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2018年10月24日(水)
東京芸術祭 2018『野外劇 三文オペラ』

東京芸術祭 2018『野外劇 三文オペラ』@池袋西口公園



開演時間が過ぎ、照明がおち、観客が静まる。少し遠く、それでもすぐ近くの街のノイズに心地よく耳を傾けていると、ボロをまとった登場人物たちが騒々しく現れる。一瞬ホントに乱入者が? と思ってしまうガラの悪さ、すぐ傍だったから一瞬ビビる。やがて彼らの動きが統率されたダンスへと変化していき、ピアノの音が聴こえてくる。そしてはじまる「Mack The Knife」……ツカミはOK、開幕です。

演出はイタリアのジョルジオ・バルベリオ・コルセッティ。視覚聴覚ともにノイズの多い野外での公演を見据え、観客の集中力が切れないようにとの配慮か1シーン1フックというくらい手数が多い。サービス満点で退屈しません。舞台の奥行きが異様にある(笑・公園だもの)ので、観客がいる位置からどのくらい離れたら芝居が届かなくなるかの検証はかなりやったのではないかな。遠くでスタンバイ中の重機の運転手さんの動きに「くるぞくるぞショベルカー♪」とすっかり注意がいってしまったりもしましたが、まあそれもお楽しみ。大岡淳による新訳は五七調からワルそうな奴は大体友達なHIPHOP迄歯切れよく威勢よく。ノイズの多い野外なうえマイクが切れるアクシデント(歌のシーンじゃなくてよかった。ベッドでドタバタする際接触が悪くなっちゃったって経緯にご愛嬌)があっても台詞がパキッと聴きとれる、演者の力量も貢献度大。

野外劇ならではのハッタリもダイナミック。設営用だと思って入場時は気にしていなかったショベルカーが劇中バンバン使われたのには笑った。紙吹雪をまいたり絞首台がわりになったり。クルマもバイクも行ったり来たり、小道具にはiPad、軽トラが水戸ナンバー、原付は足立ナンバー、ケンドリック・ラマーなんてワードも飛び出してニッコリ。トラックに設営されたスクリーンにはWeirdcoreみたいな映像も。悪趣味だなあと笑いつつ、娼婦たちの顔に傷が増えていくエフェクトにはしっかり怒りが込められていてガッツポーズ。したたかに生きる市井のひとびと、彼らを圧迫し翻弄する政治、しのびよる戦争の足音。現実と地続きのストーリーは、作品の普遍性と現在性を同時に感じさせてどうにも苦い。それでも笑って逃げのびるか、怒りをもって闘うか。どちらにふれるかは自分次第。

これ迄も演劇公演の場としても使われていたこの公園。来年野外劇場として本格的に再開発される(・池袋西口公園 人気ドラマの舞台、再開発で野外劇場に┃毎日新聞)ので、その前哨戦ともいえるでしょうか。本作の総合ディレクター宮城聰は「劇場を飛び出し、池袋西口公園で、囲いさえ作らずに上演します」と話していました。

しかし実際は難しかった様子。宮城さんが芸術総監督を務めるSPAC(静岡県舞台芸術センター)には野外劇場がありますが、同じ野外でも設備と環境が揃った劇場ともともとある空間を街ごと劇場として機能させることは別物。公園と外部の境界には多少の衝立がありました。制作側としては、演者と観客の安全を守らねばなりません。あまりにひとが集まってしまうと、交通にも支障をきたしてしまう。公共施設を使っての上演でもありますし、難しい判断だったと思います。観客以外のひとびとを惹きつけ巻き込みつつ、不測の事態が起きたときの対処も考慮に入れ、作品の猥雑性を損じることなく、秩序も守らねばならない。先月観た『BED』同様、作り手はさぞ腐心したことだろうなと感謝の念。

宮城さんは「(通りすがりのひとに)音だけでも楽しんでもらえるよう、音楽劇を選びました。途中から観ても良いし、途中で立ち去ってもかまいません」とも話しており、それは成功していたように思います。ポリー役の淺場万矢(ex. ネクストシアター! 現在は柿喰う客在籍)ルーシー役の水口早苗、ピーチャム夫人役の森山冬子と、強力な女優陣は通行人の足をとめる歌を披露してくれました。男優ではブラウン役の柳内佑介が素晴らしかった。ピーチャム社長役、ナイロン100°Cでおなじみ廣川三憲はテキヤ寅さんのいでたち、あの美声で供される口上のうさんくさいこと。演者が楽しんでいる、そしてこの作品に出演していることを誇りに思っているのが伝わるような公演でした。観られてしあわせ。

所謂「劇場」からはみ出したところで上演される作品、過去観たそれらのことを思い出すのもある種のおみやげ。そうそう、翌日の筋肉痛もおみやげですわ。ギシギシですがな。

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・防寒対策必須ですよ〜
無料エリアで観ました。比較的暖かい日だったのはラッキーだったな……前の週はかなり過酷だった模様。無料エリア狙いのひとは簡易椅子持っていくといいですよ。座布団が配布されますが、地べたに座りっぱで二時間はなかなかハード。立ち見はエリア外からになり、視界も音もかなり制限されますが、通りすがりの街のひとというテイである意味出演者にもなれます(笑)

・『野外劇 三文オペラ』┃東京芸術祭 2018
・「野外劇 三文オペラ」開幕、演出のコルセッティ「舞台のミラクルが起きた」┃ステージナタリー

・トーキョーフェスティバル?トーキョートーキョーフェスティバル?┃TimeOut TOKYO
・2018年に東京芸術祭が本格始動、野外劇の出演者を公募オーディション┃TimeOut TOKYO
「『東京芸術祭』と聞いて、どういうイベントなのか、しっかりとイメージが描けるだろうか」。確かにすごく分かりにくいんだよねー……。ちなみに今年で10年目(11回目)を迎える『FESTIVAL/TOKYO』も、この芸術祭の主要事業に含まれます。プログラムを別々に出すからややこしいのよ。
いろいろな権利がぶつかってそうですが、現場はいいものつくろうと日々尽力してるんですよね……

・PATATTOmini
100均で折りたたみ椅子も買っていくか〜と検索してたら見つけた。チケ代をこれにあてたってことで(笑)。かさばらず丈夫で軽量。今度フジ行くとき持っていこう