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2017年10月08日(日)
大駱駝艦・天賦典式 創立45周年『超人』

大駱駝艦・天賦典式 創立45周年『超人』@世田谷パブリックシアター

大駱駝艦45周年おめでとうございます(再)! 新作連続上演、先週の『擬人』に続き、『超人』。KUMAさんこと篠原勝之演じる男に捕らえられた麿赤兒はどこへ? 開演前の舞台には『擬人』にも登場したガラスケースが並び、人形が吊るされている。どれもつくりものだと判るものだが、一体だけ顔が麿さんのものがある。その顔がエラいリアル。この日の席は最前列だったんだけど、それでも「ひょっとしてホンモノかも…ボディ部分は着ぐるみになってて首だけ出してるんじゃ……」と開演迄まじまじと見てしまった。そしてその、ボディ部分がけっこうなマッチョで。映画『殺し屋1』のジジイとか、最近では笹野高史がボディビルしてるCMとかが印象深い、顔とボディのギャップがすごいやつを思い出してしまってニヤニヤした(笑)。

後ろのひとも「ホンモノ?」とか話してて、開演してちょっと動いたら「あっ、やっぱり?」「ホンモノ?」とそよそよ声が出ていた。実は人形を持ちあげたダンサーが浄瑠璃よろしく麿ヘッドの後ろ、頸部を掴んで操作していたのだが、その動きがとてもリアルだった。身体を操る舞踏家は、自身だけでなく他者の身体も理解し操れるものなのだな。ひいては人間ではないボディをも。それにしてもあの顔、素晴らしい出来だった……。

バレエ等の西洋のおどりとは対極をなす、日本土着の、大駱駝艦の「をどり」。サイボーグやアンドロイドを演じるときは所謂ロボットダンスになるのだが、それも西洋ベースのものとは違う。膝と足首を直角に曲げ、大地を踏みしめる。正座や胡座で下半身を沈め、天へと伸ばす腕にも関節ごとに方角が散る。その力強さと、据わった体幹。それらを観るだけで自分も地に足がついたような気分になる。スペクタクル、エンタテイメントな要素を多分に含む大駱駝艦なので観るときに気構えは必要ないが、それでも鑑賞後は東洋に生まれ東洋に育った自分の身体について自覚を深くする。

そうそう、AIが反乱起こすお話って必ずひとりやめてーって人間助けてくれるAIがいるじゃない。ウルトラマンにおけるピグモンみたいな……(ちがう)。その子の動きがちょーかわいかった。他のAIをとめようと掌をひらき、腕を伸ばすおろおろの動作。腕を引き抜かれた開発者をそろそろと抱えあげ、ガラスケースへ運んであげる。怖いシーンだけどちょっと和んだ。開発者が襲われる際に流れる血液は糸で表現されており、赤い糸と青みがかった照明、装置との対比が美しかった。蜷川演出の『タイタス・アンドロニカス』を思い出した。大駱駝艦、年々メイクや衣裳、装置が洗練されていく(以前がダメということではなく)。

クライマックスの「迷走行列」は、人間、AI、そして超人三つ巴のパレードだ。三者の椅子とりゲームも熾烈を極め、その光景はさながら地獄絵図。マッチョではない(笑)麿さんがドレス姿で登場、その美しいこと! マッチョではないが、細身の皮膚の下には切っ先鋭い筋肉が見える。フレンチカンカンよろしくドレスをまくりあげ腰を振る、履いているのはレースのボクサーパンツ。ヒップと脚のラインが綺麗だ。そしてかわいいのだ、いつものこと乍ら。老獪な少女といおうか、その身体には恥じらいが見える。生まれたことこそが才能、しかし生まれたことそのものが恥ずかしい。道を間違えた人類は、自分たちがつくりあげたAIたちとどこへ行くのか? 地獄への道行のようなパレードに、それでも惹かれる。

「フィナーレ」からのカーテンコール、「まろー!」と大向こうが飛ぶのにまたシビれる。千秋楽だったのでいちだんと盛り上がりました。フィナーレ自体が一曲で、その際とられるポーズ、礼等がもうひとつの作品だなと常々思っているのですが、今回この方のツイートに成程と思った次第。



今回は歌舞伎も連想したのでした。三すくみの構図や、『擬人』の頁にも書きましたが一曲一曲の完成度がとても高いので、バラにして幕見でも観れそうと思った。先述の浄瑠璃といい、ここでも伝統芸能から、東洋の日本という国で生きる身体について考えさせられました。

カーテンコールは続き、金銀の紙吹雪が降ってくる。最後の最後はロッド・スチュワートの「Sailing」(艦だから?)をBGMに麿さんがポーズをとってご挨拶、素敵でした。大駱駝艦を観るようになって四半世紀(ひぃ)、フィナーレや大団円の曲が終わっても拍手が鳴りやまず、同じ曲をもう一度頭からかけなおすという場面には何度か遭遇したことがある。しかし「Sailing」は初めてだったような……驚いたー。次作は来年三月、御安航を祈ります!

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大駱駝艦のFBより。これこれ、素晴らしい出来よね……