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2014年12月27日(土) ■ |
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『ガガーリン 世界を変えた108分』 |
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『ガガーリン 世界を変えた108分』@シネマカリテ スクリーン2
昨年も今年も、年末に宇宙に行って帰ってくる映画を観ている…いっそのこと恒例にならんか。と言う訳で観てきたー! ユーリ・ガガーリン生誕80周年記念ですよー! ちなみにガガーリンが宇宙に第一歩を刻んだ4月12日は、ウチの父親の誕生日と言うこともありなんだか記憶に馴染みがあります。で、今回のことで気付いたが、そのウチの父親とガガーリンは同じ1934年生まれであった。そーだよなあ、なにごともなければ生きていてもおかしくない年齢なんだよね。ソチ五輪でテレシコワが出てきたときにも思ったけど。
閑話休題。ガガーリンが宇宙へ飛び立ち帰還する迄の108分を再現、その間に過去のエピソードを織り込んでいく構成。当時の実際の映像と映画ドラマ部分の映像とのバランスもよく、役者も似ている。フルシチョフも似てたー(笑)。
初めてご家族の協力を得て製作された長編伝記映画だそうで、人類初の宇宙飛行士を「愚か者」と読んだ母親の言葉が沁みます。ソ連時代に作られていたらここは伏せられただろうなあと言う箇所も結構あり、ああ、ソ連と言う国はもうないのだなあとも思った。「宇宙船がアメリカ側に着陸したら爆破してしまわないと」とか「(ガガーリンをマスコット的に)世界中に見せびらかしたい」とか……。文献で読んだことはありましたが、実際台詞で出てくるとギョッとする。最後にちょっと触れられていますが、帰還後のガガーリンは広報活動に忙殺され、二度と宇宙へは行けなかった。来日もしてるんだよね(そのときの実際の映像が最後ちょっと出てきます)。「人類初」「英雄」の重圧に押しつぶされ、スキャンダルを起こし、やがて事故で亡くなった。その事故の経緯も諸説ある。ソ連の秘密主義もあり、彼の晩年は不可解なことも多い。鴻上尚史が以前「物語はいつも途中迄。登場人物たちの人生はまだまだ続く」と言っていたことを思い出す。
それでも、この映画は彼が宇宙に行ったこと、そして帰ってきたこと、それによってソビエト国民に、いや、世界中のあらゆるひとびとにある種の光を見せてくれたということを、誠実に描いたものでした。貧しい家に生まれ、厳しい自然と環境のなかで育った幼少時代から、工業高校から航空士官学校へ進み空軍へ、そして宇宙飛行士選抜候補生へ。人類初の宇宙飛行士を目指す仲間たちとの激しい競争は、死と隣り合わせの過酷な訓練。実験の意図をちゃんと知らされなかったり、行動を監視されていたりと不安も大きい。無重力空間で人間はどういった状態になるのか? もし宇宙空間で不測の事態が起こったら? 未知と言うものは本当に恐ろしい。皆で事故の映像を観る場面は緊迫感溢れるものでした。それでも彼らはお互いを認めあい、選ばれた者を祝福し、任務の成功を祈ります。美談になりそうなエピソードも、抑えた演出で好感が持てました。厳しい日々にも、無邪気な時間があったのだなあとちょっとホッとしたり。家族との幸せな時間にあたたかみを感じたり。
ガガーリンと、二番目に宇宙に行ったチトフとの微妙な関係も印象的。やっぱり歴史に名を残すのは一番目。何故彼がひとり目に選ばれたのか、にもやはり諸説あります。狭い宇宙船にコンパクトに収まる体型だったからだとか、貧しい家の生まれだからだとか(=もし任務が失敗に終わった場合いろんな意味で対応しやすいし、成功した場合英雄に仕立て上げやすい)。さまざまな思惑のなか、自分と周囲を信じるしかなかった彼らのまっすぐな瞳が眩しかったです。
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・『チャイルド44』でロシアにハマったあと、レニングラード封鎖から米ソ宇宙開発競争の関連書籍迄読んでいた(そして今ではロシア雑貨にハマっている)のがいろいろ役にたった…「逃げないで、私はソ連人です」ってエピソードもちゃんと出てきた! ニュースが流れたとき昇進後の階級でアナウンスされたので父親が「同姓の別人だろう」と思った話とか
