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2016年07月01日(金)
大駱駝艦 天賦典式『パラダイス』

大駱駝艦 天賦典式『パラダイス』@世田谷パブリックシアター

天賦典式をこんな短いスパンで観られるとは〜。新作です。艦員たちの身体能力の高さがよくわかる公演でした。

全八場中の四場、時間もいちばん長かったと思われる『流れ箱(Falling Boxes)』が白眉。瞬発力ではなく持久力! ストレングス&コンディショニング、そしてフィットネス! 筋力と筋持久力、柔軟性が非常に顕著でした。重力に逆らってのゆったりとした動き、ポーズ。その持続。ジャンプ等の瞬発力でごまかすことが出来ない。あの姿勢をずっと保っていられるのがすごい。さりげなくやってるけど、あれ相当鍛錬してないと途中からブルブルグラグラなりますよ。これが ま っ た く、 な ら な い。 そしてポーズを保持しているとき、筋肉が盛り上がって見えることがないのが不思議。インナーマッスルがすごいということなのだろうか……がんばってまーす! すごいっしょ? すごいっしょ? てな顕示欲が全く見えない…これはすごい……。すごいばっかり言ってる。

白塗りも相俟って、その身体とポーズそのものが芸術作品のよう。同じスキンヘッド、同じまとめ髪、同じ衣裳でも、同じ身体はひとつもない。そしてダンサー各々の個性はしっかり目に見える。「天賦典式=この世に生まれ入ったことこそ大いなる才能とす」とはよく言ったものだ。そのブレなさ。

安部田保彦の美術も素晴らしかった。パラダイスはタヒチか? 白一色のセットに映し出された原色豊かな絵画はさながらゴーギャン。(20160715追記:おおっと失礼、アンリ・ルソーの『夢』でした! 不勉強お恥ずかしい)麿さんの終末思想がより前面に出てきている作品でもあったが、幕切れはそれらを自ら俯瞰するよう。絡まった鎖を「なんじゃこりゃ。なにやってんだ」「百均で買ったんだ」などとぼそぼそ言い乍らもてあます。アメコミから出てきたような扮装のダンサーたちはローラースケートを履き輪になって踊る。観客に向かって手を振る。思わず手を振り返す観客。屈託のない笑顔。もはや戦後ではなく戦前の日本のありようを見届けたいのは欲だ、興味だ、とでも言うような麿さんのまなざし。一部が欠け、もはや丸くない地球が現れる。土井啓輔とジェフ・ミルズの音楽は、世界の終わりのようであり、その世界の終わりを宇宙から眺めるようでもあり。パラダイスはどこにある?

今作のタイトルは『パラダイス』。同じ劇場で2月に上演された白井剛×キム・ソンヨン『原色衝動』のサブタイトルは「ダンサーズ イン ザ パラダイス」。宣美撮影・題字が同じ荒木経惟ということもあり、符合を感じるところも(画像並べてみた)。『原色衝動』は荒木さんの『往生写集−東ノ空・ꟼARADISE』から想起された作品なのでその繋がりもある。死の色が濃く、生の色も濃い。

『原色衝動』のあとに横町慶子さんが亡くなり、『パラダイス』の前に松本雄吉さんが亡くなった。財産が失われていく、思いは残る。

・『敬愛する松本雄吉が逝ってしまった!』麿赤兒|大駱駝艦|Facebook