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2024年02月04日(日) ■ |
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『ストップ・メイキング・センス 4Kレストア』 |
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(行ったのは2/3、『南博Special』とハシゴでした)
『ストップ・メイキング・センス 4Kレストア』@TOHOシネマズ新宿 スクリーン10
IMAXで観たというのを残したくて退きで撮ったのでヴィジュアルが小さくなった。
2000年にシネクイント(リニューアル前、PARCO SPACE PART3から変わったばかりの頃)でのリバイバル上映を観たのが最初。その後『アメリカン・ユートピア』公開に合わせて何度目かのリバイバル上映が行われ、boidの爆音上映二本立てとかもあった。いやあ、2021年は祭りでしたね。
この時点では4Kレストアのことなんて知らなかった訳で、ウワーン寂しいとかいってたんです。それから二年。
A24の第一報! フギャーとなる。頼む日本公開! と祈る。いややるとは思っていたけど、IMAX上映もやってくれると迄は思ってなかったよ〜GAGAさん有難う有難う。一週目ということもあるけど盛況でした! 新宿という場所柄か、外国人のお客も多かった。旅行で来てたら公開してるので観よう! となったのかなって感じの。
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いやー映像も音もクリアなこと。そしてスクリーンがデカいこと。実は酔いました。どうにかしたい三半規管。でも没入感は最高。現実的に行ける筈もなかった、1983年のパンテージシアターにいたような気分を味わえるなんて! 映画って本当に素晴らしい。
個人的にはフィルム独特のざらつきやノイズ、粒子の粗さも好きなので(というか、今はフィルターで敢えて「昔っぽいテクスチャー」にしちゃうことも出来るのだが。でも、それとはまた違う味というものがあるのよ〜。ロールチェンジのとき画面右上に出る目印のパンチマークも好きなのよ〜)映像のクリアさには拘らない方なんですが、それでも全体的に画面が明るくなったこと、舞台袖や観客席等、暗闇で潰れていた箇所に何があるか見えるようになったことがよかった。当時だってジョナサン・デミ監督は「そこにあるもの」を肉眼で見えるように撮りたかったのかも知れないものね。
しかし心底驚いたのは、映像よりも音の方。分離が! ハッキリ! 誰がどれ弾いてるか分かる! 特にティナのベース! 「自分の最大の貢献はアンプのボリュームを3以上にしたことがなかったこと」といっていたティナのベースの音がしっかり聴こえるのがすごくよかった。弾(ひ)くというより弾(はじ)く感じで、でもスラップではないとても個性的な音。
いやーもう最高よね、ティナ……仕草がどれもこれもかわいくて格好よくてさ。バーンに演奏を合わせるときの射るような視線、クリスの方を振り向くときの不敵な微笑、ヒールレスシューズでのステップ、そしてあのガニ股ダンス! 『ストップ・メイキング・センス』におけるティナの魅力は、映像のクオリティすら問わない普遍のものだと改めて感じ入る。
メンバー同士の関係性は決してよくなかった時期だ。実際、これがバンドの最後のツアーになった。それにも関わらず演奏は鉄壁かつエキサイティングなアンサンブルとなるところがマジックというか、音楽への献身というものは……としみじみする。イヤーモニターもなかった時代。ギミックじゃないのよ。
それにしても、このステージを映像に残すべく施された演出がホント素晴らしいな……と再認識。かなり考え抜かれたものだと思うが、実際始まるとこうもフィジカルなものになるものか。一曲ごとにひとりずつ登場するプレイヤー、少しずつ機材を持ち込み設営するスタッフ。メガネや電気スタンドといった小道具の使い方。バックドロップに映し出される画像(当時ならスライド?)、照明のオペレーションは手動だった筈だ。アンプには暗幕がかけてある。モノトーンに近い色使いのなか、終盤バーンが被るキャップの鮮やかな真紅が差し色になる。これは客席から投げ込まれたもので、最初から狙った演出ではないそうだが、そういったハプニングも演出の一要素に包み込んでしまう。
