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2022年11月23日(水) ■ |
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『奈落のマイホーム』 |
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『奈落のマイホーム』@TOHOシネマズ新宿 スクリーン12
奈落が500mとか、突然のキャンプ飯とか、もはやおとぎ話めいてる。なのに演出のテンポが良くドキドキ、肩入れしたくなる登場人物たちの事情にハラハラ、このひとたちに絶対助かってほしい! と思わせる。しっかり笑わせると同時に厳しい現実も突きつける。助かることがまずだいじ、怒るのはそのあとだ! こういう「順番」てだいじですね。これからがたいへん。
原題『싱크홀(シンクホール)』、英題『SINKHOLE』。2021年、キム・ジフン監督作品。『なまず』でも取り上げられていたシンクホール。社会問題になってるんですね。日本でも博多駅前や調布市住宅街で起こった陥没事故が記憶に新しい。自然現象の場合もあるそうですが、土地開発の影響により起こるものも少なくないようです。そのシンクホールが、やっと手に入れたマイホームの真下にあったら? 入居してすぐに陥没したら……? やってられるかあああああ!!!!!
しかし今作の登場人物たちはへこたれない。兎にも角にもまず、死んでたまるか。ニトリのCMに出てそうな、一見頼りないお父さんはがんばります。仕事を掛け持ちしまくっているうさんくさいお父さんもがんばります。興味深いのは、彼らは家族のため(だけ)にがんばるのではないところ。他人が他人のために、損得勘定なしに手を差し伸べる。そこには理由なんてないのです。困っているひとがいたら助けるのが当たり前。意外とこれ、「自己責任」が幅を利かせている今、忘れられてませんか?
同じ棟に分譲と賃貸の住人がいる。正社員には当然の福利厚生がインターンには与えられない。そんな立場の違いは、災害を前にすると何の意味も成さなくなる。隣人は危険な人物かもしれないので、近所づきあいを禁じる。こどもへの愛情による自衛策が、発見を遅らせることになる。それは社会が悪い。「あの顔を見てしまったんだ。忘れられない。助けないと、バチが当たるような気がする」──素直にそう思い、口に出来る世の中でありたい。
反面、冷徹なトリアージ。身体が弱く、意志の疎通が難しい者は助けるにも限界がある、と描いてしまっている。致し方ない、といい切るには辛すぎる。恐ろしいことでもある。
調べてみれば『光州5・18』を撮った監督なんですね。これ観たいんだよなー。エンタメに振り切れない迷いも感じましたが、冒頭のツイートにも書いたようにエンタメだからこそ、マスに訴えておきたい! 気付いて考えてほしい! という意志を感じました。これからどうしますか? 助けられるよう、考えてみませんか? 映画は観客に語りかけてくる。
それにしてもチャ・スンウォンのサバイバル力(というかアウトドア力?)よ。あれはやっぱ『三食ごはん』(後述)由来なんでしょうか……。『がんばれ!チョルス』といい、コミカルとシリアスの境目がすごい曖昧というかシームレスで面白い。容姿端麗でコメディ演技も巧く、しかしいつも陰がある。プロフィールを見るにつけ、いろいろ苦労しているところもあるようで、それがあの複雑な人物造形をつくりあげているのかなと思いました。不思議な魅力がある方ですね。
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・輝国山人の韓国映画 シンクホール 実はチャン・グァンとキム・ホンパがごっちゃになってて、「なんであの屋上のおじちゃんが陣頭指揮執ってんの!?」と混乱したのでした。出演作と役名を照会出来るこのサイト、いつもお世話になっております……『怪しい彼女』の魔法使いおじちゃんがチャン・グァン! 『マルモイ』で朝鮮語を集めてた先生がキム・ホンパ! またふたりとも『新しき世界』に出てるのよね。アニョアニョ理事がチャン・グァンです!
・「三食ごはん」のチャ・スンウォン、ゲストへのもてなし精神やギター演奏披露まで持ち前の万能ぶりを発揮┃wowKorea 料理上手で世話焼き上手。「チャ+アジュンマ=チャジュンマ」(チャ小母さん)と呼ばれるようになったきっかけがこの番組だそうです
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