Desert Beyond
ひさ



 軒を打つ雨音は今でも

段ボール箱を開けるとかすかに黴の様な匂いがする。
古い藁半紙の下には昔の日記帳があった。


時を越えて
深夜。
鼻の奥の方がじぃんとしているのは
この寂れた街では僕しかいないに決まっている。
目を瞑ると暮れる砂漠に吹く乾いた風の匂いが蘇る。

まだ僕の心の深いところに
そう、光が届かない場所に
砂漠の抽斗が置いたままになっていて
砂を感じながらひとつ引いてみると
あの頃の音が、味が、匂いが
ふわりとこの身を包むのです。

2016年02月21日(日)
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