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2016年12月16日(金) ■ |
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『雨にゆれる女』3回目、アフタートーク |
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『雨にゆれる女』@テアトル新宿
最終日ということで半野喜弘監督と主演の青木崇高さんが来場、アフタートークとQ&Aがあるよということで再びテアトル新宿へ。やー、半野さんの話聞きたいと思ってもともと行くつもりだったんだけど、青木さんのお話も聞けてラッキーだったわ……。
質問がどれもあーそれ訊きたかったってことばかりで、監督も青木さんも真摯に話をしてくださって、いいイヴェントだったなあ。こういうのって大概ひとりは自分語りが長〜くなって質問は何よってひとがいるものだけど、この日は簡潔な感想と、そこから生じる質問を的確にぶつける方ばかりで、理想的なQ&Aでした。本編には出てこなかった登場人物の背景や設定、撮影の裏話等いろいろ聞けて面白かった!
以下おぼえがき。記憶でおこしているのでそのままではありません、話が前後しているところもあります。ご了承ください。Q&Aなので本編内容にふれるネタバレ多数ですので未見の方はご注意を。間にちょこまか入っているのは私の感想です。
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青木●こんな夜半、寒いなか、劇場に足を運んでくださって有難うございます。余韻が残る作品なので、その雰囲気を壊さないようにお話出来ればと思います 半野●最終日になりました、有難うございます。どんどん質問してください
Q●カレンダーに健次が×をつけていましたが、理美がきて、彼女が×をつけはじめる迄一週間ほどの空白がありました。何故健次は×をつけるのをやめてしまったんでしょう 半野●そこはすごく話し合ったんです。突然理美が現れて、健次の日常が根底から揺さぶられていく。ルーティンだった生活がたちいかなくなって、×をつけてる場合じゃない。×つけてたことも忘れちゃうだろうって。そんな混乱を表しました
空白の一週間。理美が金曜日の夜にやってきて、土日はなんとかやりすごして、月曜日は出社しなくちゃいけないから一度外に出して鍵かけて入れないようにして、火曜日以降徐々に近づいていくって感じでしたね。ごはんとられるし雨は降るし過呼吸起こすし、そりゃもううわーってなるわ。×つけてる場合じゃないわ(微笑)。
Q●雨のなかで健次と理美が見つめあうシーン。理美の表情はなんとなく理解出来るのですが、健次は理美を睨むような顔をしている。何故あの表情になったのでしょうか 青木●あれは彼女を睨んでいたのではなくて……健次は罪を犯してひとりで生きてきて、自分はこの先の人生素敵なことなんて起こらないと思っていた。そこへ綺麗な女性が…外見だけじゃなくて……女性が現れたことによってどうしようみたいな戸惑いが生まれて。十何年ひっそり暮らしてきたわけですからもういいんじゃないか、生活を変えてもいいんじゃないか、とは思いつつも、そんな自分を許してもいいんだろうかとも迷っている。それでああいう表情になりました Q●あのあとの、理美にごはん用意するとこ好きでした 青木●有難うございます
Q●これは興味本位の質問なんですが、健次の仕事、あれは何をやってるんですか? 半野●廃棄物を高熱で溶かして不純物をのぞき、純度を上げて再生物をつくる作業です(だったかな)
興味本位の、って言葉が出たとき監督も青木さんもなんか身構えて、そのあと続いた質問を聞いたらちょっとほっとするような空気になった。こういう場で変なこと訊くひとっていますもんね……。
Q●健次の名前の由来を教えてください 半野●あーそれすごく聞かれるんですけど、ほんとなんとなく……取材で中上健次ですか? と言われて初めて気がついたんですけど。中上健次は大好きでしたけどそんなつもりは全くなくて、なんだか申し訳ない……。あの、もともとあの名前は高校の同級生なんですよ。飯田健次 青木●えっ、それ初めてきいた 半野●卒業アルバムから顔似てるひとをさがして、区役所で……(書いていいのか微妙なので略)そうして他人になりすます。これ、(則夫が健次になった)2001年当時は可能だったんです。当初はこの流れも台本にあったんですけど、撮らなくていいと判断しました
半野さんの高校の同級生に飯田健次って名前の人物がいたのか、登場人物である則夫の同級生に飯田健次という名前の人物がいたって設定なのか、話の流れからは判断出来ませんでした。
Q●ハードボイルドなストーリーに青木さんがぴったりで、松田優作みたいで格好よかったです。ストーリーの流れとともにヒゲがのびていっていたように思いますが、役柄に合わせてそのままにしておいたのですか 青木●有難うございます……そうですね、そのままのばしていて。冒頭の四年前のシーンだけは、本格的な撮影に入る前の冬に撮りました。このときは時間の流れを表すために、ヒゲは剃っていました
Q●サスペンスとして面白く観ました。謎な部分、唐突と感じるシーンもありましたが、それらの省略がよかったと思います。意図的ですか? 半野●そうですね。他人になりすます迄のシーンもですが、説明になる部分はどんどんカットしました。当初のプランから15分……いや、20分くらいは短くなりました
山田撮影監督のトークのときにも思ったけど、初監督でこの潔さはすごいなあ。あれもこれも入れておかなくちゃ、と思わないところ。映画音楽を数多く手がけ、現場を知っているからということもあるだろうし、観客を信用しているとも言える。観る側からすると、省略が謎を呼び、想像力の種となる。この映画のことを思い続ける余韻を生んでいたと思う。
Q●ラストシーンの海岸の映像がとても美しかったのですが、どうやって撮ったのですか? 時間帯は? 半野●夜中、まだ真っ暗な時間から準備して、夜が明ける迄のほんの短い時間で一気に撮りました。台本には台風がきている、と書いていた。天気のことだし、どうなるかわからないし……と言ってたけどホントに台風がきたんです。たいへんな撮影でしたけど、いい画が撮れました
いやほんとあの空と海を捉えられてよかったよねー!
