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2019年06月01日(土)
韓国ナショナル・シアターカンパニー『ボッコちゃん〜星新一 ショートショートセレクション〜』

韓国ナショナル・シアターカンパニー『ボッコちゃん〜星新一 ショートショートセレクション〜』@東京芸術劇場 シアターイースト


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1.「ボッコちゃん」(『ボッコちゃん』所収)
2.「知人たち」(『たくさんのタブー』所収)
3.「おーい でてこーい」(『ボッコちゃん』所収)
4.「鏡」(『ボッコちゃん』所収)
5.「宇宙の男たち」(『宇宙のあいさつ』所収)
6.「ひとつの装置」(『妖精配給会社』所収)
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以上6作品を、7人の出演者で。本国での上演では7作品だったそうで、何がカットされたのか気になるなー。

字幕用の電光掲示板が舞台両袖にあり、縦書きで日本語訳が流れます。前方の席だったので、舞台と字幕をいったりきたりするのがなかなか負担で、目の奥が痛くなってきたので途中からは6割くらいしか見ていない状態だったんだけど、いやー憶えてるもんだなー。当時新潮文庫で出ていた作品は多分全部読んでるんだけど、あの数だしタイトルなんて忘れてる。なのに始まると「ああ、あれだ!」と鮮やかにテキストが甦る。小説文体のナレーションはモノローグで語られていたけど、ほぼそのまんまだったんじゃないかな。

黒基調、艶のある床材と壁材による美術は、SF世界の無機質なイメージと、映り込みを効果として使う実用的な要素もあり。「ボッコちゃん」はバーで起こる話なので、オープニングは皆ドレスアップ。滑らないようにか、2作目以降は足袋のような靴下が基本になりました。「おーいでてこーい」のリアルタイムの映像を使った“穴”、「宇宙の男たち」の手持ち照明による星の表現が素晴らしかった。この照明、「ボッコちゃん」のバーのシーンで皆が手にしていたグラスに発光体を入れたもの。劇場の闇が宇宙の闇に繋がる。その前の「鏡」ではレーザーを使ったド派手な照明も見せてくれたので、その振り幅も面白かった。劇場を愛する者たちの「見立て」を堪能。

人間の好奇心と嗜虐性を、カラッとしたユーモアに包んで表現するとより怖くなる。「鏡」のつかまった悪魔ちゃんがすごくかわいくて(コスチュームも素敵!)ニコニコ観ていたけど、エスカレートする暴力にみるみる観客がひいていく様子とかもうこわいこわいにんげんこわいあくまよりこわい。今も昔も変わらんなあ。男性の役を女優が演じる作品はふたつだったかな。それとも、あのひとは「男優」だったのだろうかと思う。そういうことも考えるようになった、これは昔と今の違うとこ。「われわれが過去から受けつぐものはペーソスで、未来に目指すべきはユーモア。」星さんの言葉を受けて、われわれはどこ迄行けるかな。

「宇宙の男たち」冒頭、登場人物が『2001年宇宙の旅』でおなじみのテーマ「ツァラトゥストラはかく語りき」を唄いあげる。客席から笑い声。その反応を受けて、演者が何かを呟いた。アドリブだろうか、字幕が出ない。やっぱり皆知ってるねえ、とか宇宙といったらこれだよねって感じだったのかな。言葉は通じない、でもひとつの曲やひとつの映画に共通認識がある。うれしくなったりせつなくなったり。ちなみに、「ボッコちゃん」は「ボッコちゃん」と発音されていました。思えば韓国語の「ちゃん」にあたる言葉な何なんだろう。

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・観劇後に知ったのですが、出演者のひとり、イ・ボンリョンさんは『アジア温泉』で成河さんと悲恋におちる女性を演じたひとでした。うわー気づかなかった、大人になって……!

・開演前、いつものごとく携帯の電源を切ってください等の諸注意がありました。そこ迄は普段劇場で見る風景。続けて「劇中Wi-Fiを使用する場面(リアルタイムで撮影した映像をWi-Fiで飛ばしていたのだと思われる)がありますので、重ねて電源オフをお願いします」というアナウンス。すると、そこで慌てて携帯を取り出すひとが続々と。「ま、いいや」「大丈夫だろう」と思ってるひとが多いってことですよね……「何故切る必要があるのか」を念押しで伝えるのは効果ありますね。ホントのところは、ヴァイブ含め音が鳴ることも(っていうかそれがいちばん困る)上演に支障があるんだけど、そこはどうやったら伝わるのかなあ