・ロシア宇宙開発史/Russian Space Anthology ここを読みあさっていたのもいろいろ役にたった〜。充実コラム満載です。有難い
・『月をめざした二人の科学者』のコロリョフ出てきたときはわー! てなった。これにコロリョフがガガーリンかわいがってた話ちょっと出てくんだよね
・で、これ読むとわかるんですが米ソの宇宙開発って実はどちらにもドイツの技術者たちが関わってるんですよね。今作でのドイツ人の描かれっぷりはかなりアレで(まあ、そういう時代だよね…)そこもせつなかった……ボリスくん、あれからどうなっちゃったんだろう
・めでたいことがあるとわーって赤の広場に集まるの、今見ると渋谷のスクランブル交差点とか大阪の道頓堀とか思い出すわ……(貧困な連想)
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2014年12月22日(月) ■ |
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『ア・ラ・カルト アンコール!〜役者と音楽家のいるレストラン』 |
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『ア・ラ・カルト アンコール!〜役者と音楽家のいるレストラン』@青山円形劇場
こんなことってあるのだなあ。さよならをした作品に、アンコールがあるなんて。嬉しくもあり、寂しくもある事情。そしてその寂しさは、この作品にとっては三度目だ。どれが「本当の最後」かなんて、今となってはどうでもいい。インタヴューで高泉さんが「何故私は記録に残らない、その場限りで消えてしまう演劇を仕事に選んだのだろう」と話していたことを思い出す。その場限りで消えてしまうからこそ、そこで受け取ったものは何ものにも替えられないそのひとだけの宝物になるのだ、記録に、形に残らない宝物だと観客は思う。
過去上演されたエピソードから選りすぐりのものを“ヴィンテージ版”として、比較的長尺で。クリスマスにひとりでレストランにやってくる女性、タカハシ、マダム・ジュジュと言ったおなじみの面々が登場する。リニューアルオープンしてからのシングルモット愛好会や、長い時を経て再びシングルになった男女もやってくる。そこにはノリコさんはいない。ペギーさんはいない。老夫婦のダンスはない。料理を食べて、その口のなかを見せる女の子と、その振る舞いに困惑するお父さんもいない。山田のぼるくんは出て来た。ご両親(のなかのひと)は違うひとだった。「ウチのお父さんは日替わりなんだ」だったかな、そんな台詞がちょっとしみた。
「私だけは生き残りますように」と言う台詞がなくなった。ワインサービスがなくなった。閉店後一服しようと煙草を取り出したギャルソンは、火を着けようと近付いた瞬間キャンドルを奪われるようになった。長く続いた公演だけに、社会情勢や世の中の空気が反映された出来事も沢山あった。無邪気な時代が過ぎていく。劇場(レストラン)閉館(店)に関するタカハシの憤りが爆発する場面には拍手喝采。その後政治的な発言に傾きそうになり、ちょっとだけ客席が身構えたように感じた。しかしそこは流石の高泉さん、絶妙なタイミングで「こ゛の゛よ゛の゛な゛か゛を゛お゛〜!」とあのキャラクターを出してきた。もう大ウケ。いやー、タカハシの声ってあれにピッタリだね! なんて、最終公演にして新しい発見をしたのは収穫でしたわ……。
帰って来た陰山さんは、山本さん、本多さん、中山さんとのコンビネーションもちょっぴりぎこちなく、繁忙期にヘルプで来たギャルソンと言う風情。実際「ちょっと手伝いに来ただけですから」と言っていた。緊張もあったようで「ひとっつも、思い通りに出来なかった!」なんて言い放って大笑いされていた。登場したときの歓声と拍手にはやはり独特な空気があり、こちらも胸がいっぱいになった。ちょっとだけふっくらしたけれど、あの柳腰は健在。髪に白いものが増え、より一層の渋い魅力。そんな彼があのアホ衣裳(賛辞)で「Watermelon Man」を唄い踊る訳ですから、そりゃあ客席から悲鳴も出ますよ(笑)。何が出るか知らないまま観たかったので、終演迄メニュー(この公演はプログラムのことをそう呼ぶ。スタッフの方も「本日のメニューです」と言って手渡してくれる。そういう細やかなひとつひとつに、しっかりとした世界があった)を開かないでいたのですが、開演前後ろの席のひとが「きゃあ、『Watermelon Man』やるよ!」と話していたのが聴こえてしまった(笑)。いやーもう待ってましたのやんややんやでしたよね……。
