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2021年12月17日(金)
『菊地成孔 3DAYS』菊地成孔クインテット

『菊地成孔 3DAYS』菊地成孔クインテット@Shinjuku PIT INN


会場を出て、耳がもげそうなくらい風が冷たくて、でもそれが気持ちよく、清々しく新宿駅へ向かうところ迄がセット。途中から地下道に降りれば寒くないんだけど降りない。いちばん好きな季節。
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菊地成孔:vo, ts, ss
林正樹:pf
宮嶋洋輔:g
小西佑果:cb
秋元修:drs
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そんなこんなでチケット取れた時点でこの日は帰らせてくれ〜とすごい根回ししてなんとか開場時間に間に合いました。緊急事態宣言が出ていないのでチケットは通常の席数販売出来て、立ち見も出て盛況。菊地さんも「立ち見がいる、この景色久しぶり」とにっこり。違ったことといえば、1stと2nd Setの間に換気のためドアを全開にしてたことか。ステージ側のドアの近くだったのでヒィとなった。でもいいのだ。

という訳で菊地さんのピットインは箱舟なもんで、あの場にいた者にしか感じられないものがあり、安易に広めるものではないと思いつつ、書いておかないと忘れるという自分のエゴにより、以下書いてよさそうなところだけおぼえがき。いやさ、曖昧な記憶による記述が後日たいへんなことになる事例を今年沢山見たことですし(根に持つ)。

・野田秀樹みたいな紺のスーツ、ユーネック長袖T
・そういや体型も、体幹の使い方やバランスも似てるかも
・あの椅子で、あの脚の組み方でよく唄えるなとか演奏出来るな〜と思うもんね……体幹しっかりしてないと出来ないことですね
・1st Setは歌に専念、2ndは歌、ss、ts
・そうっと楽器を置く、だいじに扱う
・ソプラノ吹くときは左手の指輪全部外す
・そういうとこ〜
・天下一品の指パッチン

・歌詞はMacBookを見つつ。休憩後「パスワード忘れちゃった」
・ストラップを楽屋に忘れる
・「それでは秋元くんの静かなドラムソロをお聴きください」と出て行く
・秋元「次の曲のテンポだけ教えてほしいんですけど」
・周知されてないんかい
・それであの演奏だもんな〜
・林さんとかもカウントを復唱したり演奏し乍らBPMをなじませているようだったりと都度対応してた印象。リハやってても本番の流れでいきなり変わったりするんだろうな
・本人も「(乗ってくると)つい早くしちゃうんだよね」といってた
・それでこの仕上がりですよ。こえー
・つか林さん、一緒になってちいさく唄ったりカウントとったりちいさく独り言をいったり口笛吹いたりと楽しそうであった
・なのに菊地さんに「林さんは怖いからいじれない」といわれる。「いつもニコニコして優しそ〜うな顔してるけど怖いんですよ」
・わかる
・「そんなことない……」とちいさく呟いておられました(微笑)

・基本カヴァー。スタンダードを中心に、各プレイヤーのソロもきちんとあり、楽しく聴ける
・しかし全部リズムがなまってるので最高にスリリングでもある
・秋元くんが満面の笑みでのびのび叩く
・秋元くんの風貌がハラカミくんめいてて(髪型、メガネ、フーディスト村)密かに動揺する
・小西さん全編cb。ソロもキレキレ。初見でしたが格好よかった!
・位置的に宮嶋くんはあまり見えなかったのだが、林、秋元、小西の丁々発止は見ものでした。えっそのアイコンタクトで了解なんだとビビる
・皆笑顔でビシビシ当ててくるし、揺らぎのリズムを乗りこなす

・ムーンライダーズ「G.o.a.P.(急いでピクニックへ行こう)」エロくて最高
・あとで知ったことだが、この日はかしぶち哲郎さんの命日であった
・「G.o.a.P.」はこのクインテットではもはや定番だが、前にもライダーズはカヴァーしてたよね。「さよならは夜明けの夢に」とか
・で、高橋徹也のカヴァーも聴きたいな〜とか思ったり。菊地vo.の「ナイトクラブ」とか、最高じゃないの(脳内再生)
・そうなると唄ってサックス吹いてとたいへんですね(妄想)
・「やー最近疲れるのが早くて。MCしてるときは休憩してるときです」つってたしな
・しかし最近のサックスの音、ホントにいい。吉田隆一さんのツイート(スレッドごと読んでみてね)を改めて噛みしめる

・コール・ポーター「Every Time We Say Goodbye」について。“Every time we say goodbye, I die a little.”のリリックは「さよならするのは辛いの」くらいの意味。ジャズメンの間でもこの訳が定番。レイモンド・チャンドラーも『長いお別れ』でこのフレーズを引用しているのだが、訳者の方がそのことを知らなかったのか、「さよならを言うことは、少しだけ死ぬこと」と訳した。これがものすごいパンチラインとなってしまって……という話。「誤訳」とはいわない優しさ
・シナトラが唄うと対象が変わるねって話も

・『機動戦士ガンダム サンダーボルト』のost 2よりサルサの「色悪」からの新曲、メレンゲで「小鳥たちのために 3番」。この流れ最高だった(最高ばっかりいってる)
・「こんなに踊れて盛り上がる曲なのに声出せなくて辛いよね」って。ほんとね
・こういうときの林さんの跳ねる演奏ホント格好いいよね!
・で、腰が抜けたのは「皆知ってる曲、始まったらああってなるやつ」と始めた6/8(と解釈)の「Beat It」。ヴォーカル入る迄全くわからなかった
・ピアノとギターの6拍ユニゾン、こんなメロウな切ない「Beat It」があるかよ
・ひとは痛みとともに生きるのだ
・これはやべーマジでやべーまた聴きたい、てかレコーディングしましょうよ音源残しましょうよこのアレンジは歴史に残そう

・若者三人。トオイダイスケさんに替わり参加の小西さん。今後このメンツで行くようです。「これからも続けていきたいんで宜しくお願いします」って
・「国立音大出身で。あそこいいビッグバンド持ってるんだよね」
・ご両親が菊地さんの10歳下なんですって(微笑)
・特定の世代における石若駿の立ち位置について(微笑)
・「タコ殴りみたいになって」叩いてる秋元くんを見て「小西さんがちゃんとキープしてくれてるから好きにやれるんだよ!」「小西さん長女でしょうって訊いたらやっぱそうで、秋元くんの家族(構成)って?」「末っ子です」「やっぱねー! 俺も末っ子」(爆笑)
・秋元くんはビール4缶空けてたそうです(笑)
・「ジャズ業界でも末っ子で好き勝手やれんの」といってはいたが、山下洋輔んとこの若い衆でキャリアスタートして、今は若い衆を積極的に起用してと、鬼っ子を自称しつつちゃんと人材育てる方ですよねと思った。小鳥たちをどんどん巣立たせてくださいね

・若者といえば
・「スケートボードのモデルの子を見て『かっこいー』って、ユニクロでフリースを買ったの。今の着こなしはオーバーサイズだろうって、XL買ったの。キャラメルの。着てみたら東急ハンズで売ってるトナカイみたいになった」
・大ウケ

ピットインではガードが低い。といったら怒られるかな。そういうのも含めて箱舟なのです。書かれたものが全てではない。そこでしか判らないことはあるのだ。菊地さんの音楽に魅せられているひとにはそれぞれの「信じるもの」がある。そして「信じるもの」は皆違う。