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2024年11月03日(日)
『1996年の面影ラッキーホール』

『1996年の面影ラッキーホール』@CUTUP STUDIO


1996年リリース『メロ』のアナログリイシューレコ発、28年前のメンバーを集めての再現ライヴ。

そもそもは、6月のこのツイートが発端。



aCKyの突発性難聴治療(入院もしていたのでかなり重症だったようだ)のためライヴ活動が止まっていたところに曽根ちゃんの訃報が追い討ちをかけ、その後のコロナ禍。ライヴどころかバンドの先行きも不明なまま数年が過ぎていた。「活動再開!?」「key誰か入る?」なんて俄かに沸き立つなか、先にリイシューのお知らせが出た。「権利関係でクリアにしたいところがあるのかな?」「再発分のギャラ支払いとか?」なんて、なるべく冷静でいようと務めていたが(期待し過ぎてガッカリするのを避けたい年寄りの知恵)、遂にライヴのお知らせが! 開演前、前回観たのいつだっけと話していたのだが、WWW Xの杮落とし以来だった……なんと8年ぶり。その間何本かライヴはやっていたのだが、それには行けなかったんだよね……ほんと、いつがお別れになるか判らないもの。

客入れに懐かしい曲ばかりが流れている。ウルフルズ「バンザイ」、SPEED「Body & Soul」、奥田民生「イージュー★ライダー」……あっ、これ1996年のヒット曲メドレーだな。懐古モードに入っていると暗転、出囃子は小林旭の「昔の名前で出ています」。現在Only Love Hurts(O.L.H.)と改名している面影ラッキホールにぴったりの選曲! 大歓声が起こり、サビの“昔の名前で出ています〜♪”で既に大合唱。しかし驚いたのがそのあとで、2番に“いつもこの胸 かすめる面影♪”というリリックが出てきた。えええ、ぴったり過ぎる! どよめきとともに再びの大歓声、フロアは異様な雰囲気に。“面影、面影〜♪”とループがかかるなかメンバー登場、1曲目は勿論「今夜、巣鴨で」! ぎーーやーーーーー!!!

編成はVo、G×2、B、Drs、Perc/Cho、Sax/Flu、Cho×2。面影は2000年代に入ってから聴き始めたので、『メロ』はリアルタイムで聴いていない。当時の参加メンバーも把握していなかったのだが、Gになんだか見憶えのあるひとが……wash?の奥村くんじゃん!? ビックリした!! 今の今迄知らなかった!!! えええそうだったの!? いやーマジで驚いた。なんでも当時は大学生、面影に合流したのも28年ぶりだったとか。そしてGUNちゃんがいないなあと思ってたらフロア側にいた。そうか『メロ』よりあとに加入したんだっけか。イヤーマフをしていた。

尋ね人の女性陣は全員見つからなかったとのこと。スパンクハッピーにおける岩澤さんみたいな感じでしょうかね……幸せでいるといいー。よってChoとPercは『メロ』以降のメンバーやおともだちに声をかけたそうです。

久しぶりに集まったということもあってか、演奏はところどころ危うい感じ。ホーンもアンコール以外はひとりだったので、ファンクの迫力は薄いといえば薄い。しかし、しかしだ。本当に曲とアレンジが素晴らしい。改めて認識させられた。ベースのグリッサンドやドラムのフィルインの“間”が絶妙なのだ。そして驚いたのは(今回驚いてばっかりだな)aCKyのエモっぷり。前回観たときはニトログリセリンをステージに置いて唄っていた。シャウトも脱力気味で、高音も無理に出そうとはせずファルセットに切り替えていた。それはそれで表現力の豊かさに感心したし、こうして歳を重ねていくのねなんて思ったものだったが……。この日は最初からトップギア、絶叫も絶叫。そして絶唱。それ以前にも車椅子で出てきたりと満身創痍がデフォルト、“調子悪くてあたりまえ”を地で行く状態を観てきていただけに心配になる。やはりこのひとたちにとって芸ごとは命懸け。唄うにしても笑いをとるにしてもリスクを引き受けている。やっぱりすごいな、とこちらも襟を正す思いだった。

