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2018年08月14日(火)
『カメラを止めるな!』

『カメラを止めるな!』@TOHOシネマズ新宿 スクリーン9

SNSで大評判、上映館が大幅に増えたおかげでようやく観に行けました。K’s cinemaで公開が始まったばかりの頃、頑固レヴュー(笑)が好きでいつも愛読している新聞記者の方がこの記事(全文読めないけど記事が載った時期の目安として張っておきます)を書いていて、とても気になっていたのでした。なんとTOHO新宿最大スクリーンのTCXが完売です。500人近いひとたちとハラハラドキドキですよ! 映像的にはTCXでなくても充分楽しめるものですが、音がめっさよくて細かいところ迄聴こえまくるので、後半「ああ、さっきのあれ!」と気づきやすくてより笑えたかも。以下ネタバレありますので未見の方はご注意を。この映画は予備知識なく観た方がよいです。

映画は三部構成。とあるケーブルチャンネルでオンエアされた、30分のホラードラマ。最初の3分の1でそのオンエアされたもの、次に撮影に入る迄の一ヶ月、そしてバックステージの様子込みで再び撮影現場を撮る。所謂“ショウ・マスト・ゴー・オン”を、時系列を入れ替えて見せる。生放送、ワンカットという手法は、幕が開いてしまった限りはどんなことが起こっても最後迄通すという演劇の成り立ちと非常に似通っており、実際ステージ上のトラブルをバックステージで解決していくという題材を扱った舞台作品は多い(今作の原案も舞台作品だったようです)。タイトルそのもの、東京サンシャインボーイズの『ショウ・マスト・ゴー・オン』が代表的ですね。さまざまな事情を抱えた表方と裏方が、舞台の幕を下ろすものかとありったけの機転をかき集める、その度にありったけのハプニングが起こる。恐ろしいのは、『ショウ〜』にいた腕利きの舞台監督が『カメラ〜』にはいないところです(笑)。

果たしてオンエアされたものは、あちこちに「?」が浮かぶシロモノに。今の妙な間は何? あの端っこでボサッと座ってるひとは何なの? 今「ポンッ!」て聴こえなかった? カメラが動かなくなってるよ? これらが何故こうなったかが、最後の30分であきらかになります。弱気でたよりなかった監督が、作品を完成させるために火事場の馬鹿力を発揮する。その勢いに圧され、エゴの強い役者や適当に場をこなそうとしていた役者、現場の事情を鑑みない製作陣が我を捨てて協力し始める。というかせざるを得ない。そこへ監督の家族も絡み、「カメラを止めるな!」とひとつになる。パズルのピースがパチパチとハマり疑問が解けていくことの爽快感、あいつダメでヤなやつだと思ってたけどいいとこあるじゃんと気づく爽快感、そして作品が完成した(当初と仕上がりは違うけど)! という爽快感。エンドロールではすっかり笑顔。

劇中では展開上問題のあるひとがフィーチャーされる訳ですが、その背後には黙々と働くスタッフたちの存在がしっかり映しだされています。泥酔した役者に特殊メイクを施すスタッフ、手詰まりの状況を打開するべく時間を稼ぐスタッフ、予定変更のカンペを出すために脚だけメイクして映り込むスタッフ。彼らは臨機応変にも程があるという事態を収拾するべく奔走する。舞台にしろ映画にしろ、作品はカンパニー全員が「最後迄投げださない」ことで完成する。そんな現場愛に満ちた作品でした。とても気持ちよく映画館を出られる、レーティングもなかったようで家族連れも多く、夏休み映画としても抜群の楽しさです。ひとを、道理を信じることが出来るあたたかい世界。こういう映画がどの時代にもあってほしいなと思った次第。監督は上田慎一郎。ENBUゼミナールがまたひとつ快作(怪作?)を世に送り出しました。

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・そうそう、音楽もよかったです。「美代ちゃんのハッパ」の前奏みたいな格好いい曲もあるのでレピッシュ好きも観るといい〜

・周辺でも話題になってましたが今回の映画がヒットする経緯、『運命じゃない人』に似てたねと。当時の口コミやwebでの拡がり方は正にこんな感じだった。面白かった、でも内容を知らないで観た方がいい、何をいってもネタバレになりそうだから喋れない、とにかく観に行って! てな評判が日に日に増えて……。ツールは変われど、小さな規模でつくられたものがあれよあれよと知られていき、歓迎されていく様子をリアルタイムで体感出来ることってとてもハッピー