ROLLYの歌と中西さんのヴァイオリン。クリスのベース、竹中さんのギター。この作品から生まれたコラボレーションの数々を振り返る。とても贅沢で、芳醇なサロンでもあったこのレストラン。ピアノの北島さんは十二年振りの参加、この日が最終日でした(翌日からは林さん)。
最後の挨拶で高泉さんは「また、ア・ラ・カルト(だったかな、このレストランで、と言ったかな)で会いましょう」と言ってくれた。大きな拍手。余談だが、タカハシたちの「閉店しちゃうって本当ですかね」「立ち退きらしいよ」の“立ち退き”を、私は最初“勝鬨”と聴き間違えた。勝鬨に移転って設定? ああ、いいかもね。ここ数年開発が進んでいるし。川勝さんの住んでいた街だ。なんてしばし考えた。うん、勝鬨で新装開店、いいかも知れない。一瞬の楽しい妄想。
これだけ長くひとつの作品を観続けることは、残りの人生考えてももうないな。役者と音楽家のいるレストラン。変わりゆく愛しい世界へ通い続ける幸福を、有難うございました。
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・と言う訳で今年の観劇はおしまい、そして青山円形劇場での観劇もおしまい。数々の思い出に残る作品、楽しゅうございました。感謝感謝
・青山円形劇場は、ちゃんと数えてはいないが恐らくいちばん通った劇場。何せ鈴木勝秀演出作品の貯金がすごい(笑)。顔を憶えている劇場スタッフの方もいる。観劇を続ける限り、この数を上まわる劇場は出てくるかも知れない。どうなるか判らない
・こどもの城がなくなると、岡本太郎の『こどもの樹』や福田繁雄の『…111,112,113…』もなくなってしまう。考えてみれば、開館当時は岡本さんも福田さんもご存命だったのだ(だからこそ新作を提供出来たのだ)。劇場機構は勿論、外観も愛してやまない場所でした
・第35回「こどもの城」| Fashionsnap.com
・意外と知らなかった都内の有名パブリックアート 〜西東京編〜 | モコモコ博士の建築観察ゼミ
・ちなみに円形、1/13〜16の公演(カルメン・ワーナーのワークショップ+ショウイング)が発表されています。公式サイトのスケジュール、一月下旬は未だ「調整中」。非公開あるいは関係者のみの、何かしらのイヴェントがあるかも知れないですね
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2014年12月21日(日) ■ |
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『海をゆく者』 |
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『海をゆく者』@PARCO劇場
初演の評判がたいへんよかったので、すぐ再演があるだろう、そのときは是非観に行こうと思っていました。そしたらまー五年経ちましたよね……しかし、初演と同じキャストが揃いました。これは待った甲斐がある! てなもので。その間キャスト五人中四人が還暦を越え、吉田鋼太郎はブレイク? を果たし(たらしい…いや、該当のドラマどっちも観てないんでピンとこない……)。そして役柄では恐らくいちばん年長であろうリチャードを、いちばん歳下の吉田さんが演じていると言う。脂ののった役者たちの魅力が存分に堪能出来る作品でした。
呑んだくれ五人が過ごす不思議なクリスマスイヴ。一触即発の諍い、暴かれる過去、危険なギャンブル。そこで起こる奇跡。思い起こせば数年前のクリスマス直前、『ビューティ・クイーン・オブ・リナーン』を観て相当ドンヨリしたものでした(内容は素晴らしかったヨ!)。これで〆るのはあまりにつらしまだわと、この年はそのあとに『ア・ラ・カルト』を観るというスケジュールを組んだんでしたよ……。それにしてもこの二作品といい、今年観た『THE BIG FELLAH ビッグ・フェラー』といい、いや、アイルランドが舞台の作品って、観るもの観るものアルコール依存と言う深刻な問題が出てくる。そこに離れられない家族や仲間との愛憎が絡んでくる。登場人物たちは酒が原因で人生を踏み外し、破滅への道を辿る。ここらへん、自分の観劇歴ではマーティン・マクドナーが刷り込みになります。
