『songs of david byrne and brian eno』ツアーは2009年に来日公演も行われている。手前味噌だがリンクを張ったこの感想、ライヴの雰囲気ごと伝えるいい感想になってると思いますよ。衣裳はホワイトからグレーになり、チュチュは履かなくなった(これはちょっと残念・笑)。バンド編成はほぼ同じだが、よりアクティヴに、よりアグレッシヴに。楽器は全てワイアレス。マーチングバンドのようにフォーメーションを組み、振り付けられたダンスを踊る。思えば「Burning Down the House」のドラムサウンドってマーチング用のマルチタムの音に合ってますよね。アフロビートを叩き出す多彩なパーカッションも魅力的。何もないステージを囲むのはキラキラ光るシルバーチェーン。このステージは安全、この劇場は安全とでもいうように、演者は裸足で自由に動きまわり、観客は歓声をあげ立ち上がって踊る。拍手し、合唱する。
『songs of〜』では「演奏してて楽しいし、お客さんが大喜びしてくれるから」と、イーノと関係ない曲も演奏していた(微笑)バーンですが(ちなみにこのとき「Born Under Punches」は「難しいんだけど練習して出来るようになってきたから今度やってみようと思うんだ〜」といってた。セットリストに入っていてニッコリですよ!)、今作でもそのサービス精神は発揮されています。ステージで演奏されるのは、2018年のソロ作『AMERICAN UTOPIA』からのナンバー、TALKING HEADS時代の曲、ソロやコラボで発表した曲。そしてプロテストソング。上演に際し、『AMERICAN UTOPIA ON BROADWAY (ORIGINAL CAST RECORDING LIVE)』もリリースされています。
象徴的な場面はいくつもあるが、特に印象に残ったのは「Everybody's Coming to My House」。この曲を発表したとき、バーンは「望まぬ来訪者が家に居座っており、帰ってほしいなと思っている」ものとして唄っていた。ところが、デトロイト・スクール・オブ・アーツの生徒たちが合唱曲としてこの曲を唄ったヴァージョンを聴いたとき、「彼らは『皆ウチにおいでよ、この家は誰にでも開かれている』と唄っているように感じた」。自分ひとりの考えが及ばないものを他者は見せてくれる。
映像制作にあたり、バーンの前にもうひとりの「他者」が現れる。スパイク・リーのカメラ(撮影監督はエレン・クラス)は、観客の目が届かない場所を捉える。プレイヤーが目の前にいるかのような視点、客席からは決して見られない天上からの視点。多様性を謳う出演陣にはエイジアンが不在だが、カメラは客席にその姿を見る。「Hell You Talmbout」ではレイシズムの犠牲となったひとびとの肖像を新たに加え、強いメッセージをレイアウトする。2019年から2020年、この一年で次々表面化した問題と、更新されていくことの多さ、早さに光明を見た気持ちになる。パーカッションがバシバシ通るサウンドプロダクションも素晴らしかったです。爆音上映でも観たいよ〜(スケジュールがなかなか合わない)。
01. Here (from American Utopia) 02. I Know Sometimes a Man Is Wrong (from Rei Momo) 03. Don't Worry About the Government (from Talking Heads: 77) 04. Lazy (from Muzikizum by X-Press 2) 05. This Must Be the Place (Naive Melody) (from Speaking in Tongues) 06. I Zimbra (from Fear of Music) 07. Slippery People (from Speaking in Tongues) 08. I Should Watch TV (from Love This Giant) 09. Everybody's Coming to My House (from American Utopia) 10. Once in a Lifetime (from Remain in Light) 11. Glass, Concrete & Stone (from Grown Backwards) 12. Toe Jam (from I Think We're Gonna Need a Bigger Boat by The Brighton Port Authority) 13. Born Under Punches (The Heat Goes On) (from Remain in Light) 14. I Dance Like This (from American Utopia) 15. Bullet (from American Utopia) 16. Every Day Is a Miracle (from American Utopia) 17. Blind (from Naked) 18. Burning Down the House (from Speaking in Tongues) 19. Hell You Talmbout (from The Electric Lady by Janelle Monáe) 20. One Fine Day (from Everything That Happens Will Happen Today) 21. Road to Nowhere (from Little Creatures) --- 22. Everybody's Coming to My House: Detroit (End Credits)