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2020年11月01日(日)
downy『雨曝しの月』

downy『雨曝しの月』@WWW X


ロビンさん曰く、裕さんは「やさしい呪いをかけてくれた」。「気にしいのひとだったから、これで安心してくれたんじゃないかな」。

もともとは6月に行われる予定でした。5月に延期のお知らせが届き、このまま中止になってしまうのかな……と思っていた9月末に振替日程が、その翌週に配信(当日ライヴ配信、29日から「カメラ台数を倍増&音もRemix」したプレミアム配信)がアナウンスされました。秋山さんが「生配信は最初で最後っぽい?」とツイートしていましたが、オーディエンスと向き合うライヴの感覚をバンドはだいじにしているのかな。しかし配信するからには自分たちにしか出来ないものを、といった意欲も感じられました。少ない本数とはいえ、これ迄に観たdownyのどのライヴにも似ていないものを体験することが出来ました。

問診、検温、消毒、セルフもぎり。そろそろ慣れてきましたが、スタンディングのライヴハウスでは初めてです。バミリで区切られた枠に立ち、そこからはみ出さずにいられるかという緊張感もあり。とはいえ、「前に押さずに上に跳べ!」というチバユウスケの名言を思い出せば、実はそう難しいことではないですね。モッシュが起こるフロアを眺めるのは好き(としよりなので巻き込まれるのはもういいです)だし、ぶつかりあいたいひとの気持ちは判るので、いつかもとどおりになるといいなあと願っています。

枠からはみ出さずに盛り上がれたのは、downyのライヴだったからというのも大きい。あまりに演奏が凄まじすぎて呆然としちゃうんですよね。勿論踊れるし、リズムに合わせ身体を揺らすことはあれど、轟音と変則ビートを浴びているうちに立ち尽くしてしまう。曲間の沈黙すら聴いていたい、そして拍手のタイミングを逃す(笑)。それは他の観客もそうだったようで、拍手が起こるときと起こらないときがありました。まるでバンドの呼吸に合わせているかのよう。

珍しくMCがありました。もともとライヴを作品録(撮)りする計画があった。裕さんと約束し、SUNNOVAくんもいるから大丈夫、と安心してもらって病院に送り出した。作品は録(撮)れていなかったのでやっと約束が果たせた、というようなことをロビンさんがポツリポツリと話す。そして「下弦の月」へ。初めて聴く、アコースティックギターを中心に据えたアレンジ。ヒリヒリと、しかしやさしく心に沁みる。自粛期間中、沖縄からロビンさんが何度かインスタライヴを開催してくれたのだが、そのときの弾き語りから発展したもののよう。「視界不良」「砂上、燃ユ。残像」も作品とは違うアレンジになっていた。ライヴの醍醐味。

まあそれにしても皆さんクールなこと、涼しい顔して超絶技巧。それぞれが誰にも似ていない。ポンチさんが「秋山さんの顔と演奏がどう考えても合ってない」といってたけど名言すぎる。前にも書いた憶えがあるが、あんなフィル叩いといてリムショットになるミスがひとっつもないのが恐ろしすぎる。もはや気味が悪い(賛辞です)。仲俣さんも穏やかそーなふりしてゴリッゴリのグルーヴをホイホイ生み出しつつ、「海の静寂」では美しいベースのコードを聴かせる。そんなふたりが「曦ヲ見ヨ!」のブレイクで顔を見合わせて笑っていた。何その余裕、怖いよー(褒めてるんですよ)。明晰な狂気といおうか。

いちばん歳下のSUNNOVAくんがやはり弟っぽい立ち位置ではあるんだけど、彼は踊り乍らも他の三人をよくみている。裕さんの音を預かっている、という心持ちもあるだろうが、トム・モレロばりのエフェクターかけたギター音をブーストする等(「海の静寂」アウトロのヘリコプターのプロペラ音のように聴こえてくるあれ!)音響面の貢献も大きい。今後どうバンドにコミットしていくのかも楽しみです。配信や制作まわりに関しても積極的に動いていて心強い。
(20201130追記:ぎゃー配信観たらこの音を出してたのロビンさんだった。失礼しました…後方位置だったからロビンさん座奏になると何してるか全く見えなかったんですよね……)

ロビンさんはギターもヴォーカルも負担が増えたことに加え、機材トラブルもあったようで(明らかに弾いてるのに音が出てない)キエーってなってるようなところもあったのですが、それすらも絵になりますね。裕さんの「やさしい呪い」は、こんなロビンさんの姿を、downyの未来を見据えていただろうか。面白がってくれてるといいな。

今回は映像だけでなく照明の演出効果も大きかったです。配信を考えてのことかな。その場にいると、自分の身体があの映像に侵食されていくような感覚はたまりませんが、映像だけというのは画面越しに観ると印象が違うのかもしれない。音響もクリア。歌声の通りもよく、歌詞の美しさに改めて感銘を受ける。

「弌」で本編終了。「生配信の本編終了後に未発表曲を初公開」というオフィシャルのツイートを勘違いしていて、ライヴのアンコールでその未発表曲が演奏されると思っていた。普段はやらないアンコールがあるのかあ、と再び出てくるメンバーを見ていると、ロビンさんが「今、配信では新曲が流れてるんだけど……」。え、じゃあ? 困惑するなか演奏されたのは「猿の手柄」、続けて「安心」。どちらも第一作品集からの曲だ。配信を観ているひとたちと現場にいるひと、それぞれにプレゼントを用意してくれていたんだな。これもやさしい呪いだろうか。全ては手に入れられない、でも、手に入れたものはかけがえのないもの。

それにしても、体感時間の短かったこと。一時間くらいかな、と思って終演後時計を観たら、それより30分以上長かった。しかし疲労度は三時間超のライヴを観たときくらい。久しぶりの現場に加え、やはり演奏の圧に相当やられたようです。

終演後「これから二週間なにごともなく過ぎてくれ」、と祈るような気持ちになる。他の公演も同じといえば同じだが、スタンディングのライヴとなるとやはりその切実さがひと段落違うように感じる。バンドもハコも来場者も、皆細心の注意を払っていた。ライヴハウスで音楽を聴くために。これからも聴いていけるように。

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皆さんヘトヘトのようですが(笑)いい顔してますね


・downy web shop┃BASE
・downy×クリフビール Original craft beer┃クリフビール オンラインショップ
アロマキャンドル等いつもバンドイメージにぴったりな物販をしてくれるdownyですが、今回も楽しいアイテム揃いで充実しています。SNSでメンバーが「配信のお供に是非」「当日に間に合うよう発送します」といっていたので会場販売ないのかな? とドキドキしていましたがあった〜、よかった〜。カカオニブもコーヒーもすっきりしたおいしさです。
ライヴ終了後は規制退場し、物販コーナーは別フロア。スタッフの案内と列整理もしっかりあり、混雑することなく購入することが出来ました。downyは客も大人というか落ち着いてるよね。
ビールの会場販売はなし。酒類のため販売資格を持つクリフビールさんで通販を受け付けています。呑めないけど気になるわ……

・物販といえば、会場にdeftonesのパーカー着てるひとがいてアガった。あれ通販でしか売ってないやーつ。Tシャツは迷ってるうちに売り切れたやーつ。最近CDにグッズを同梱して売るショップが増えたので、それを期待して待ってるうちに売り切れてしまいましたよね……キイィ