ところがこの『海をゆく者』には、信仰と、周囲の献身がある。献身は信仰からくるものでもあるだろう。どんなに呑んだくれていても、罵りあっていても、家族が、仲間が、最後の崖を踏み外さないように見守っている。終盤、リチャードがまるでひとりごとのようにシャーキーへと呟く言葉は、ストーリーの流れからすると過剰かもしれない。それ迄横暴にすら映ったリチャードの振る舞いは、シャーキーへの献身だったのだと、あの台詞に集約される迄もなく感じとることが出来るからだ。しかしそれを敢えて口にする。ここに演劇の、言葉を信じる力がある。作者のコナー・マクファーソンは若くして成功を手中に収め、その後アルコール依存に苦しめられたそうだ。あの台詞は、彼がかつて誰かに言われたことかも知れない。誰かに言われたかったことかも知れない。ひとは「それでも人生にイエスと言う」のだ。
大谷亮介には、今生きることに躓いている盟友がいる。周囲の理解、献身を得て、彼が再び筆を執ることを祈る。どんなひとにも夜は来る。そして夜明けも来る。素敵なクリスマスを。
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その他。
・(壁ドン)(壁ドン)(小日向さんが壁ドン)…あのシーンのとき、客席の思いが吹き出しになって見えた気がしましたよね……初演時にはなかった連想(笑)
・ストーリー展開を敢えて調べずに行ったので、序盤は下戸として平田さんに至極同情してましたよ…酒入ってたからって許せることと許せないことがあってだな。酒が原因でイヤな目に遭わされたことも少なくないし、酒で身を持ち崩したひとが身近にいない訳でもないんでな。あーあー
・ホントは全部許せたらいいんだけど、取り返しのつかないことってのはあるものだ
・アイルランド人の呑んだくれっぷりはよお〜とあのじさんと話してて、ふとManic Street Preachersの「A Design For Life」が浮かびましたよね……マニックスはウェールズの子たちです! “We don't talk about love we only want to get drunk / And we are not allowed to spend / As we are told that this is the end”だよ! うわあああああ(号泣)
・と言えばアイリッシュブレックファスト、ウェールズではウェルシュブレックファストなんだけど(てかイギリスでもスコットランドでもほぼ同じだそうで)、ニッキーが食べてるのミッチさんの写真集に載ってたわ(笑)
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2014年12月12日(金) ■ |
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『ベルリンファイル』 |
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『ベルリンファイル』@韓国文化院 ハンマダンホール
原題は『베를린(ベルリン)』、英題は『The Berlin File』。本国でも日本でも2013年公開。監督は『生き残るための3つの取引』のリュ・スンワン。やっと観られた〜て言うか、駐日韓国文化院の定期上映会でかかると知ってから、半年以上観るのをおあずけにしていたのだった。やっぱりスクリーンで観られる機会があるなら、それを最初にしたいのね……。
その間、ネタバレ避けつつ舞台裏のエピソードを沢山読んで当日を待ちわびておりました。初のブロックバスター作品を手掛けるプレッシャー、慣れないベルリンでの撮影に悩まされ、体調を崩していた監督にリュ・スンボム(スンワンの実弟。出演もしてます)がコチュジャンチゲ作ってあげた話とかな……。で、実際観てみてあーこりゃホントお兄ちゃん具合悪くなるわと思った(笑)。規模も予算もデカいなー! てのがありありと…しかしそれをちゃんと作り上げたお兄ちゃんすごいな! あの小柄な、温和な空気をまとったお兄ちゃんの、映画への秘めた熱情を感じたわ……。
監督の人柄とか先に知ってしまうとなんかいろいろと情がわきますが(笑)、同時にこのひとの監督としての手腕に恐れ入った次第です。演出のテンポのよさが見事。弛緩がない。退き映像による追跡シーン、接近映像による肉弾戦の塩梅も絶妙。対象がしっかり捉えられてる。終盤の銃撃戦は過去の名作へのオマージュを感じさせ、緊張感溢れる見応え。スピード感溢れる幕開け、余韻と登場人物への未来を匂わせる幕切れもいい。CGの使い方もやり過ぎない、職人的な適材適所。腰の据わった骨太アクションエンタテイメントでした。待った甲斐があった、その期待を大きく上回る出来。いーやーすごいなー。
