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2024年02月03日(土) ■ |
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『ジャズピアニスト・エレジー 南博Special「白鍵と黒鍵の間に」ライヴ アット 新宿ピットイン』 |
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『ジャズピアニスト・エレジー 南博Special「白鍵と黒鍵の間に」ライヴ アット 新宿ピットイン』@Shinjuku PIT INN
いやー南さんの演奏久しぶり。お元気そうでなにより。
--- ・ジャズピアニスト・エレジー┃新宿区立 新宿文化センター 一部対談『映画化にまつわるマル秘語らい』:南博、魚返明未、冨永昌敬 二部対談『小説・原作にまつわるマル秘語らい』:南博、菊地成孔、村井康司 【演奏・対談】南 博(ピアニスト・作曲家・文筆家) 【ゲストプレイヤー】魚返明未(ピアニスト・作曲家) 【対談ゲスト】村井康司(評論家・編集者)、冨永昌敬(映画監督・脚本家)、魚返明未(ピアニスト・作曲家)、菊地成孔(音楽家・作曲家・大学講師) ---
昨年の菊地3DAYSでフライヤーをもらい、その時点でチケット発売から3週間は経っていたので慌ててチケットをとる。整理番号50番とかで拍子抜け。新宿文化センター主催だったからかピットインのスケジュールには載っておらず(「レンタル」表記)、知らないひと多かったんじゃないだろうか。その後完売、盛況でしたがなんだか南さんのことも映画のことも知らないひとがぼちぼちいた。あれかな、新宿区のお知らせとかで知って「なんだか面白そうな催しだわ」と来たひとがいたのかも知れない。それでも当日夜にWOWOWで初回放送だったのでタイミング的には良かったのかも。これから観ればいいんだもんね。
……というか、私もまだ映画は観てないのです……原作は刊行時読んでる。映画観る気もめちゃめちゃある。予告編はものすごく観た(笑)。なのに封切り日以降どうにも時間がとれなくて……はーodessaのサウンドシステムで観たかったよう、映画館で観たいよう(泣)。
プログラムは上記の通りでしたが、実際には原作の編集者でもある村井さんが通しで全体の司会をなさっておりました。以下書いてもよさそうなところをおぼえがき。記憶で書いているのでそのままではありません。
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下手側にグランドピアノ、上手側にエレピ。南さんが登場してまずは一曲「ゴッドファーザー 愛のテーマ」。原曲にはない不穏なコードを端々に入れて、不穏やら怖いやら素敵やら。
■第一部『映画化にまつわるマル秘語らい』
冨永:刊行当時、僕の周りでは「あれ読んだ?」と話題でした。僕も勿論読んでいて、とても面白くて。その後南さんに会う機会があり、映像化したので預からせてくれないかとお願いして。でもそれからとても時間が経ってしまいました。やろうと進めていた制作会社のひとがドラマ畑に転職してしまったりして、なかなか動かなくて……でもやるなら映画で、と思っていたので 村井:原作を一夜の出来事にしたのは? そして南博という人物を南さんと博くんというふたりに分けたのは? 冨永:南さんが銀座にいた3年半…バブル前夜の80年代、銀座でふたつのお店を掛け持ちして、一夜で行ったり来たりして演奏して……そのエピソードが全部面白いんです。全てのエピソードを入れたら連ドラくらいの長さが必要になる。映画でやるなら、と全部を一夜の出来事にまとめました。そして、社会に出た青年がいろいろな体験をして、アメリカに旅立つ迄の成長……成長という言葉はあまり好きではないんですが、3年半の間に変化していく様子を映画の時間で見せるためにはふたりに分けるといいと思い立ちました。社会に揉まれる博くん、社会を知って達観した南さん 南:(映画は)面白かったです。映画では「ゴッドファーザー 愛のテーマ」は弾いちゃいけないって設定だったけど、実際は一晩に7回くらいリクエストが来て弾いてました。それを2店で、週に4〜5回、3年半演奏し続けて……頭がおかしくなるんじゃないかと(笑)。今日久しぶりに弾いてトラウマが甦りました(笑)
冨永:音楽は先に録音しました。それに合わせて役者さんたちが演奏するシーンを撮りました 村井:じゃあ、音楽が先に制作されたんですね 魚返:映像がない状態で作るのでたいへんだったところもあります。作品で描かれている当時のことは知らなくて、というかまだ生まれていなくて……(場内笑いとどよめき) 村井:池松(壮亮)さんが最後に演奏なさるシーンは…… 冨永:実際に池松さんが弾いています 村井:常に音楽が流れていますよね。所謂キャバレー、クラブの演奏シーンだけでなく、登場人物同士がただしゃべっているシーンでも、楽器を演奏し乍ら話している 冨永:だから池松さんの仕事がより増えてたいへんになる(笑)
