日中、街を歩いていたら『エリーゼのために』を奏でるピアノ音が聞こえてきた。
『エリーゼのために』ピアノを習ったことのある人なら、誰もが目標にする曲ぢゃないかなぁ……と思う。かつての私もそうだった。「ピアノの発表会で『エリーゼのために』が弾きたい」と思う少女だった。が、私のピアノの師匠は私の本質を知っていたのか『エリーゼのために』とは程遠い個性的で激しい曲を私に与えた。ちなみに……しっとりした曲を弾かせてもらえるようになったのは20歳を越えてからのことだ。ベートーベンの『月光』を弾いたとき「やっと、こういう曲が弾けるようになったねぇ」と、師匠に言われたのを今でも忘れることが出来ない。
そんなこんなでピアノを習っていたにも係わらず、私はピアノ曲の定番『エリーゼのために』を弾く機会が無かった。そうこうしているうちに、ピアノを手放してしまったので、結局弾けないままでいる。ついでに書くなら『ねこふんじゃった』も弾けない。なので「ぢつは昔、ピアノ習ってたんだー」と言った事が無かったりする。日記にだったら書けるのに、なんかこう…ピアノを習っていて『エリーゼのために』が弾けないなんて……モグリみたいな気がしてならないのだ。
まぁ、そりゃそうと。ピアノを習っていたのは、今になれば良い想い出だ。セピア色の写真が素敵に見えるのと同じで「子供の頃、ピアノを習ってたなぁ」ってだけで、ほんの少しだけ…心の隅っこが柔らかくなるような気がする。
いつか遠い日、またピアノを弾くことがあれば『エリーゼのために』を弾いてたいなぁ……と思った夏の午後である。ってか、想い出に浸っている時間があれば、なすべきことを早く済ませて、一刻も早く寝て、元気を温存した方がいいよね…ってことで今日の日記はこれにてオシマイ。