バンドの楽曲は、カブスを応援するひとたちに寄り添うように鳴り響く。幕開けは「I need the light / I'll find my way from wrong, what's real? / The dream I see」(Low Light)、そして「She dreams in color, she dreams in red / Can't find a better man」(Better Man)。2016年のカブス快進撃、今年こそはと高まる期待、しかし今迄が今迄なのでぬぐいきれない不安、「Never dreamed You'd return」(Elderly Woman Behind the Counter in a Small Town)。WSで3敗していよいよあとがないという局面、しかし「Don't go on me」(Go)、「I'm still alive」(Alive)。単純に歌詞を書き出しただけでもこうだ。「Elderly Woman〜」の登場人物は、かなった夢を前に感極まる。カブスファンとPJファンの心情を反映したかのような歌が流れる。それはバンドが駆け出しだった26年前につくられた曲であっても、最新作からのものであっても、108年前からカブスの勝利を待ち続けたひとたちのサウンドトラックのように響く。
構成がまた巧いのです。当日演奏された曲順と映画に登場する曲順は違う。シーンにぴったりの歌をここぞというタイミングで織り込んでくる監督の手腕に唸る。映像もそう。WSの7戦目(最終戦)、試合展開とエディ、シカゴのひとびとの映像が交互に流れる。しかし彼らの言葉や行動は7戦目のときのものとは限らない。7回ストレッチ(Seventh inning stretch:MLBのゲームでは7回表終了時、「Take Me Out To The Ballgame(私を野球に連れてって)」をBGMに観戦でかたまった身体をのばすブレイクがある)でエディが「Take Me〜」を唄ったのは第5戦。セットリストを書いているのは勿論8月のライヴ当日。リアルタイム観戦の映像と、カブス勝利への軌跡がパズルのように組み込まれ、試合の流れと交差する。優勝に湧くシカゴの街、思い出される名実況、そしてタイトルにもなっている「Let's Play Two」はチームOBの言葉。108年ともなれば、優勝を待ち望んだままこの世を去ったひとも多いだろう。そんなひとたちの思いともども、あの7戦目に届け! となるあの流れ、本当に素晴らしかった。
ちなみにエディはこれ迄三回、7回ストレッチで唄っています。 (20171209追記:『Let’s Play Two』日本盤Blu-ray、新谷洋子さんの解説によると、エディが7回ストレッチに初登場したのは1998年とのこと。で、掘ってみたら三回どころではなかった。失礼しました!) YouTubeにあるエディの7回ストレッチの動画をまとめてみました。