんは舞台をより華やかに。新悟さんはおかみさんの芝居がすっかり板についている。七之助さんも新悟さんも声がいい。三毛猫鶴松くんとむく犬弘太郎くんに人形遣いも兼任させ、しっかり芸を学ばせる辺りもさりげなく気が利いてる。猿之助さんすごい厳しいけど理想の上司ですわ。最後に基督登場で(門之助さんが水を得た魚のようにぶっ飛んでた)大団円に持っていく力業もピースフル、こういうとこも猿之助さんが杉原さんに構成を任せる所以かな。
それにしても染五郎くんも團子くんも、顔だちが大人びたのはともかく身長がぐんと伸びてるのにビビるわ……この年頃の子は一年見ないともうガラリと変わりますね。團子くん、今の配役表に載ってる顔じゃないもんねもう。小山三さんとかは30年いや40年くらい前? の写真を載せ続けていたけどあれは成人後だからな(微笑)。これからの成長が楽しみです。
納涼にふさわしく? 爽やかな『雨乞其角』の舞で〆。彌十郎さん素敵〜。紅白たい焼きも無事入手、楽しい夏のお祭りです。そうそう、今月から三階のばいてんでBEN&JERRY’Sのアイス販売が始まったのが密かにうれしい。
|
2018年08月01日(水) ■ |
|
『ウインド・リバー』 |
|
『ウインド・リバー』@ヒューマントラストシネマ渋谷 シアター2
『ボーダーライン』の脚本を手掛けたテイラー・シェリダンの最新作で、今回は自らメガホンをとったとのこと。『ボーダーライン』は非常に深い感銘を受けた作品だったので公開を楽しみにしていた。そのうえ主演はジェレミー・レナーとエリザベス・オルセン、音楽はニック・ケイヴとウォーレン・エリスという布陣。好きな役者に好きな音楽家、期待も膨らむ。果たしてテイラー・シェリダンという作家のことをすっかり好きになってしまった。「打ち捨てられた人々」を決して見逃さない、そして忘れない。怒りのやり場もない理不尽な不幸に見舞われた者たちを見つめるその視線は優しい。以下ネタバレあります。
ネイティヴ・アメリカンの居留地で少女の遺体が発見される。レイプの痕跡も確認された彼女の死因は、極寒のなか長距離を走ったことによる肺の破裂と窒息。明らかに不審な点があるにも関わらず他殺と認定出来ない。事件当夜の外気温はマイナス30度。現場から5km圏内に民家がひとつもない状況で、彼女はどこから逃げてきたのか? 何故薄着で裸足だったのか? 辺境の地へひとり(!)派遣されたFBI捜査官は、遺体の第一発見者でありこの土地のことを地理的にも風習的にもよく知るハンターに協力を請う。ハンターの娘も数年前に不可解な死を遂げたことがのちに判る。
サスペンスの様相に興味をそそられるが、やがて見えてくるのはこの土地の悲しみ。故郷を奪われ強制的に移住させられたネイティヴアメリカンたちは、自分たちの持つ歴史や伝統も断絶されている。豊富な資源を都会へ供するため、辺境地で働くプアホワイト。掘削会社の本社はテキサスだ。アメリカンドリームなんてあるわけがない。警察が来てくれるのに何時間かかる? 自分の身を守るには銃が必要だ。
犯人を追いつめた捜査官とハンターのやりとりに、捜査官の言葉に拒否反応を示すひとはいるだろう。倫理観はないのか? 法にまかせるべき? しかしこの土地に住む人々は法にすら見捨てられているのだ。この広大な土地で都会の倫理を通せば、待っているのは死しかない。胸を衝かれたのはハンターの「この土地には運はない」という台詞。運という言葉でやりきれない出来事を心に落としこむのが生きる術だと信じている自分にはショックな言葉だった。こういう諦めもあるのか、これ程強い思いで生きなければならないのか。世界の理不尽とではなく、自身の弱さと闘うしかない厳しさを持たねば、ウインド・リバーでは生きていけないのだ。
しかしこれは、ひとつの救いでもあるのかもしれない。あの少女は運が悪かったのではない。ハンターのいうとおりウォーリアーだった。裸足で、肺が破裂する程の寒さのなか10kmも走り続けた。逃げるために、生きるために。そして助けを呼ぶために。最後迄自分を守ろうとした愛する者のために。それを知ったことで、彼女の父親は娘が傍にいると思うことが出来る。本編の最後に映しだされるテキストには胸が潰れる思いだが、そうした彼女たちひとりひとりがウォーリアーで、愛情を持ち、家族や隣人をだいじに思う強い人物だったのだとこの作品は語りかける。法の目が届かなくても、国が見捨てても、私は、私たちは見ていると。このことを語り続けると。
娘を失ったハンターが捜査官に伝える言葉、ゆっくりと縦列走行する車輌、突如破られる沈黙と一触即発の対峙は『ボーダーライン』でも描かれたものだ。シェリダンの描く物語には、脚本だけでなく演出にも絶妙なリズム感がある。至近距離の銃撃戦とロングショットによる狙撃、その切り返し。アクションシーンの画も見事キマる。シェリダンは『ボーダーライン』続編の脚本も書いている。楽しみ。そして次の監督作も観てみたい。
『アベンジャーズ』シリーズを観ていると、レナーとオルセンのやりとりにはグッときます。あのときもホークアイはスカーレットを勇気付けたなあなんてね。その道のエキスパートと新人捜査官、『羊たちの沈黙』を思い出す印象的なバディ。真摯に仕事にとりくみ、決して自分を大きく見せず、必要とあらば協力を請える素直な女性。そしてウインド・リバーの少女たちと同じくウォーリアーである女性。演じている本人もそうなのではないだろうか、と想像を巡らせ、共感を呼ぶ。そんな女性像をオルセンは見せてくれました。
それにしても『ボーダーライン』のベニシオ・デル・トロといい今作のレナーといい、なんでこうシェリダン作品はひいきの役者を魅力的に起用してくれるのか。しかも役柄がもうね……この演者でこういう人物が観たかった、こういう表情が観たかった、こういうアクションが観たかったというツボをおしまくってくれて感謝しかありません。デルトロもレナーも辺境の地で生きる孤独な人物がよく似合う。
音楽もずっしり残ります。ニックが唄っているパートもあり、『Skeleton Tree』を思い出す音づくり。ニックは三年前に15歳の息子を不慮の事故で亡くしており、『Skeleton〜』はその影響が色濃く現れた作品だ。「もし子供をもったら決して目を離さないこと」という台詞はニックには堪えたのではないだろうか。誰のせいでもないのに、少し、ほんの少し目を離しただけで子供を奪われてしまう。この映画のラストシーンが、愛する者を亡くしたすべてのひとに届くことを願う。
-----
・『哭声』のときもそうだったが、2ch(現在は5ch)の今作スレがとてもよい読みものになっています。掲示板のよいところは、自分がフォローしていないひとの感想を読めるだけでなく、各々の考察で交流を持てるところだな。TLがザッピングにならないところも落ち着く。 テキストサイトもそうだけど、SNSとは違うよさを改めて感じている今日この頃
|
|