Desert Beyond
ひさ



 彼方へ

なんだか今年の夏もまただらだらと過ぎてしまった。
8月の終わりから夕方が涼しくなってきて
もうすっかり朝夕は涼しい秋。

そうだ。青春18切符の期限は9月10日までで
あと1日分の切符が残ってるんだった。
実家に帰ったときに、友達と新宿に会いにいくのに
青春18切符を使ってしまったのは誤算だった。
1枚残すくらいならあの時はちゃんと切符を買って
2枚分残しておけばよかったなぁ。
2枚あればどこかに野宿して遠くへ行けたのに...。

つくつくほうしが遠くの方で鳴いている。

昼間はこんなにも日差しが強くまぶしいのに
夕方は涼しい風が吹いてもうヒグラシも鳴かない。
夏は寂寥の彼方へ....

2006年09月08日(金)



 名月

今宵は満月なのかな。
夕方、雲が多くて
日が沈んで暗くなったのか
雲が多すぎて暗くなったのか
よくわからないうちに暗くなった。
耳を澄ましたら軒を雨がさらさらと打つ音がした。
今日もにわか雨。
アルバイトに行くころには雨は上がっていて
しっとりと道路をぬらしていた。
猫は気持ち悪そうに雨でぬれたアスファルトを
なるべく踏まないようにして
建物に沿うようにして音をたてずに散歩していた。
僕が見ていることに猫は気づかず
一度とまって自分の体を4回なめてまた歩き出した。

アルバイトが終わる頃
東の方はたくさん雲が途切れて
その間から雲の向こうの強い月の光が照らしているのがわかった。
少しみているとまあるい月は雲から出て
雨上がりの街全体を照らした。

2006年09月07日(木)



 おと

日が落ちる頃に寝てしまって
夜の九時を回った辺りで目が覚めた。
部屋の暗闇に街の灯りが薄く入っている。
たまに吹く風はもう秋の風だった。
暗闇の中でベッドに横たわっていると
何だかわびしい気分になる。
耳を澄ましてじっとする。
横の道の下水の格子が車が
通る度にガッタンとうるさい音をたてる。
近所の家から子供の遊び騒ぐ声が聴こえる。
遠く吠える犬。
さらにはるか遠くから救急車のサイレンが聴こえる。
自転車のブレーキの音。
原付バイクのエンジンが立ち上がり、去って行く。
それでもどこかから秋の虫の音が聴こえた。



2006年09月02日(土)
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