日曜出勤を言いつけられてしまった。
期限付きの仕事なのでズイズイ仕事を進めていきたいところなのに今日はプチ残業で業務終了。そして土曜日は休んでもいいとのこと。なのに日曜日は出勤。理不尽なことこの上ないが、私の手掛けるパートまで、作業が進んでいないのだから仕方がない。いま手掛けている仕事は指揮官の段取りが悪すぎて、どうにもこうにもモドカシイ。
指揮官の名はミスターT。齢48の設計部主任である。
ミスターTの下で仕事をすることになったと告げた時、私は女子職員達から羨望の眼差しを投げかけられた。「ミスターTさんって、面白いし素敵な人よ」と。女子職員の中でミスターTは上司の中で1番人気らしい。が、しかし、彼の下で働いてみて思うだに、彼は面白くもなければ素敵でもない。そしてバリバリ仕事ができるタイプでもなさそうだ。ミスターTの人気の秘密がイマイチピンとこなかった私だが、帰りの電車でふと気がついた。
ミスターTが美形であるという事実に。
年齢が年齢なだけに今様の言葉で言うところの「いけてる」には当てはまらないけれど「ダンディ」と言うならピッタリくる感じ。顔の好みは人それぞれだというけれどミスターTはグローバルな男前だと思う。スラリとした姿態。そろそろ白髪の見え始めた髪はフサフサで、常に一分の隙もなく整えられている。Yシャツは上品な色物を着用。細いフレームの金縁眼鏡はいささか神経質そうな印象を与えるものの、端正な顔立ちによく馴染んでいる。そして設計マンらしい美しい手。
バリバリ仕事ができるタイプではないものの決して愚鈍にあらず。整理整頓がちょっぴり苦手で「ごめん。混乱して訳が分からなくなってきちゃった」などと東京弁で泣き言を言うところなども、見方によっては「母性本能をくすぐる可愛らしさ」となるのだろう。
美形って素晴らしい。顔が良いって羨ましい。人間の価値は顔じゃないって人は言うけど、美形に越したことはない。女子職員のハートを鷲掴みにしているミスターTだって、顔が良くなけれぱあれだけの評価は得られなかっただろう。美しく生まれついた人は、美しいというだけで、そうでない人より一歩も二歩も先を行っているような気がする。私も美形に生まれたかったと激しく思った。もしも美形に生まれていたらば、もう少し華やかな生き方をしていた……かも知れない。
しかしながら人間には誰だって長所がある。美形ぢゃない分、どこかしら突出しているところがあるはずだ。私にだって自慢できるところはちゃんとある。真面目で努力家」ってことろとか……地味だけど。地味な顔。そして地味な生き方……ある意味自分らしいと言える訳だが。
「今度生まれてくるときは絶対美形がいいよね」と月に向かって遠吠えしてみたりして、今日の日記はこれにてオシマイ。