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2017年12月02日(土)
『Let's Play Two』

『Let's Play Two』@新宿ピカデリー スクリーン8



初日(12/2)と翌週水曜日(12/6)に観てきました。あっという間に終わってしまった、今は祭りのあとの寂しさに呆然としている。思いがあふれすぎてうまくまとめられないんでどばーと書き散らします。書き散らしなんでネタバレも満載です。

というかまずはtwilogを読んでいただけると有難い…RTしたものやPJファンの方たちとのやりとりで気づいたことや思い出したことも多いし〜。は〜。

・2017年12月03日 - Twilog
・2017年12月07日 - Twilog
・2017年12月08日 - Twilog

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ダニー・クリンチ監督作品。2016年、メジャーリーグベースボール(MLB)ナショナルリーグのチーム、シカゴカブスが108年ぶりにワールドシリーズ(WS)を制覇。その年の夏、パール・ジャム(PJ)はカブスの本拠地であるリグレー・フィールドでライヴを開催。PJのヴォーカル、エディ・ヴェダーはシカゴ出身でカブスの大ファン。
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というのが予備知識。わーいパールジャムのスタジアムライヴ観られるよ〜くらいの楽しいノリで出かけたのです。ところが蓋をあけてみればそんな単純なコンサートフィルムではなかった。PJ好きなひとだけでなく、音楽好き、野球好き、スポーツ好き、ホームタウンとそこに根ざすひとびとにリーチする、素晴らしいドキュメンタリー作品でした。誰かを愛したことのあるひとたち、何かに愛着を感じ応援したことがあるひとには、きっと響くものがある。こうなるともっと公開の仕方があったのではないか、宣伝の仕方があったのではないかと思ってしまうのですが、どこにジャンル分けしたらいいか難しい作品を逃さずすくいあげ、動員がそんなに期待出来ない国で(悲しいけれどそうなのだ)こうして公開してくれた配給元には感謝するばかりです。少しずつでもいいからこれからもいろんなひとに観られていくといいし、長く愛される作品になってほしい。

カブスのWS制覇は記憶に新しく、MLBにさほど詳しくなくても、「ヤギの呪い」「黒猫の呪い」を聞いたことがあるひとは多いのではないでしょうか。私もそのひとり。

・メジャーリーグで70年間も解けない呪い…。シカゴ・カブスを襲う恐怖の「ヤギの呪い」とは? | マイナビニュース
・2015年:悲願達成ならず|シカゴ・カブス - Wikipedia

wiki迄ひっぱりだしてますが、このニュースのことはよく憶えていたので、翌年カブスが遂に優勝したときはよかったねえと思ったものです。



このツイートもリアルタイムで観ていたのでエディよかったね! と思っていた。

一方、PJにはこんなことがありました。

・パール・ジャムのライヴが雷雨で2時間半の中断、深夜2時終演、そして新曲を2曲披露 (2013/07/22)|rockinon.com

このニュースもよく憶えてる。このふたつがああやって繋がるとは……1992年、シカゴで初ライヴを行ったバンド。不遇の時代、「観客席でこどもがかくれんぼする」くらい閑散とした球場(あのこれある程度の世代のひとはわかると思いますが、ロッテオリオンズ時代の川崎球場を思い出しました(笑泣))で試合をしていたカブス。一度ならずとも何度もつまづき、しかし未来を信じて繰り返し立ちあがり前に進み続けたバンドとカブスの結びつきが、チームを愛する、地元を愛するひとの気持ちとシンクロしていく。

バンドの楽曲は、カブスを応援するひとたちに寄り添うように鳴り響く。幕開けは「I need the light / I'll find my way from wrong, what's real? / The dream I see」(Low Light)、そして「She dreams in color, she dreams in red / Can't find a better man」(Better Man)。2016年のカブス快進撃、今年こそはと高まる期待、しかし今迄が今迄なのでぬぐいきれない不安、「Never dreamed You'd return」(Elderly Woman Behind the Counter in a Small Town)。WSで3敗していよいよあとがないという局面、しかし「Don't go on me」(Go)、「I'm still alive」(Alive)。単純に歌詞を書き出しただけでもこうだ。「Elderly Woman〜」の登場人物は、かなった夢を前に感極まる。カブスファンとPJファンの心情を反映したかのような歌が流れる。それはバンドが駆け出しだった26年前につくられた曲であっても、最新作からのものであっても、108年前からカブスの勝利を待ち続けたひとたちのサウンドトラックのように響く。

