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2022年01月06日(木) ■ |
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雪の日の菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラール |
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菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール@BLUE NOTE TOKYO
2nd Setにしといてよかったかも、1stだったら焦って急いで滑って転んでたと思われる。時間に余裕があったので渋谷駅から歩き、渋谷駅へ歩いて帰った。そもそも寒いなかうろうろするのが好きなのだが、年末のピットイン同様、演奏を身体に浸透させる時間がほしい。特にこんな日には。
----- 菊地成孔(cond/sax/vo/perc/cdj)/ 林正樹(pf)/ 鳥越啓介(cb)/ 早川純(bdn)/ 堀米綾(hpf)/ 田中倫明(perc)/ 大儀見元(perc)/ 牛山玲名(vn1)、田島華乃(vn2)、舘泉礼一(va)/ 関口将史(vc) -----
ひと目見て失礼乍らやつれたな、と思う。先月観たピットインのときとは明らかに違う疲弊が顕れていた。昨年末(ついこの間だ)に瀬川昌久さんが亡くなり、そのことでかなり参っているようだったので心配ではあった。反面、こういうときのこのひとの演奏が冴え渡るのも知っている。クラーベとカウベルとダンス、ダンス、ダンス。テナーもアルトもソプラノも、鋭くて甘くて、そして痛い。「ルペ・ベレスの葬儀」、最後のソロの高音が揺らいだあと、初めて悔しそうな表情を見せた。この忌々しいリードめ、とでもいうようにマウスピースを掴んだ。
松の内にレクイエムを聴くのは不思議な気分だが、室内で、静かに曲に聴き入ることは、死者を悼むのにはよい環境に思える。実際瀬川さんの名前を出したわけではないので、これは自分の解釈だ。「小鳥たちのために」のソプラノ素晴らしかったな……。
定番の楽曲もリズムが変わっており、新曲含め昨年の「Beat It」アレンジからの流れに感じられた。五連符、六連符。林さんと堀米さんのリフが大きく貢献している。そこににこやかに乗っかってくる鳥越さんの天才(©菊地)ぶり。一切ビブラートをかけないボウイングの切れ味、和音を多用するピチカート。菊地さんの背中をニヤニヤ見つめ乍ら軽やかに弾いていく。いやホントこの方のベース大好き。菊地さん、田中さん、大儀見さんの叩き合いとなるブリッジでも鳥越さんはベースのボディを叩き、林さんもハンドクラップで加わる。マイクオフでも生音が聴ける、弓から松ヤニが舞うのが見える距離だけに、席の位置でバランスが変わりそうだが、この楽団の芯はしかと伝わる。
弦のカルテットもこのメンバーになって数年たち、すっかりあのリズムを乗りこなしている。田島さんとか、パーカッションのブリッジのところなんてもうニコニコしてて余裕だもんね。「Killing Time」の牛山さんのカデンツァ、素晴らしかった。関口さんもねこが狂い死にそうなセロ弾きのゴーシュっぷりで、観ていて楽しかったです。
喋りだすと、お正月らしい楽しいトーク。BLUE NOTEでやっとお酒の提供が再開したのがうれしくて沢山セレクトしちゃった。2005年のやつ。白呑んだひと? おいしいね! おいしいね! 赤呑んだひと。おいしいね、おいしいね。カクテル頼んだひと、おいしいね、おいしいね。あなた全部頼んでるじゃない、好きだねえ、おいしいね、おいしいね! てな調子でこちらもニコニコした。オミクロン株の拡大で、また状況が逆戻りしそうで心配ではあります。飲食店やクラブ、ライヴハウスが生き残ることを祈るばかり。年明け早々の、しかも雪の日に楽団がコンサートを行うのは初めてとのこと。足を運んだオーディエンスへの謝辞、帰り道への気遣い。こういうところに気がつくひとだ。
MCといえば「CARAVAGGIO」のリーディングがちょっとまた変わっていて、精液を男性液、女性のそれを女性液と読んでいた。そうだよなあ、愛がなくても出るものね。女性液だけ愛液っていうのおかしいよね。と妙なところに納得したのだった。こういうところ、カナリアなみに敏感ですよね。
『岸辺露伴は動かない』からは二曲。CDJがなかったので「大空位時代」(エンドテーマ)はやらないのかな、と思っていたら、アンコール前に設置された。「ドラマからのオーダーはペペのサウンドだったが、予算の都合上全員参加は叶わなかった」とのことで、今回のフルメンバーによる演奏はよりゴージャス。ピアノ、ハープ、バンドネオンが顕著。あの弦のストロークとハーモニーを目の前で聴けてゾクゾクする。音源出さないのかなあ、出してほしいな。死ぬのはお前かあるいは私か、とでもいうような、ブレスなどないヴォーカロイドのソプラノは、いつ迄もいつ迄も響き続けた。
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・鳥越さんなんかかわいい髪型になってたな。髪型といえば大儀見さんがポンパドール気味な前髪で格好よすぎて「俺ね、俺、大儀見になりたい!」という菊地さんの名言(?)を思い出してわかる……と思った
・コロナ下のBLUE NOTE初めて行きました。チェックインがなくなり、フロア入場口で直接席番を伝えて案内してもらう形式。相席はなくなり、席間にも余裕があった。席数を減らしての経営はたいへんだと思う。なんとか無事でいてほしい
・思いがけない(でもないか。菊地さんや飴屋さんの現場ですれ違っていない筈がない)ひとに遭遇。15年前……いや、もっと前かな、のお礼を伝えられてよかった。ずっと気がかりだったことだった。「これからですか? 素晴らしかったですよ」と気遣ってくださり感謝しきり、「あのとき友人と『(三浦)カズみたいだ!』といっていたんですよ」と伝え忘れたのが心残り(笑)。だけど、もう充分
・直後と帰宅後、強烈な目眩と胃痛でフラフラになり驚いた。肩の荷が降りた安堵か、あのひとの威力か。両方かなあ。具体的に身体に変調があったのって、鎌倉の腹切りやぐら(北条高時の一族=鎌倉幕府が滅亡したところ)に行ったとき以来だ。てか何故行った。人一倍他者の信仰を尊重し宗教とスピには厳しい人間ですが、こうして体感するとやっぱビビる。というか、ホンマもんは違うんだなと思う
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