2007年03月27日(火) 宣告

えあですこんにちは。
母入院日記その13。
初日はこちらから。




今日は、主治医の先生から、母の病状についての話を聞くために、会社を休んで病院へ行くことになりました。
10時からという約束だったので、朝の9時半の少し前に家を出ました。
外は晴れていてとてもいい陽気で、自転車で走るのも爽快です。
桜もそろそろ咲き始めているのでしょうか。家から病院までの道のりに桜の咲く場所はありませんので分かりませんが、今度川沿いか、小学校の方を回ってみましょうか。
……咲いてたら、母にも見せてあげたかったのですが。
今度、携帯にでも撮って見せに行くことにします。

病院に着きまして、いつものように駐輪場に自転車を止めて救急入り口から入りました。救急入り口の方が正面入り口よりも近いのです。
母の病室に行くと母は荷物を纏めてベッドを移る準備を既に終えて待っていました。
荷物を纏めたついでにこのまま退院できればいいのにねえ……。いや、こんな時点で笑顔で退院してもイイヨ?とか言われても、ある意味ヤですがね。
先生に会いにナースステーションに行ってみましたが、先生は外されているようでした。看護婦さんに言うと呼んでおきますね、と言っていたので、病室に戻ってしばらく待っていることにしました。

いつものように雑談しているうちに30分程が経過しました。
約束の10時は過ぎましたね……声をかけてはくれないんですかね。ナースステーションの前で待っていたほうがよかったんでしょうか?
ひとまずもう一度行ってみましょうか。
ということでもう一度ナースステーションに行ってみましたが、先生はまだいないご様子でした。
ちょ待て、とか言いたい所ですが先生はお忙しいですからねと理解を示してみることにします。
……とりあえずトイレに行ってきます。
と、トイレに引き返した途端に先生とばったり遭遇。
トイレに行く旨を伝えてそそくさと用事を済ませ、ナースステーションに戻りました。

先生は、ナースステーションの奥にある、カンファレンスルームのような部屋へ私を案内しました。
母は、そわそわとしながらナースステーションの外で先生の後についていく私を見ていましたが、先生は母を振り返り、
「左沢さん(仮名)もどうぞ」
と声を投げかけました。

母も一緒に聞くんですか。
重篤な病気を告知する際は、まず家族にのみ告知しておくものだと思っていましたが(祖父はそうだった)……
母も一緒ってことは実はそこまで重い病気でもなかったり……?
だったらいいなあとか……いやしかし、本人も同時に告知を聞くっていうパターンもあるって聞くよなあとか……でも母にはそういうの聞かせたくないんだよなあとか……
等と色々考えを巡らしながら、母と一緒に部屋に入りました。

部屋には長机とパイプ椅子と、レントゲン写真を貼るバックライトのついたホワイトボードみたいなのが置いてありました。
二人並んで待っていると、先生が正面に座りました。



「婦人科で腹水が見られる場合、まず疑われるのは卵巣腫瘍です」
先生は、席につくとおもむろに話し始めました。
切り出しの説明は、入院時に聞いたものと同じでした。その疑惑があるために……この婦人科に入院したのですから。
「そこで、CT、MRI、レントゲン、血液検査、尿検査、腹水の検査など、あらゆる検査を行いました所……」
冷静な顔をしつつも、内心は叫び出してしまうほどの緊張を覚えながら、食い入るように先生の話に耳を傾けました。
ああ、どうか、余命数ヶ月とかそんな話にはなりませんように。
祈る気持ちで聞いている私たちに先生は言いました。

「とりあえず、がんではないですね」

!!
がんじゃない!?
これまでに腫瘍マーカーだの卵巣腫瘍だのという言葉に怯え続けてきた私にとって、その言葉は全身が脱力するほどにほっとする一言でした。
無論、がんではないながらも原因は他にあるということですから、本来は全く安心できる説明ではないのですが、やはり、一般人にとって「がん」以上に衝撃を受ける病名はないのではないかと思います。
母の父である祖父もがんで亡くなっておりますし……
母自身も、口には出さないながらもかなりの恐怖を覚えていたのではないかと思います。

「あるとしたら影も映らず血液検査などにも全く出ない腫瘍ですけど、まあそれは大変低い可能性なので、ないと思っていいです」
と先生は重ねて言いました。
!?最初に言った腫瘍マーカー云々ってなんだったのさ!?
ここは本当は突っ込むべき所だったような気はしますが、突っ込む前に先生は続けました。
「婦人科でも消化器でもないとすると、心臓が弱って水が溜まったということが考えられます。
なので、今日の午後から循環器科の方に移ってもらうことになります」