構成がまた巧いのです。当日演奏された曲順と映画に登場する曲順は違う。シーンにぴったりの歌をここぞというタイミングで織り込んでくる監督の手腕に唸る。映像もそう。WSの7戦目(最終戦)、試合展開とエディ、シカゴのひとびとの映像が交互に流れる。しかし彼らの言葉や行動は7戦目のときのものとは限らない。7回ストレッチ(Seventh inning stretch:MLBのゲームでは7回表終了時、「Take Me Out To The Ballgame(私を野球に連れてって)」をBGMに観戦でかたまった身体をのばすブレイクがある)でエディが「Take Me〜」を唄ったのは第5戦。セットリストを書いているのは勿論8月のライヴ当日。リアルタイム観戦の映像と、カブス勝利への軌跡がパズルのように組み込まれ、試合の流れと交差する。優勝に湧くシカゴの街、思い出される名実況、そしてタイトルにもなっている「Let's Play Two」はチームOBの言葉。108年ともなれば、優勝を待ち望んだままこの世を去ったひとも多いだろう。そんなひとたちの思いともども、あの7戦目に届け! となるあの流れ、本当に素晴らしかった。

熱心なPJファンのひとり、ジョンは「人生のどんな局面にも合う曲がある」と話す。その後ジョンにはとあることが起こる。そして、ゲストのデニス・ロッドマンに抱き上げられたエディに、クリス・コーネルの姿がフラッシュバックする。小柄で身軽なエディは、よくクリスに抱きついていた(。抱きついてるというかぶらさがってるというか……笑)。昨年カブスが優勝したとき、クリスは生きていた。一年後、彼がいないなんて想像出来なかった。PJとともに人生を歩む。喜びと悲しみのくりかえし、傍らにはいつもPJがいる。PJに限らず、どんなひとにもそんな存在があるのだ、きっと。願わくば、少しでもその時間が長く続くことを。

Blu-rayは本日発売(書いているのは12/8)。でも立川シネマシティの極音上映とかあったら万難を排して駆けつけますよ! 期待してますよ! 公開有難うございました!

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その他。

・「今日(ライヴの日)はエディにとって大切な日だから」っていうマイクにもジーンときたんだけど、思えばPJてエディ以外はシアトル由来なんでマリナーズファンも多かろうに…皆やさしい……と思った

・PJファンじゃないひとが観ても伝わるように歌詞に字幕ついてもよかったねとも思ったけど、そうなると情報多すぎて視線が散漫になっちゃうだろうから難しいところですね

・エディといえば昔から詩やアートを描くノートをだいじに抱えてるイメージなんだけど、今回スコアブックを抱えてせっせと書き込んでる姿ににっこり

・それにしてもエディの身体能力の高さよ…あのジャンプといいブリッジといい。 体幹が強いよねーと水曜映画館で偶然遭ったMIOさんと話していた

・そういえば水曜日、エディがよく持ち歩いてたものにそっくりなトランクと、ポップコーンとドリンクを抱えた白髪の男性がいて、終映後清掃に入ってきたスタッフやカップを片付けているスタッフに「ありがとう」「ありがとうございました」と丁寧に挨拶しててジーンとした

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・パール・ジャム「レッツ・プレイ・トゥー」予告編

日本語版で予告つくられたってのが重要であってだな



日本で上映あるって本国公式がツイートしてくれたってのが以下略

・Let's Play Two - Teaser #1 - Pearl Jam


・Let's Play Two - Official Trailer - Pearl Jam


ちなみにエディはこれ迄三回、7回ストレッチで唄っています。
(20171209追記:『Let’s Play Two』日本盤Blu-ray、新谷洋子さんの解説によると、エディが7回ストレッチに初登場したのは1998年とのこと。で、掘ってみたら三回どころではなかった。失礼しました!)
YouTubeにあるエディの7回ストレッチの動画をまとめてみました。


2006年。呑んでる


2007年。前年の反省か?(笑)しゃんとしてる


2014年。野球大好きおじさん


2015年。かしこまってる


そして2016年。遂に、遂に!

(20171209追記:観なおしてて気づいたけど、2015年と2016年、観客席におそらく同じおばあちゃんが映ってるな。映画でも映ってた。地元では有名なファンなのかも…うわーんまたほろっときちゃうよ)

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おまけ。





プレス用のお土産を読者プレゼントに出してくれたのだと今になって理解。クラッカーはおいしくいただき、私は下戸なのでワインは姉が呑み尽くしました。あとは使えなくて(というか使い道が…)今でもだいじにとってある。こうしてPJとともに歩んでいます