リスクといえば、面影のアイデンティティである歌詞。活動休止中に世の中はコンプライアンスが進んだ。彼らの歌は今どうだろう、と思ってはいた。しかし冒頭のツイートにも書いたが、彼らの歌はただただ情景を描いているのだ。「ラヴ ボランティア」はまるでリトマス試験紙だった。aCKyもsinner-yangも、あの歌詞で爆笑しているひとたちに巣食う差別や偏見を炙り出してニヤニヤしているようにも思う。歌詞についてはマーケティングとアナライズを徹底していると以前話していたが、確かに筆も舌も滑らない。社会の片隅で生きているひとたちをひたすら描写し、差別がない世界など欺瞞だと暴く。尾崎豊の「I Love You」の“何度も愛してるって聞くお前は〜♪”は性的同意について唄ってるの? という指摘にも思わず膝を打った。真面目に書くことなのかこれは、とも思うがこういうことはちゃんと記録しといた方がいいね!

今の面影はどんな歌をつくるだろう? 彼らの描く闇バイト、トー横、泡沫候補についての歌を聴いてみたくもなる。今の日本には、そんなどんづまりの題材がいくらでもある。

「小沢(健二)の『LIFE』アニバーサリーがあったんで、俺らもやれるなって思いついて」「ロリポップソニックのメンバーだったので」と笑いをとりつつ、「曽根ちゃんが死んじゃったんで、やる気が出なかった」とポツリ。「ここ、泣くところですよ」なんて茶化していたけど本音だろうな。「『メロ』は曽根ちゃんが入る前につくったので、keyがなくてもやれるなと思って」今回の再現ライヴを考えたそうです。『メロ』当時のメンバーは音楽から離れているひとも多い。彼らが今やっている仕事(行政書士、整体師、タクシー運転手……人生いろいろ)を「ご利用の際は〜」と紹介したり、「耳のこと心配してるひとがいるかも知れないけど大丈夫だから!」とフォローを入れたり、なんだかんだしっかり気配りをするaCKyでした。久しぶりのライヴということもあってか歌詞をちょこちょこ間違えて、照れくさそうに笑っていたところもキュート♡

再現だから〜と本編は『メロ』からの楽曲のみ。全然足りない、まだまだ! と熱いアンコールに応え演奏されたのは「好きな男の名前 腕にコンパスの針でかいた」「東京(じゃ)ナイトクラブ(は)」「俺のせいで甲子園に行けなかった」!!! 「スペシャルゲスト! NYから帰国してたんで来てもらいました中島カオリ!!!」とaCKyに呼び込まれSaxでカオリさんが登場。本編に続きaCKyはシャツを脱ぎ、甘やかされた身体を露わにしてフロアへ。段差がないので見えません。モニターで行方を追う。お相撲さんのように皆からパシパシ叩かれたり抱きつかれたりしておりました。帰り道、aCKyが投げたキャップをキャッチしたひとが「意外と頭ちっちゃいんだね」とだいじそうに抱えて持って帰っていくのを見た。愛されてる。

「東京(じゃ)ナイトクラブ(は)」やっぱ泣いちゃうね。「〜甲子園」は素であのフリを一緒に出来た自分が怖い。刷り込み。また会える日を楽しみに。絶対に会いたい。

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皆さんいい顔

・CUTUP STUDIOは渋谷タワレコの地下にあるスペース。ビヨンセがサイン会したとこですね。購入特典のサイン会やミニライヴを行うところですが、有料のライヴは初めてだったなー

・で、段取りが悪くてですね。tigetでとった予約番号と実際の入場番号が違っていたという。当日「受付で整理番号付きの実券と交換して入場になります」と階段付近でアナウンスしてたそうなんだけど、待機場所にエレベーターで直接行ったひとは気づかないって! 全然呼び出しがないので知らないひと同士で「ひょっとしてもう開場してます?」「前がいないしもう行っちゃっていいですよね?」と結託して地下へ降りたらとっくに入場始まってたという。あんまりだ〜