I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
kai
MAIL
HOME
|
|
2019年03月10日(日) ■ |
|
『僕のド・るーク』 |
|
『僕のド・るーク』@Alternative Theatre
『僕のリヴァ・る』以来の鈴木勝秀×る・ひまわりシリーズ(?)。この辺りの制作事情に疎く、出演者も小林且弥しか知らない有様でしたが、『〜リヴァ・る』に出ていた小林さんに非常に感銘を受けた記憶を信じて今回も足を運ぶことに。Alternative Theatre初めて行きましたが元丸の内ルーブルだったところですね。映画館をほぼ居抜きで舞台用の劇場にした感じですが、同じ仕様のCBGK!よりは席間にも傾斜にも余裕があって観やすい印象でした。
住み分けというものがあるのか、自分が行く演劇公演には全くチラシが折り込まれていなかった(そういうものなの?『〜リヴァ・る』のときもそうだったんだよね……)+年度末のバタバタでSNSのチェックも殆どしていなかったため、内容も全く知らぬまま。ドルークとはロシア語で友達という意味、スズカツさんに出されたお題はこのタイトルと、モーツァルトとサリエリ、夏目漱石の『こころ』、大きな木。果たして大きな木は小林さんなのだった。わははは、これはいいもん見たわ。この役ダブルキャストだったんだけど(しかも公演中あらゆる役をシャッフルで、というのもお題だったようだが)、帰り道「〇〇くん、小林さんに比べて全然ちっちゃいけどあの役どうなるの? 全然印象変わりそう!」と話していたのでものすごく気になりましたよね…それも観てみたかったな……。
で、しんみりいい話でありまして、嫉妬、羨望、献身といった当人同士にしか感じ得ない感情を客観視して舞台に載せることの魅力もあった。気になるのは序盤の説明過多で、やたらと「お芝居だからこうなんです」「ついてきてますか」的なことをいちいち役者にいわせるんですね。観客の想像力を測りかねているのか、信用されてないなーと思ってしまったことは事実。装置は抽象的なデザインだったけどコスチュームは和洋ともにしっかりしたもので、各セクションへの移動もわかりやすかったし、そこ迄説明しなくても大丈夫だと思ったけどなあ。
セットがシンプルな分、演者の身体性が問われる。特に『こころ』のやりとりはほぼ独白と対話なので、どう台詞を発するかやどう動くかといったところに注目することになる。出演者各々の魅力も見えてくる。育成としてはよい環境だけど、興行という枠で見るとたいへんなことも多いだろうな。ある意味道場でもあるので、メンバーはどんどん入れ替わっていくのが望ましい訳だし。と、観客が考えなくてもいいこと迄考えてしまった。
てな訳でところどころモヤモヤしたものも感じたのですが、天才と秀才、大衆に迎合するか自分の道を行くか、時代と心中か時代の先を見るかという「ポップとは?」「真実はどこにある?」といったトピックも織り込まれ、緊張感を保ったまま観ることが出来ました。『アマデウス』で描かれたモーツァルトとサリエリの関係に、『ボヘミアン・ラプソディ』を思い出したひとも多いのではないか。史実とは、という。ここらへんタイムリーでした。
やっぱスズカツさんのつくるものは面白いなー。小林さん演じる木の献身を通り越して無償の愛にもしみじみしたし。木のコスチュームもすごいよかったし。スカーレット・オハラがカーテンで作ったドレスを思い出したわ。花冠もかわいらしかったわ。しかし基本悪い方にしか考えない性格なので、木からあらゆるものを搾取した少年が老人となり訪れたとき、あの木で首吊るのかと思ったヨ! で、木はハハハ僕にはもう枝がないから(少年が青年になったとき伐採したもんだからナー)君は死ねないのサーとかいうのかと……我乍らヒドい。ワタシの想像力も所詮この程度かと反省した。いやそれにしてもあの子の処世術よお……木からもらったあれこれを元手にパチンコやって宝くじやって株やって、という妙にリズミカルな台詞が頭に残って仕方ないよ(笑)。
-----
・「友達」とは何か?を描く『僕のド・るーク』に出演!上口耕平、多和田任益、辻本祐樹インタビュー|演劇キック
・『僕のド・るーク』公開ゲネプロ|エンタステージ
|
|