心臓、ですか……
入院前の診察で、内科からまず最初に回されたここへ、また舞い戻ってくることになりました。
……。
……?
あれ、循環器科って言いました、今?
母が言い間違えたのか、私が聞き間違えたのか謎ですが、お引越し先は消化器科ではなくて、循環器科だったようです。
循環器科だと最初から認識していたら、少なくともがんではなさそうだということはその時点で分かっていたのに……(いや、知らないだけで循環器にもがんはあるのかもしれませんが)
なんか非常に騙された感を覚えます。勝手に。

勿論循環器系の疾患は、がんと並び日本人の三大死因の一つですから、怖いものには違いないのですが……
余命数ヶ月を本気で覚悟していた側としては、ひとまず安堵の吐息を漏らす余裕を得た心地でした。
心臓の働きが悪くなって、というのはつまり心不全ということだと思うのですが、これは慢性的な持病としてゆるゆるお付き合いしていくような症状ではなかったかと思います。
少なくとも数ヶ月、とかそういう話ではないはずです。

しかし、
「婦人科でも消化器でもないとすると、心臓が弱って水が溜まったということが考えられます」
という言い回しですと、実際は循環器科の病気と分かったからそっちへ行くことになった、というよりは、がんではないから次にありそうな所に回してみた、という感じのようです。
つまりは結局まだ正式な結果は出てない、ということなんですよね……

そもそも本当に心不全だとしても、心不全自体も腹水と同じように、何らかの原因があって出てくる症状であった筈ですし……
一体、母の病気とはなんなのでしょうか。
結局それは、謎のままです。



ともあれ、先生のお話は以上でした。
お昼を食べたら、この婦人科病棟にお別れし、新天地へとお引越しです。
看護婦さんが、荷物を運ぶ為にワゴンを持ってきてくれて、それに着替えやら漫画やらを積み込みました。
漫画が10冊以上あるのはさすがに多すぎだと思いました。持って帰っておけばよかった……

新天地、循環器科はひとつ降りた3階にありました。
母は今は特に不自由なく一人で歩きまわれるのですが、看護婦さんが車椅子を持ってきてくれて、それに乗っていきました。
入院時は、車椅子にはまり込んで抜けなくなるほどにあった身体の幅でしたが、今や車椅子に座っても両側はすかすかです。

あれ?そういえば言ってませんでしたっけ。
母の体重はその後も減りに減り、私の体重など、とっくに抜かされましたが、何か?
……。
……おかしいな、母は元々は今の私程度の体型だったと思ってたんですが……

私の懊悩はさておき、新しい病室に到着しました。
母のベッドの位置は4人部屋の窓際でした。
やった、また窓際、と思いましたが……窓から外を覗いても、眼下には2階のロビーの屋根が広がるばかりで、眺めは非常に微妙な感じでした。残念。
まあ、明るいことはいいことなのですがね。

ところで、たった1階の差なのに、この循環器科病棟は、婦人科とは雰囲気が全く違いました。
設備的にも、カーテンの色からして違ったのですが、よくよく見ますと違いはそういう点のみには留まっていませんでした。
まず婦人科は、前に書いた記憶があるのですが、何故かこちらが心配になるほど空いていて、どの部屋も半分くらいベッドが空いていたりとか、それどころか時には大部屋に母ひとりぼっち!という日も生じたりしたのですが(母はイヤホンを使わずにテレビが見れたりして喜んでいましたが)、循環器科はどの部屋も満員に近い盛況ぶりでした。
そして、婦人科では比較的若い年齢層の方が多かったのですが、こちらはじさまばさまの多いこと。婦人科の患者さんは皆大体個別のベッドのカーテンを締め切って生活していたのですが、何故かじさまばさま方は皆様カーテン全開なのです。廊下を通るとベッドに転がったままこっちを見ます。怖えぇ!
そしてなにより……そう、当然なのですが、この病棟には婦人科には当然一人もいない、男性患者がいます。これが大分違います。なんか違います。匂いじゃないけどそういう感じのものがなんか違う。
総じて私は、なんか婦人科の方がいいなあ、と思いましたが、まあ、私が入院するわけではないので拘っても仕方のない所です。

運んできた荷物をロッカーに詰め込み一息ついていますと、病室に、新しい主治医の先生が来てくださいました。
これまで何回か診てもらったことのある、女の先生です。

婦人科の先生からの話を聞き終わり、ひとまず最悪の結果は回避されたと思い込んで安堵していた私と母に、しかしこの先生は唐突に、私たちが予想だにしなかった恐ろしい宣告を下したのでした。
これはまさに、私たちの束の間の安息を引き裂く、悪夢の序曲にも似た青天の霹靂に他なりませんでした……




















糖尿のケがあるのでおやつ禁止&明日から糖尿病食。

Σ(゚Д゚;)(゚Д゚;)オヤツヌキ!!

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