Q●どういうふうに役者に演技をつけたのか、演出方法は? 半野●映像がよかったって言われるのはうれしいけど、演出としては役者、演じるひとの行動原理や生理を第一にしました。役者が登場人物を生きるうえで出てくるもの…表情や動きもそうですけど、肌から発する匂いのようなものも捉えられればと
Q●塩田明彦監督作品『風に濡れた女』がもうすぐ公開されるようなんですが、この映画との関連性はあるんですか? また、セックスシーンを具体的に撮らなかった理由を教えてください 半野●あー、タイトルが。塩田監督が僕のマネをしたんですね(笑)。セックスシーンを撮らなかったのは撮る必要を感じなかったというか、その行為を見せなくてもいいと思ったからです。昔の、セックスシーンを省略した映画の描写を目指したってところもあります
このやりとりちょっと緊迫感があった、質問者もちょっと支離滅裂だったし。ちなみにセックスシーンは私も必要なかった口です。そこに至る迄のふたりのやりとり、言葉と表情で充分だった。ふたりが切実に欲していたものは、一緒に食事をしたりゆっくり話したりといった日常だったのだと思えた。夢幻的な物語でもあるし、セックスシーンがなかったことはこの作品のエレガントさを象徴していたと思います。そうそう、この映画、とてもエレガントだった。タイトルをマネしたってのの真偽はわからず(笑)。
Q●大学をやめて演劇の道に進もうと思っています、アドバイスをお願いします 半野・青木●あ〜、それは難しい質問ですね……(しばらく考える) 半野●でも……やっぱりそれが出来る環境にいるならやった方がいいと思います。僕はパリに住んでいて、移民や難民を多く見ています。彼らは明日生きていられることが夢だ、明日生きていられることが幸せだっていう。日本にもいろいろ問題はあるけど、今日明日生きていられる、ごはんがある、住むとこがある。それらが夢にはならない環境にいるのだったら、やりたいと思うことにとびこんだ方がいい 青木●若いころバックパッカーをやっていて。もう事務所には所属していたけどそんなに仕事もなくて、役者だって名乗れるほどのことはまだ何もしていなかった。何者でもない時間を過ごしていて……そんなときに旅行先のパリで半野さんに出会って。あのときの出会いがなければ今ここにもいないわけです。何者でもない時間に行動することは、決して無意味ではないと思います
Q●今後またいっしょに何かやる予定はありますか、どんなものをやりたい? 半野●具体的なプランは全くありませんが、絶対またやろうねとは話しています 青木●そうですね、やりたいと思っています。男と女の話は今回やったんで、男と男の……女と女だったら僕出られないので(笑)。人間関係が複雑なものをやりたい
半野●映画は残るものです。出来あがって公開して終わり、ではない。これからもだいじにこの作品を育てていきたいと思っています。有難うございました 青木●余韻を楽しんでください。有難うございました
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ふたりともえれえ長身でした。青木さんが185cmくらいあるのは知ってたけど半野さんもそう変わらなかったよ? 健次が着ている服のなかには半野さんの私物もあった、と何かの記事で読んでいたので体格が近いのかな? とは思っていたけど。や、音楽家でこんなおっきいと(偏見)ビビるわ。ふたり並ぶと迫力あったわ……。
青木崇高って役者さんは、象二郎だ、弁慶だ、左之助だ佐平次だ万吉だ(直近だとタコ八郎?)とそのとき演じている役の印象で記憶に残る。観る側が中のひとではなく、役柄のひととなりへの想像をかきたてられるような余白を常に持っているように思える。今回これに健次が加わった。アフタートークに現れた青木さんは健次の面影を(敢えて?)残している印象でした。作品の持つ空気をだいじにされてるのだろうな。これが『ちかえもん』のイヴェントだったらあの愛嬌たっぷりのキャラクターで出てきたと思うもの。そういうところ、作品に対して繊細な気遣いをされるひとなんだろうなと思いました。
豪放磊落な人物を演じることの多い青木さんですが、今回の健次のような役を観られたのはうれしいことでした。というか、こういう青木さんを観たかったとも思う。健次を演じたのが青木さんでよかった。
イヴェント終了後サイン会が催されました。半野さんに「また撮ってください」って声かけちゃった。「はいっ、撮りたいです、撮ります……撮ります!」だって。青木さんはも〜素敵な方であった。握手出来てうれしかった。気の早い話だけど、次回作楽しみに待っています。
・最終日を終えた半野さんのコメント|Facebook うう〜こちらこそ有難うですよ〜、だいじに憶えていたい作品です
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三度目の鑑賞は、山田撮影監督のトークを思い出しつつ。確かに背景に布多いわー、ほんと色が綺麗。映像としても美しいけど、これらの色(布)は理美が持ち込んだんだなあと想像するのも楽しかった。視覚的な意味だけではなく。彼女が来る前の健次の家には色の印象があまりない。色と光を理美がつれてきたんだな。
(公式twitterより。クリックすると拡大します)
本編にはないスチール用のショットだけど、このシーンも象徴的。健次(の住処)に色と光をもたらした理美は、悲しい過去と大きな影を抱えている。それが何なのか知らない健次は、光を全身で受けとめる。
はーもうスクリーンで観られないのか、さびしい! 今後も上映の機会があれば観に行きたいです。
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