村井:松丸契さん出演の経緯は? 冨永:彼の作品のMVを撮っていたので、その縁もあって。原作に「K」って人物が出てくるんですよね。松丸くん、名前が契だし。K助って名前にしようと。で、出てよ〜とかいってて、でもなかなか制作が進まなくて何年か経って、忘れた頃に、ライヴが終わって上機嫌なときの彼に会いに行って楽屋で出演の了承をもらいました(笑)。 村井:役者をではなく本職のミュージシャンを選んだのは? 冨永:音楽に関する映画なので、役者さんに楽器の演奏を覚えてもらうより、ミュージシャンに台詞を憶えてもらう方がいいというか。演奏シーンはごまかしが効かないので 村井:松丸さん、よかったですよね。堂々とした存在感で 冨永:クリスタル・ケイさんは勿論本職ですし、高橋和也さんもバンドマン。佐野さんはギターで音楽活動されてて、ピアノはやらないけど音楽のことをよく知っている。そういう方に出てもらえてよかったです
南:(演奏シーン)オシャレでしたね。実際の現場はもっと雑然としていて、うるさかったです。その筋の方から断れないリクエストがきて、急いで譜面を書いてぶっつけで演奏して終始慌ただしかった。お客は一緒になって唄ったり怒鳴ったり……皆酔っ払ってるし。聴こえるように弾かないといけないのですごく大きくハッキリとした演奏をしていましたね 冨永:(「アキラのズンドコ節」という選曲)80年代に来ているお客ということは、50年代生まれくらいで、そのひとたちが好きそうで、オシャレでもいける曲ということで選びました
村井:(南さんの師匠である)宅孝二さんとのエピソードも印象的でした 南:東京芸大の教授だった方ですが、ジャズが好きで、キャバレーで弾いているところを見つかって、学校とケンカになってやめちゃったひとです 村井:当時ってやっぱりクラシック畑のひとがジャズをやるって珍しかったんですか? 南:珍しいっていうか、とんでもない! って感じ。柳家小三治さんがジャズ好きでね、遊びに行ったキャバレーで宅さんが弾いてて「あれー、どっかで……宅さん!?」「そうです」つってバレちゃった(笑)
魚返さんがエレピに向かおうとするところ、南さんが「こっち(グランドピアノ)で弾きなよ」と手招き。サントラから「Coming Now」を演奏。シャープで軽やかな音と指運び。その後魚返さん=エレピ、南さん=グランドピアノでデュオ演奏。南さんリラックス、魚返さん緊張感。
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■第二部『小説・原作にまつわるマル秘語らい』
南さんが映画『道』から「ジェルソミーナ」を演奏。素晴らしかったな……しみじみ。
菊地:今となっては珍しい、今日は俺がいちばん歳下の現場です(笑) 村井:原作のもとになる文章は最初から読んでいたんですよね 菊地:南さんの話っていつも面白くて、ジャズメンのそういう話って楽屋オチといったらあれだけど門外不出というか、楽屋でこういうことがあったんだよ〜って話してゲラゲラ笑って終わりって感じだった。でも90年代末からインターネットというものが出てきて、ジャズメンは皆工学部出身の水谷(浩章)さんにパソコンどれがいいって一緒に買いに行ってもらって、ネット接続のセッティングも全部してもらって。で、俺もだけど南さんもホームページを始めて、そこにテキストを書くようになったんです。で、俺が出版エージェントみたいなことをしたんだよね。南さんに「これ出版したいんだけど、どうかなあ」ていわれて「面白いから絶対本になるよ」って預かって。ホームページからプリントアウトしたゲラを持って、いろんなところに読んでって渡したけどずっと返事がこない、というのが何度かあって、その後村井さんのところに行って晴れて出版となりました
村井:ゾンビメイクで卒業式出た話が面白くて(笑) 南:トラで突然ゾンビバンドに呼ばれて、衣装も前のヤツのだからサイズが合わなくて。お面みたいなの被ってメガネかけられなくて譜面が読めない。そのあと卒業式だったんでそのままの格好で行って、当時(東京音大の)学長だった伊福部昭さんから卒業証書をもらいました 村井:伊福部さん驚かれたんじゃないですか 南:「お、おう…」って感じだった 菊地:まあね、(『ゴジラ』の音楽やった伊福部さんなら)怪物は見慣れてるでしょうからね(場内爆笑)
菊地:今でいったら反社といわれるひとがいちばんいたバブル前夜の銀座。反社って言葉も好きじゃないんですけど。粋なひとがいっぱいいて。そのなかで南さんが銀座をあっちゃこっちゃ行って演奏してた。南さんはダンディーだし、その時代の粋を持ってるひとですね 南:こないだ久しぶりに銀座行ったらなんだか明るくてね。寂しくなっちゃった
「映画のエンディングだからって大仰なのはなあって。口笛も吹きますね」とサントラからエンディングテーマの「Nonchalant」。軽妙でいて哀愁を帯びた名曲。そして魚返くんともう一曲一緒にやりたい、やろうよと南さんがいって、インプロ(多分)で一曲。静かな中にも火花散る演奏で格好よかった!
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