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2022年08月11日(木)
『新学期 操行ゼロ』『ラプソディー』

『新学期 操行ゼロ』『ラプソディー』@銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ

フライヤーを見る度行ってみたいなあと思いつつ十数年、お誘い頂いたタイミングでようやくお初のル・ステュディオ。銀座メゾンエルメス10階には、40席のちいさな映画館があるのです。2022年のテーマは『もっと軽やかに!』、今月のテーマは「老いも若きも」。若者と、老人の過ごす時間を描いた二本立て。エルメスの店内(店というより館だな。建物自体が美術品ですね)に足を踏み入れるのは山口晃展『望郷 ―TOKIORE(I)MIX』以来、十年ぶり(!)。受付のスタッフも、フライヤーも当日パンフレットも、隅々迄気が配られた素敵なアテンドとデザイン。


監督・脚本・編集:ジャン・ヴィゴ、49分。
大人たちは戯画的に、こどもたちはリアルに。美少年っていつの時代も搾取されるのねとじんねりし、抑圧されたままでは終わらない少年たちの反骨心に感嘆し。
そういいつつ、いや〜仕切りはカーテンしかない同室で寝起きして、こどもらは夜通し騒いで……。眠れんし気も安まらんがな…つらい……なんてヨボヨボの大人になった観客はつい教師に味方したくなってしまったり。
あの新任教師はよかったな。生徒たちに頼りにされてた訳ではないけど好かれていた。
羽根舞うベッドルームを誇らしく行進するこどもたちの美しさには胸がすくような思い。同時にこの作品は“教育制度に対する批判”として上映禁止にされたということに暗澹たる思い。
行ったり来たりの感情に揺さぶられ、翻弄されている間に終幕。
後進に多大なる影響を与えた、フランスを代表する監督と作品だそうです。どちらも初めて触れました。いい機会。

以前からではあるけれど、古い映画を観ると「ああ、今これに写っているひと(動物も)、もうこの世にいないんだよなあ」と思ってしみじみしてしまう。それは歳をとる毎にますます増える。そして、「映像に残ってよかったなあ」と思う。会える筈のないひとと会えたように感じる。


監督・脚本・製作:コンスタンス・メイヤー、15分。
高層マンションで暮らす、ひとりぐらしの老人。昼は同じマンションに住む女性のこどもを預かり、面倒を見る。夜は近場のバーに出かけ、友人の話を聞く。穏やかな日常。
たったこれだけのストーリーだけど、とても豊潤。
ちょっと『パターソン』みもあります。制作も同時期ですね。不思議。
住んでるところはいいところ。若い頃がんばったんだなあと想像する。親の遺産を喰いつぶしているようには見えない。自分で稼いだ金で手に入れた場所。そんなふうに思わせる雰囲気。
一度も笑わない。しかし赤子を見る目は優しく、時にぶっきらぼう。泣き出した赤子に「ほら、飲め、飲め」とミルクをぐいぐい与えるシーンでは客席から笑いが起こった。ちょ、乱暴じゃない?(笑)しかし赤子は泣き止んで、ごくごくとミルクを飲み始める。
こどもの面倒を見るのに慣れてる。かつて自分の子の面倒をこうして見ていたのか、あるいは孫か。だとすれば彼らは今どこにいるのか。元気にしているのか、ときどきは会えるのか、それとも縁が切れているのか。
何のトラブルもなく、どんな波も起こさず。
彼の人生は決してそうではあるまい。誰もが皆そうであるように。
そんなこと迄想像させる。
今回のキーヴィジュアルになっている午睡のシーンは、宗教画のような崇高さを持つ名場面。

富裕層増税に抗議し2012年ベルギー領に移住、翌年ロシア国籍を取得したドパルデュー。その後も映画出演は続いていたが、性加害告発を受け活動を控えている(単にオファーが来ないのかも知れない)。今年のウクライナ侵攻を受け、プーチンを非難するコメントを出した。以降の動向は伝えられていない。今はどうしているのだろう。

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・『新学期 操行ゼロ』Zéro de Conduite『ラプソディー』Rhapsody┃GINZA MAISON HERMÈS Le Studio 銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