Desert Beyond
ひさ



 No.15 in F minor, op.55 No.1

夜、車1台がかろうじて通れる狭い道路を自転車で往く。右はブロック塀が続き、左は住宅。自転車のランプは音をたてながらハンドルの揺れに合わせて揺れながら道を照らす。タイヤが道路の小石を踏む音。向こうで光がパリパリと見えた。アパートの階段横から道に向けて男女がしゃがんで花火をしていた。少しよれた白いティーシャツの男の子は次の花火に火をつけようとしていて、浴衣の女の子は手に持つ花火の光をじっと見ていた。

この世界で今までどのくらい多くの人が未明にノクターンに耳を傾けた事だろう。ノクターンは夜をもっと深いものにするような気がする。例え今晩のように満月の近い十三夜月の夜でも、ノクターンによって夜藍色の薄い帳が街に降ろされる。

真っ暗な部屋のベッドに仰向けに寝てノクターンを聴いていると、だんだんとピアノの調べがちくちく心に刺さってどうにもいたたまれなくなった。僕はもう過去何年も音楽を聴きながら眠りに落ちる、ということをしていない。音楽を流しながら寝ると疲れる気がするし、起きた時に音楽が流れているのが好きではないからだ。今日の僕はノクターンを聴きながら寝てしまおうとしたが、それどころではなくなってしまった。心を揺れ動かされて、なんだか哀しいような気分だ。夜想曲っていうのは夜に作ったものじゃないのかな。日本語にしたからおかしく解釈しようとしているだけだろうか。夜を想って書いた曲なら、夜でない時に書いたのではないか。夜に書くと、書いている時の夜に邪魔されてしまって想うところの夜を曲にしづらいんじゃないかと思う。嗚呼、あと一時間半もしたら東の空が明るくなってしまう。八月八日か。

一週間に一度、同じ時間に水平線の上に西の空が広がる景色が見える道路を通らなくてはならない。最近、日が落ちるのが随分早くなったと感じる。もう秋は近づいてきているんだ。秋を想うと冬も想う。どちらも大好きな季節
だ。


2006年08月08日(火)



 

夜、車1台がかろうじて通れる狭い道路を自転車で往く。右はブロック塀が続き、左は住宅。自転車のランプは音をたてながらハンドルの揺れに合わせて揺れながら道を照らす。タイヤが道路の小石を踏む音。向こうで光がパリパリと見えた。アパートの階段横から道に向けて男女がしゃがんで花火をしていた。因れた白いティーシャツの男の子は次の花火に火をつけようとしていて、浴衣の女の子は手に持つ花火の光をじっと見ていた。

この世界で今までどのくらい多くの人が未明にノクターンに耳を傾けた事だろう。ノクターンは夜をもっと深いものにするような気がする。例え今晩のように満月の近い十二夜月の夜でも、ノクターンによって夜藍色の薄い帳が街に降ろされる。


2006年08月07日(月)
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