各所で指摘されていたようですが『チャイルド44』との共通項が沢山あってそういう面でも楽しめた。片や北朝鮮の“ゴースト”ジョンソン、片やソ連の国家保安員レオ。妻が反逆罪に問われるかもと言う疑惑、そして追われる立場に。で、またその追う側ってのがひとくせある人物で。電車内尾行とかこどものこととか、細かいところも被ってたなあ。ソ連が崩壊した今北朝鮮と言う国は、皮肉なことですが映画にとって絶好なモチーフになるんですね。なんだかいろいろ考えてしまったわ……。もう『チャイルド44』もお兄ちゃんが撮っちまいなよと言いたいくらいです。ハリウッドで監督もキャストも既に決まってますけども、スンワン演出で観てみたいわー。
キャストも魅力的。“ゴースト”ジョンソンを演じるハ・ジョンウと彼を策謀に陥れるミョンスを演じるリュ・スンボムのバトルは緩急自在。ハジョッシ(=ハジョンウ+アジョシ。一部で親しまれている愛称)の無表情は、その奥に饒舌な表情を湛えてる。ネコ科の猛獣を思わせる、洗練と野性が同居した身のこなしに目が釘付け。スンボムはホントワルい役をイキイキと演じるなあ。ニヤニヤした顔がチェシャねこに似ています…ねこばっか連想するな! ミョンスの言葉遣い、わからなくともなんかすっごい聴き慣れない…これってリアムとかボビーの言葉がよく聴く英語に聴こえないってのと同じ感じ……? あ! これ北朝鮮なまりか! と気付いたときのユリイカっぷりは気持ちよかったわー。ジョンソンの妻ジョンヒ役、チョン・ジヒョンも好演。地味な装い、ぶっきらぼうな言動からにじみ出る美しさ。そして彼らを追う韓国国家情報院エージェント、ジンスを演じたハン・ソッキュ。冴えないふりして(前半相当冴えない)終盤の銃撃戦で光る光る! 草むらでジョンヒを見付けたときの戸惑い、優しく声をかける様子とのギャップがまた素敵。
そういえばアベフトシ+ウエノコウジ÷2みたいなひとまた出てた…まだ調べないと名前思い出せない。ごめん。ペク・スンイクですね。ここの画像ホントアベフトシ+ウエノコウジ÷2だわ、似てるわ。『新しき世界』ゴールドムーンの会長役、イ・ギョンヨンも重要な役で出てました。いやはや輝国山人さんのサイトほんと有難い、韓国映画界のまねきねこさんだわ(演劇好きにしか通じないたとえ)。
いやはやエキサイトしたわー、公開時観てたらその年のベストに確実に入れてた。大きな画面で観られてよかった。それにしてもこの定期上映会、仕事終わりの職場からも行きやすい場所と時間帯で、今後頻繁に利用していきそうな予感です。
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その他メモ。
・公式サイト 残っててよかったー。余談だが最近映画や演劇の公式サイトがFB直結になってるのにはうむうとなる……構築も更新もやりやすいし、宣伝展開的には楽なのは判るがなあ
・リュ・スンワン監督来日!「ベルリンファイル」公開記念 座談会 - アジアンエンタメ情報サイト アジアンハナ トップの写真…この真ん中の、ちっちゃい、小首傾げた子(子って言うな)が監督なんですよ! 何このギャップ!!! それはともかく内容充実の座談会です
・輝国山人の韓国映画『ベルリンファイル』 データベース等。すっかりお世話になっております……
・『ベルリンファイル』感想まとめ - Togetterまとめ twitterはどんどん感想が流れてしまうので、まとめがあると後続組には有難い!
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2014年12月07日(日) ■ |
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『夕空はれて ―よくかきくうきゃく―』 |
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『夕空はれて ―よくかきくうきゃく―』@青山円形劇場
休憩込みで80分くらいの作品だったんですが、消耗したー。いやはやこれも今年最後に観る作品じゃなくてよかったと思った…や、こういうお芝居大好きなんですけど! 今弱ってるんで! 穏やかに年末を迎えたいんで!