その“ステージ”をどう撮るか。3公演をひとつの作品にしてはいるものの、何しろライヴが始まったら中断は有り得ない。全てを長回しで撮っているようなものだ。舞台を袖から袖へ貫くショット。撮られる側にすらなるカメラクルー(彼らは大きなカメラを担いでステージ上を動きまわっている!)。画面に突然人物の頭部が入り込み、それが手持ち照明のスタッフだと判明する迄の数秒の衝撃(しかもそのスタッフ、バーンにマイクを向けられて唄う!)。エンディングになってようやく観客が次々と映し出される。ダンス、笑顔、熱狂。インカムをつけた男性スタッフふたりが肩を組んでステージを見守っている。その親密さ。
衣裳らしい衣裳を着るバーン、ティナ、サポートメンバーと、家から来たみたいな普段着のクリスとジェリー。終始楽しそうなクリスと、最後になってようやくちょっとだけ笑顔が出るバーン。バーン本人も当時の自分に「楽しい?」と訊きたいといっていた。こうしたちぐはぐさ、緊張感が、トーキング・ヘッズというバンドとこの映画の唯一無二の魅力になっている。これ迄も、これからも、不朽の名作。フォーマットをニューエスト・モデルに変化させつつ、何度でも観客の前に現れてほしい。
あんなに走りまわって唄うのに全然息切れしないバーンの若さが眩しいという話をして帰りました。はーまた観に行こう、『アメリカン・ユートピア』と二本立てもやってほしいなーってかこっちもIMAXで観てみたいよ!
----- ・『ストップ・メイキング・センス』4Kレストア版の驚くべき舞台裏 伝説のライブ映画はいかにして蘇ったか?┃Rolling Stone Japan ジェリー・ハリスン「彼らはそれを映画館に戻したいと言ったんだ。ストリーミング配信だけだったら、アトモスで全編をリミックスしていたかどうか分からないよ。あれは空間オーディオだから、空間があることが重要なんだ」 ジェームズ・モコスキー(レストア主任)「これは3月のこと。A24はすでに公開を9月と設定している。彼らは、デカいスーツを着たデイヴィッドでトレイラーを作ってあり、〆切も決まっていて間に合わせなければいけない。それはつまり、これを完成させるには何もかも足りないということだったんだ」「まるで新品のようだった。損傷は全く無かった。あのネガフィルムにとって、紛失していたことは最高の出来事だったんじゃないだろうか」。 オリジナルのネガフィルムとオーディオ・トラックを探し出す迄のドラマ! マジでドラマ、“「探偵小説のような」舞台裏”。ジェリーのいう彼らとはA24のこと。A24に決まってからオリジナル・ネガフィルムを探したのね、逆だと思ってた。というか先にもうバーンがクリーニング店に行くトレイラー作っちゃってたというのもすごい……いやホント有難う大好きA24!
・というかこのトレイラー、クリーニング店のひとがアジア系(だよね)ってとこに、A24の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を思い出してああ、となる。そういう現実を教えてくれるのが映画、というのは今も昔も変わらないのかも
・『ストップ・メイキング・センス』製作秘話 トーキング・ヘッズ傑作ライブ映画を振り返る┃Rolling Stone Japan クリス・フランツ「バンドを追いかけて、誰が何を演奏しているのか、どのカメラがどのタイミングで誰を撮影するのかをメモるのはサンディ・マクロードの役目になった。」 2021年の記事。当時ジョナサン・デミのガールフレンドだったサンディ・マクロードの貢献については別のインタヴューでもティナが強調していた
・映画『ストップ・メイキング・センス』4Kレストアクロス・レヴュー┃TURN 老齢化した白人である自分は何ができるのか? を、おそらく今のバーンは念頭に入れているはずだ。 それはしらけた理想主義かもしれないが、『ストップ・メイキング・センス』に唯一欠けていた軽やかさではないかと思う。そしてそれをアップデイトできたのは30数年後の他ならぬバーン自身だったということは記憶しておきたい。『アメリカン・ユートピア』を経たからこそ新たな息が吹き込まれた『ストップ・メイキング・センス』である、と。
そうそうNINのこと思い出してた……2013年のフジは『Hesitation Marks』ツアー初日でもあったので、ホントに初お披露目、ワールドプレミアだったのよね。観られてホントラッキーだった
パブロ・フェロのロゴが映えるー!
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