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2016年11月10日(木) ■
三宅純@BLUE NOTE TOKYO
三宅純@BLUE NOTE TOKYO 二日目、2nd set。選んだ席の目の前に宮本大路の写真が飾られていた。写真の下には「May his soul rest in peace: Mr. Dairo Miyamoto」の言葉。開演前から胸がいっぱいになってしまう。宮本さん、平幹二朗、ピナ・バウシュ。彼らゆかりの楽曲が演奏されたとき、マライア(!)の村川聡が第一声を放ったとき、「時間を操作できるのが音楽の特権」という三宅純の言葉を思い出す。 幻の楽団が街にやってくる。演奏を終えると跡形もなく消え、次いつ遭えるかわからない。本当にいたのかな? 答えは自分の記憶のなかにしかない。こういうところ、自分のなかでは維新派に通じるものがある。『エレンディラ』 の、砂漠に現れ消える旅団のイメージもある。二年前、そのヴィジュアルイメージに新たに加わったものがある。『Lost Memory Theatre』 だ。 今回のステージは二年前を思い出すものだった。KAATの赤がBLUE NOTEの青に、といった色彩の変化はあれど、楽団のなまめかしいような妖しさは、記憶を呼び起こすのに充分だった。違ったのは、今回は劇伴という要素がなかったこと。ステージが客席から近いこともあり、演奏陣のリラックスした表情を見ることが出来たこと。裸足で現れたリサ・パピノーの呪術的な踊り、その存在感! プレイヤーは基本イヤーモニターをしていたが、三宅さんだけはヘッドフォン。ピアノとフェンダーローズをいったりきたり。フリューゲルホルンを手にステージ前方に現れたとき、「待ってました」と言わんばかりにフロアの空気が動く。どの曲だったか……決して広いとは言えないステージ、ソロに出てきた三宅さんの前に勝沼恭子がいた。彼はそっと彼女の背中に触れ、ソロに出るからちょっとスペースをちょうだい、というようなジェスチャーをした。そのあとの勝沼さんがとてもかわいらしかった。演奏は続いている。自分が立ち位置をずらしたら、後ろのストリングスのメンバーは客席から見えるかしら? そんな気遣いが感じられる表情と仕草。劇伴では見られない光景だ。 視線を合わさない三宅さんと金子飛鳥のスリリングなやりとり。コスミックヴォイセズからは三人の歌い手とコンダクターがやってきた。「ライヴがはねたあとのうちあげで延々唄ってくれるんです。いつまでも唄えるみたい」と紹介されたフォークロアも披露し、フロアがわく。パリ、LA、ソフィア、東京。国籍にすると全部で6カ国から集ったメンバー。静かで優雅なのに混沌としている。この感じ、何かを思い出す……いつだ、どこだ。 村川さんが登場したとき、それが像を結んだ。彼が現れた途端、場が一気にグランドキャバレーの空気になった。無骨な歓声がとぶ。応える村川さんのふるまいがまた粋。旧友ともいえる人物と、異邦人として出会ったひとたちとが一堂に会する。これは見た、かつて見た。BLUE NOTEから15分ほど歩けば辿り着く、南青山CAYで。あの時間が鮮やかに甦る。繋がっているのだ。エレガントなモンドミュージック。国を行き来し、ひとと出会い、ひとりひとりが立っている。雑種の逞しさ。 リサと勝沼さんが微笑み合い、抱き合う。リサがイヤモニを投げる。激しく踊り、開脚で着地する。イグナシオとヴァーニャが手をとりあってダンス、そしてビズ。誰もがこどものような笑顔。なんて幸せなアンコール。天国ってこういうところかな、と思ってしまうほどだった。そこには宮本さんがいる。平さんが、ピナがいる。音楽が時間を呼び戻す。あるいは、これからの時間を見せてくれる。そんな場所に居合わせることが出来て嬉しい。感謝、感謝。またいつか会えますように。 ----- セットリスト(Kiev@三宅 純公式サイトツイートより。1 、2 、3 ) 2nd Set 01. zed fate 02. the here and after 03. Deciduous 04. frozen tide 05. Easturn 06. Red shadow 07. A Lua pela grade 08. Tres 09. Miraculous Mandarin 10. Bre Petrunko 11. Easy To Let Go 12. flutter 13. Colors 14. Niji wa Tohku(vo:村川聡) 15. Petal Encore 16. est-ce que tu peux me voir? 17. Alviverde ----- 三宅純(flh, fender rhodes, p) Lisa Papineau(vo) Cosmic Voices : Vanya Moneva(conductor) Anna Natskova(vo) Veselina Kurtiyan(vo) Diana Teneva(vo) Ignacio Maria Gomez Lopez(vo) Ze Luis Nascimento(per) 伊丹雅博(g, oud, mandolin) Andy Wulf(fl, afl, ss, as, bs, bcl) 渡辺等(b, mandolin) 勝沼恭子(vo, chorus) 金子飛鳥(vln) 吉田篤貴(vln) 志賀恵子(vla) 多井智紀(vc) Guest : 村川聡(vo) ----- ・JUN MIYAKE : BLUE NOTE TOKYO 2016 trailer 3VIDEO ・宮本さんの代役について ライヴが決まった時点で出演が難しいことは予感されていたのだろうが、彼が亡くなる迄その名が消えることはなかった・JUN MIYAKE|LIVE REPORTS|BLUE NOTE TOKYO これは一日目のレポートかな。二日目の2nd Setでは村川さんジャケット脱いでた。出てきたときBLUE NOTEのギャルソンさんかなーと思った(ごめん)。 千秋楽では1st Setのゲスト、おおたか静流さんも最後は挨拶に出てきてくれました・三宅純はなぜ世界に羽ばたくことができた? エレガントな鬼才サウンド・クリエイターが明かす、新しい過去と懐かしい未来|Mikiki 「時間を操作できるのが音楽の特権。“過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい”」。キャリアも振り返る、まとまった濃い記事。宮本さんのお話もされているが、これはまだまだ、言葉にすることが難しいだろう・三宅純 INTERVIEW『日本中が驚嘆した「君が代」アレンジ その舞台裏とクリエイティブの真実』|Arban こちらもよい記事。「支持して頂いた皆さんのキャパシティに感謝いたします」の言葉、印象的だったな・おまけ、平さんのかわいらしい思い出 勿論この夜も三宅さんはくるぶし丈のパンツでした (追記:20161209)・SIGN & MESSAGE | Blue Note Tokyo ライヴを終えてのスペシャルメッセージ