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2017年11月15日(水)
『密偵』

『密偵』@シネマート新宿 スクリーン1

2016年、キム・ジウン監督作品。原題『밀정(密偵)』、英題『The Age of Shadows』。役者は素晴らしく、美術や衣裳のプロダクションも素晴らしく、時代に抗おうとしつつも流されていくひとびとを描いて非常にエキサイティングな作品だったのですが、ところどころ素っ頓狂な場面があって迷い乍ら観た感じ。

1920年代、日本統治下の京城(ソウル)が舞台。ソン・ガンホ演じる主人公は、日本(警察)と朝鮮(義烈団。独立運動組織)どちらの密偵も務めることとなる。パートタイムラヴァーならぬかけもちパートタイム密偵、板挟みでつらいことこのうえない。

ひとつひとつのシーンの美しいこと! 鳥瞰で撮られた死体のある風景は絵画のよう。構図といい色彩といい、息を呑むほど画ヅラがキマる。列車のディテールや銃撃戦、主人公がパーティ会場に乗り込み爆弾を仕掛けていく流れ、ラストシーンで少年の乗る自転車がいく風景も素晴らしい。しかし構成がなんともいえないつんのめりぶり。義烈団の京城行きの情報を漏らした人物、主人公と義烈団リーダーが山小屋でおちあうよう罠をしかけた者と、要所要所で押し出される密偵の存在。それらがどうにもいきあたりばったりのように感じてしまう。まず撮りたいシーンのアイディアがあり、そのために無理やり流れをつくったような……編集、仕上げの段階でカットあるいは追加されたところがあるのかと邪推してしまうようなちぐはぐさがある。役者の演技により緊迫感は保たれているが……。その他にも拷問シーンが類型的だったり、あのシーンの劇伴にあの名曲を選んでいるのもド定番を通り越してベタにもほどがと苦笑、集中を削がれてしまう場面もしばしば。

そもそも主人公が密偵であり、義烈団のなかにも密偵がいる。日本警察側には主人公を見張る密偵も勿論いる。誰を信じて行動すべきかの迷い、誰にも信用されていないと感じる苦しさ。そこで提示されるのが「民族」「同胞」といったくくりで、義烈団リーダーが主人公に向かってくりかえす「ヒョンニム(兄貴)」という呼びかけだ。善悪がつけられない状況で、主人公がその呼びかけによすがを見いだすのは必然のように思える。そのゆらぎをガンホさんが見事に表現していた。「ヒョンニム」という言葉を人質のように使いつつ、主人公とおなじくそれにすがるようなコン・ユのベビーフェイスも印象的。日本からは鶴見辰吾が参加、主人公の上官を抑制の効いた演技で見せてくれました。ガンホさん日本語の発音綺麗だったなー。韓国人キャストの話す日本語には一応字幕がつくのですが、それは時代ならではの独特な言いまわしや地名、政治/軍事的な専門用語のサポートとしてで、言葉そのものは字幕なしでもそんなに問題なかったかも。

それにしてもコン・ユをちゃんと観たの初めてだったのですが(楽しみにしていた『釜山行き』…邦題使いたくない……でお初の筈が、公開時期と喘息期がまるかぶりで逃してしまった。スクリーンで観たいので機会を待ちたい)、あまりのプロポーションのよさに「背ぇ高ッ!」「顔ちっちゃッ!」「頭身ッ!」と瞠目しっぱなしであった。180cmあるガンホさんがちいさく見える。てか主人公と組む日本人警官を演じたオム・テグもモデルばりの美丈夫でしたね。そしてイ・ビョンホンが特別出演、ガンホさんとの共演シーンではちょっと和んだ(あああ『JSA』も『グッド・バッド・ウィアード』もスクリーンで観たいから未見なんだよ〜)。しかしこのシーン(酒ガンガン呑むとこ)もちょっと滑るというか、コミカルな演出にしているけどここ笑うとこか? と迷ってしまうやりとりになってしまっていた。こういうところは切り替えて素直に楽しめばよかったかな……。

『暗殺』とあわせて観ると面白いかも。てか『暗殺』ってほんとよく出来ていた。

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・輝国山人の韓国映画『密偵』
毎度お世話になっております、配役一覧に毎度助けられております……。鶴見さん以外にも日本人キャストが何人かいたのですが、つかこうへい作品でなじみだった及川以蔵(現・いぞう)の名前がエンドロールに流れてビックリ。一覧の役名を見てもどの役かわからん…どれだ……。
あとハシモトの部下、首相時代の小泉純一郎みたいな髪型の方がex. NAHT、nine days wonderの羽田さんにしか見えなくてまじまじと見てしまったよ。チョン・ドウォンってひとかな

・韓国の“国民俳優”ソン・ガンホが「私の友人」と紹介した日本人俳優とは? 映画『密偵』インタビュー | dmenu映画
ビョンホンさんとのシーンでは後輩俳優が沢山見学に…ってそりゃそうだ、いい話