梅雨が明けたから……って訳でもなかろうが、朝っぱらから蝉の活動が旺盛だ。
蝉の声を聞くと、暑苦しさが倍増するような気がする。もっとも同じ蝉でも夏の終わりに登場するツクツクホウシの声はさほど憎らしく思わない。音質よりも気持ちの持ちようなのだろうなぁ。夏本番に鳴く蝉と、夏の終わりを告げる蝉。印象が違うのも無理からぬことだ。鳴き声はウルサイし、なんの断りもなく道端でゴロゴロ死骸になるし、蝉ってあんまり好きぢゃない。しかし「地中に潜むこと七年」という彼らのサイクルを思うと本気で嫌いにはなれなかったりもする。こういうのって日本人的発想なのかも知れない。
蝉の声を聞くと藤沢周平の『蝉しぐれ』という時代小説を読みたくなる。幼馴染のむくわれない恋とか、武士道とか、いうベタベタなテーマの小説で、めちゃめちゃ面白いかというとそうでもないのに、じわっとツボに入るのだ。夢破れたり、諦めたりしながらも、捨て鉢になるでなく、自分達が置かれた状況の中で、幸せを掴んでいくだろうことを予感させるラストが日本人的で気に入っている。ああいうノリは海外物の恋愛小説では、ほとんど見られないような気がする。
突然話が飛んでしまうが、いま我が家の冷蔵庫はスイカに占拠されている。大人ばかり3人の家族なのに、どうしたものか戴き物が重なってしまった「頑張って食べなくちゃ」という状態だ。子供の頃スイカは嬉しいオヤツではなかった。スイカよりもカキ氷。カキ氷よりもアイスクリームと、よりバタ臭い物の方が好きだったのに、今はむしろその逆で、スイカを美味しいと感じている。年とったのかなぁ……と思ったり。
夏だなぁ……まっこと夏だ。
今年の夏は衝撃的なこともなく、淡々と過ぎていきそうな気がする。だけど何故かそんな夏を愛しく感じたりするのだ。西瓜がはけたら、1年ぶりに葡萄屋のおばぁに会いに行こうかと思ったりしつつ今日の日記はこれにてオシマイ。