初日 最新 目次 MAIL HOME


I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
kai
MAIL
HOME

2018年01月29日(月)
HURTS『Desire Tour Live in Japan 2018』

HURTS『Desire Tour Live in Japan 2018』@マイナビBLITZ赤坂

いやーやっと来た、待ってた。2011年以来、日本では二度目の単独公演です。このときはアダムが体調崩して欠席したんだった。来日はしてたんだよね確か……で、出てきたセオが「アダムが出られなくなってごめんね、ショウマストゴーオン!」つったんだった(涙)。サポートメンバーがいるとはいえ、デュオでひとり欠席ってつらいものがあるよね……アットホームな雰囲気で、とてもいいライヴだったことを憶えています。

こうしたアクシデントはデビュー以来こまごまあったんだろう。それらを乗り越えて、2013年のフジに来たときはすっかりたくましくなっていた。というか大化けしていた。あかん、このままではDepeche Modeのように大物になって日本になんざ来てくれなくなるぞ……という危機感をいちリスナーが抱いてもどうにもならん、あれから五年近く経ってしまったよ。月末の月曜日という不利もあってかBLITZ規模で当日券ありですよ。ギギギなんか悔しい! フジのときみたいに、地鳴りのような歓声とシンガロングで迎えたかった! 欧州ではもはやスタジアムクラス。七人編成のバンド編成でアジアにも来てくれて有難いことです。貫禄のステージングでした。

客電が落ち、Massive Attackの「Angel」が流れる。ほぼまるまる一曲かかってる間にサポートメンバー登場、その後暗転してセオとアダムが登場というオープニング。フジのときもopは「Angel」だったよね。変わったところと変わらないところ。どんな状況にあっても流されず、腐らず、自分を貫くこと。ふたりがHURTSを始める前、仕事も収入もなく音楽制作に没頭していた頃の話を思い出した。古着のスーツ、サスペンダー、なでつけた髪という出で立ちで失業保険を受けとる列に並ぶ。自分を惨めに思うことがないように、他人に見下されないように。そんな信念と美学を持ち、確固たるスタイルを維持している彼ららしいエピソード。デビュー当時から変わらぬバンドロゴのバックドロップ、ピアノの上におかれた白いバラ。そのバラを手にして唄い踊るセオ。彼らと同じマンチェスター出身のThe Smiths……というかモリッシーを連想する場面も。

モリッシーにしろデペにしろ、Prince、Tears for Fears、そしてNINと、彼らは影響を受けた音楽やバンドを公言しており、聴いてみれば成程と思う楽曲もある。しかしライヴとなると、HURTSは唯一無二の存在だ。コンセプチュアルでアート性の高いデザインに沿って繰り広げられるのは、驚く程熱量が高く、エモーショナルで、ドラマティックなパフォーマンス。初来日サマソニで震えていた(と聞いた)あの子はもういないよ……稀代の伊達男になったセオはモニターに片足をかけ、マイクスタンドを担いだポーズでフロアを睨めまわす。ステージではナルシスティックなヴィジュアルイメージよりも、彼の快活で社交的な面が際立つ。フレンドリーかつジェントルなMC、おとなしめ(というかおくゆかしい人が多かったのか序盤おとなし気味だった)のフロアを見るや、全身使って腕を振って! とか手拍子して! とか体育会系ばりに率先して動く。じっくり聴こうと二階椅子席から観ていたのですが、その形相に反射で腕を振りました。てか隣で同じく喰いいるように観ていた男性も「は、はいーっ!」てな感じでバッと同時に腕を振りだしてウケた。高みの見物など許さないとでもいいたげに、フロアを休ませず、というか甘やかさず(笑)導く様子にブレット・アンダーソン兄の姿を垣間見ましたわ。

アダムはZZ TOPの短い版みたいなモフモフヒゲになっておりどうした……と思ったが、ピアノにギターにシンセ(ステージ後方中央に設置してある)と曲ごとに黙々と移動し寡黙に演奏しマイペースに手を振ったり謎のサイン(コアなファンにはわかる意味があるのかな)を出したりと、思想家のようなふるまいで素敵。ふたりのキャラクターの違いも魅力ですね。しかし左手にサポーターかな?  指なし手袋みたいなのしてた……どうしたんだろう、大丈夫かな。腱鞘炎とかクセにならないといいけど〜って、なんかもうすっかりアダムは身体弱いイメージがついてしまったよ。

サポートはDrs、B(シンベメインの楽曲ではGを弾いてた)、Syn、そしてクラシックのオペラ歌手……ではなく女性シンガーのペア。最新作『Desire』からの楽曲を中心に、ゴスペル、ファンクにエレクトロ、インダストリアルとバラエティに富む、しかしポップな(ここポイント)楽曲をスマートに、そして熱量高く演奏。ダンストラックからメタル??? と驚くようなハードなトラック迄なんでもござれでした。たのもしー。

大バコが似合うステージングでしたし、バンド側が面喰らってたくらいの盛り上がりを見せたフジはやっぱり特別で、日本では客入りの厳しい単独よりもフェスの方が……とも思いましたが、でもBLITZのあったかい空気もとてもよかったのです、しみじみ。キャパ関係なく素晴らしいステージをみせてくれるバンド、ワンダホーライフでビューティフォーピーポーでエクセレントといってくれたセオの笑顔、それに応える観客の笑顔。その距離の近さは大バコでは味わえない。ライヴバンドの実力が確かなHURTSはいつでもどこでもきっと特別な時間と空間を残してくれる。その場にいるひとたちの心に傷を残してくれる。

アンコールの「Beautiful Ones」、白いシャツと黒のパンツといういでたちで、テキパキ笑顔で歌唱指導するセオは高校教師のよう、指導の甲斐あって最新作からのナンバーがまるで代表曲のようなシンガロングに。これからはきっと自然と大合唱になる、この曲は今後も「Wonderful Life」や「Stay」のように唄い続けられていくに違いない。感動的な光景だった。

セオの投げた白いバラ(ちゃんと葉と棘は剪定してあった)をだいじそうに抱えて帰路につく子たちの笑顔も素敵。ウィアーザビューティフォーワンズだよー、涙。

-----

セットリスト(setlist.fm

01. Desire
02. Ready To Go
03. Some Kind of Heaven
04. Sunday
05. People Like Us
06. Hold on to Me
07. Miracle
08. Rolling Stone
09. Better Than Love
10. Sandman
11. Lights
12. Walk Away
13. Something I Need to Know
14. Wonderful Life
15. Nothing Will Be Bigger Than Us
16. Wings
encore
17. Beautiful Ones
18. Stay

-----


セトリ画像お借りします。検索するといろいろ出てきたんだけど、こちらのだけ曲の横に番号振ってあったのが気になって。なんだろう?

・ハーツ: 来日公演ライヴ・レポート│SonyMusic

・【ライブレポート】ハーツ、5年ぶり来日公演で見せた不変の美学と進化の軌跡│BARKS

・BLITZにマイナビがついてから初めて行った。内装や機構は別に変わらず。過去公演したバンドのサイン入りポスターが飾ってあり、2003年のQOTSAのもあったので拝んできた。ニックがいる、うう……

・カメラクルーがついてたんだけど、そっちも美形揃いだったな(笑)日本のカメラクルーではなかったのでどこでどう使われるんだろう、観たいなあ