台所用品(スーツケースの中身、ちゃんと泡立て器とかいろいろ入ってて楽しかった)の販売のため街を通りかかったばっかりに…おもろうて やがてかなしき 仲村トオル(字余りそして敬称略)。前日のイキウメと連続で見ると「話が通じない恐怖」「恐怖とは判らないこと」ってとこに通じるものがあっても〜削られた。不条理ものとしてニヤニヤ観ていたのに、だんだん怖くなってくる。サイコホラーだ。そういえば『象』もそうだったなあ、どうあがいても、ひとは死に近付くばかり。
それにしても仲村さん(の役)が不憫で……。舞台における仲村さんの魅力を引き出したのって松尾スズキさんと言うイメージが強いのですが、思えば松尾さんとの舞台仕事は一作品だけなのだった(確か)。いちばん組んでるのは白井さんか? ケラさんとは二作目かな。二枚目の役柄も素敵ですが、こういう周囲に翻弄される役柄にとても愛嬌があるんですよね。その困惑を引き出す犬山さん、山崎さん、マギーさん。言葉の裏の裏をとる、言葉の真意を測る。濃密なやりとりを軽妙に見せる、不毛な対話を聴かせきるその巧さ。そして二幕から登場(贅沢!)の池谷さん、登場からしばらくその声だけ聴かせる演出がにくい。これまた贅沢。
美男美女を至近距離で観られて眼福でもございました。緒川さんとかほおお…と嘆息しそうなくらいの美貌ですね、立ち居振る舞いといい。奥菜さんはケイティ・ジェーン・ガーサイドみたいでちょー素敵でした、白塗り花嫁。
急遽変更になったにも関わらず、この作品のためにキャスティングされたかのような座組になっている。円形の舞台を取り囲む電柱と電線、その暖色の照明。音響といい衣裳(小原敏博さんだったー)といい、粋を尽くしたスタッフワークも素晴らしかったです。ラストシーン、仲村さんの背中を見詰めて暗転。表情は見えない、円形劇場の醍醐味。別役さんの新作も諦めず待っています、元気になってね。
青山円形、観るのは残り一作品(多分)。
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2014年12月06日(土) ■ |
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『新しい祝日』 |
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イキウメ『新しい祝日』@東京芸術劇場 シアターイースト
これが今年最後に観る舞台じゃなくてよかったと思った…いろんな意味で(笑)。エチュードで作り上げていった場面を構成していったのかなと思えるところがあり、劇団としての新展開を感じました。特に会社における人間関係のあれこれには、城山羊の会(今やってる新作観たかったが、日程の都合がどうにもつかず・泣)を連想したりもしましたが、そこにセクシャリティが持ち込まれない(モチーフとしてはあっても生々しくならない)ところや、モチーフの扱い方、掘り進め方は前川さんとイキウメのカラーそのもの。
口にしたら壊れる関係、空気を読む空気、感情と理性の境界線。人間の営む社会生活とは、何によって成り立っているのだろう? むしろ原因が感情である方が方が付けやすい。配役表と役名は観劇後に見たのだが、「慈愛」「権威」「敵意」「公正」「打算」「愛憎」「真実」と名付けられた人物たちは、時間と場所を越え、さまざまな社会生活の立場で「汎一」と「道化」を取り囲む。パンいちでもある汎一は、制服を着、自分の身体と社会における役割を学んでいく。道化は汎一に近付いては離れ、その都度疑問を投げかける。正しいとされることを、自分のなかでどう飼い馴らすか。飼い馴らされた正しさは果たして真実なのか。真実は事実とどう違うのか。
出番のないときの登場人物は舞台の両端に置かれた椅子に座る。無表情で舞台を見ている。汎一と決裂した(かに見えた)道化は、その椅子にふてくされたように座り、やがては舞台に興味を失い眠ってしまう(ように見える)。「コドモ会社」にいちばんよく似合う扮装は、道化のそれだ。折り合いをつけないことと駄々をこねること、それらはとてもよく似ている。
いやーしんどい。普段口にしないように、見なかったふりを、気付かないふりをしているところに手を突っ込まれてグリグリされた気分。特に現在、絶賛年末進行中につき無の心で仕事してるからな!(笑)反面、道化や真実の言動にそうだ言ったれやったれと思ってしまう自分もいる。そんな鬱憤の晴らし方、なかなかいやなもんです。それでも道化に「もう大丈夫だな」と言われたい、そんな気もしている。同時に言われたくもない。道化を演じたのは安井さん。いやーもう流石です。『地下室の手記』上演時のコピー、「理路整然と罵詈雑言」。彼の立ち居振る舞いは理性にも感情にも訴える。彼を擁するイキウメは強い。そして「息を合わせ」る劇団員のこれまた整いっぷりに唸るやら震撼するやら。こういう、整然としたマシーン的な状況や人物に囲まれ惑いもがく人物、と言う関係性を全て生身の役者で表現するのもこの劇団の強いとこ。段ボールや折り紙を使った装置、小道具も効果的でした。
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