白い木蓮の花の下で  

    〜逝くときは白い木蓮の花の下で〜

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2004年10月21日(木) 定期入の秘密

最近、社用で外出する事が多い。「現場に出る」と言うような大層な物ではなく、使いっ走りに過ぎないのだが。図面描きには人と話すのが苦手だったり、外に出るのを嫌がる人も多いが、私はむしろ好きみたい。なりゆきで図面を描く仕事に就いてしまった訳だが、もしかしたら営業とか接客の方が向いていたのではないかとさえ思う。勿論、だからって今さら方向を変える気など無い訳だが。

今日は台風一過の空の下、午後から、ちょろりと外に出た。そして地下鉄で移動の際に、胸キュンな光景を目撃した。

オフィス街を縦断する平日の地下鉄はサラリーマンの姿がやけに目立つ。「バリバリのビジネスマン」てな雰囲気の人もいれば「ウダツの上がらない、しょぼくれた会社員」もいて、サラリーマンと言う言葉では、とても表現しきれない。その人は見るからに「ウダツの上がらない」タイプだった。身体つきは貧弱で、背広もいささかくたびれていた。年の頃なら42、3と言ったところだろう。ホームの椅子に腰かけて、彼は二つ折りタイプの定期入にセットされている時刻表を見ていた。そして、覗くつもりなどなかったのだが、彼の定期入れが私の視界に入ってしまった。

そこには、鮮やかな緑を背中に微笑む女性の姿があった。彼の妻なのだろう。家族写真でなく妻の写真……ということは子供のいない夫婦なのだろうか。ちらりと見えた彼女の顔はとても幸せそうに見えた。

なんだか胸がキュウっとした。重松清の小説に出てきそうな一場面に感動してしまった。

定期入に家族や妻(あるいは夫)の写真を入れて歩いている勤め人さんって案外多いのだろうか? 亡父は自営業者で定期入を持ったことが無かったが、少なくとも彼は定期入に家族写真を入れるようなタイプではなかった。なので「定期入に家族の写真」ってのは新鮮だったと同時に一種の感動を覚えてしまった。しかも若いラブラブ新婚さんならともかく、そこそこ落ち着いた関係に達した(であろう)夫婦が、そんな風に相手を想っていられるなんて、素敵だなぁ……と思う。

何気ない場所で、地味に生きる人が、案外素敵なのかも……と思った。

今の職場は油ギッシュで、仕事にも自分にも自信満々な人が多いのだが、それが全てだと勘違いしないようにしなくてはなぁ……とふと思った。何にせよ今日は素敵な光景に出会えて良かったと思う。1日の後半で、とんだトラブルが発生して「明日は仕事に行きたくないなぁ」なんて思っていたりするのだが、張り切っていかなくちゃね……って事で今日のニッははこれにてオシマイ。


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【同月同日の過去日記】
2003年10月21日(火) きのこの唄
2001年10月21日(日) ワカレ・ノ・サミシサ

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