多言語のプロフェッショナルである翻訳者たち。複数の言語を理解出来る、その理解出来る言語が各々違うというところから互いへの疑念が膨らみ、ときにはそれが互いへの助けとなる。ゲルマン系言語(英、ドイツ、デンマーク)、ラテン系言語(フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル)の親和性への着目も面白い。ちょっと調べてみたけど、ギリシャ語は単独語派なんですね。うぬう、興味深い。スタイリッシュな撮影と編集はミステリにぴったり。9人の翻訳者が勢揃いしたポーズの瞬間に入るタイトル、逮捕され囚われている人物が逆転するカメラワーク、“ベストセラー”のアートワーク。そして音楽、堪能しました。映画を観る前に読んだインタヴューで三宅さんが話していた「とある既存の曲」はBurt Bacharachの「What The World Needs Now Is Love(世界は愛を求めている)」、歌詞はHal David。皆がポツポツと唄うあのシーン、とても素敵だった。翻訳者たちのひとときの幸せ、矜持にもとれた。
What the world needs now, Is love, sweet love, No, not just for some oh but just for every, every, everyone.
・世界で活躍する音楽家 三宅純に聞く、“映画のための音楽”とは┃Numero TOKYO 「(バカラックの選曲について)このシーンは監督からの指示で5、6回書き直しをして、最後には涙を浮かべて『これが欲しかった』と言われたのにもかかわらず、また監督が迷ってボツに。その時は既に新曲を書くための時間が取れないタイミングになっていたので、やむをえず既存曲使用になりました。」。 ボツになった曲はサントラのボーナストラックになったそうです(苦笑)
・<インタビュー>三宅純「こだわりを持たないことにこだわる」――世界的音楽家が考える映画音楽で重要なバランス・間・ミニマリズム┃Billboard JAPAN 映画音楽は「一本骨を抜くという作業」、映像にあわせて音楽を「カスタムメイド」するという感覚。 音楽を巡るテクノロジーの発達については「不思議なことに、デジタル機器にアナログ時代に良かったもののシミュレーション(模造品)をプラグインでたくさん付けているんですよね」。 バカラックの選曲については「この曲自体は映画の中で独立して描かれる1曲だと思っているので、特に関連付けて音楽を制作していません。でも、実はいくつかあった候補曲の中から『What The World Needs Now Is Love』をチョイスしたのは僕なんです。単にバカラックが好きだから、というだけなのですが、実際にこの曲になって良かったです」