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2016年06月24日(金) ■ |
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『エスコバル 楽園の掟』 |
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『エスコバル 楽園の掟』@新文芸坐
やっと観られた〜。ドキッ☆婚約者の叔父は麻薬王! パブロ・エスコバルの伝記ものというつもりで観ると、あまりのスリラーぶりにひいーとなります。地上の楽園・コロンビアにあこがれ、カナダから移り住んだ青年が見たものとは。
そうなんです、このカナダ人青年の視点で、コロンビアとエスコバルが描かれるんです。この青年、非常に優しい子で、ちょっとひっこみじあんでもある様子。脚をわるくしたお兄さんと、美しい自然がそばにある暮らしを求めてやってきます。そこで遭った美しい女性。たちまち彼は恋におち、なけなしの勇気をふりしぼって(そう見えるとこがまたかわいい)アタックする。次第に心を通わせるようになったふたり、そして婚約。彼女は青年を叔父の屋敷に招待します。街の有力者、街のために尽くす偉人。この叔父がエスコバルなのです。
なんかすごいひとみたいだぞこの叔父さん。なんか…なんか……と戸惑うままに流されて、気付けばもう逃げられない。あれ、あのひとどこいった? あれ、今納屋の奥に血まみれのひといなかった? ひとの噂とチラ見せで、徐々にファミリーの脅威が明かされていく展開が怖い。こうなる迄になんとかならんか…と思うものの、いや、なんとかならんわねこれは……とも思わせられる。だって環境が違いすぎるもの。彼のこれ迄の人生とあまりにも遠いものだもの。それがこんな、ちょっとしたきっかけで、想像の遥か上の出来事に巻き込まれて。即応出来る筈もない。
ファミリーの一員として任された大仕事を前にして、青年はギリギリ迄迷います。それを決意に変えたのはひとつの偶然。案内役を務める筈だった男が怪我をし、代わりにやってきたのがその息子だったから。まだあどけなさの残る十五歳、だけど妻も子供もいる。楽園だと思っていた地で、必死に生きるもうひとつのファミリー。
青年を演じたジョシュ・ハッチャーソンがまたねえ、朴訥なぽや〜とした感じの子だから尚更ね…そんな子がこりゃいかん! と勇気をふりしぼって行動を起こすそのもの悲しさよ。映画だからひょっとしたら奇跡が起こるかも、大逆転があるかも、と淡い期待を抱くも、そう甘くはなかった。原題は『Paradise Lost』、彼が最後に見た光景がせつない。婚約者の彼女、あれからどうなったのかしら……。そしてエスコバルのその後――脱獄〜逃亡〜射殺という史実を思うに、彼が収監されるにあたって神父に語った言葉がズシンときた。コカインは「神の葉」とも呼ばれる。
この春はカルテルものが花盛りで、『ボーダーライン』と『カルテル・ランド』を観たあと『犬の力』を再読していた。そこからこれを観たもんで、南米麻薬戦争の複雑さにどんより。一筋縄ではいきませんね……。そしてこの三作中二作に出演している(というか残り一作はドキュメンタリーなので出てたらそれこそヤバい・笑)ベニシオ・デル・トロの無双っぷりよ。「あらゆる麻薬ものに出てる」と自分でも言ってますがホントにそうで、これ迄売る側、買う側、取り締まる側、中毒者と演じまくっている。もうこの界隈知り尽くしてると言っても過言ではなかろうが、今作では製作総指揮も務め、実在した麻薬王を怪演です。ほんとこのひとは物言わぬ顔が物語るわね〜! あんな目で見つめられたら蛇に睨まれた蛙以外何になれと言うのだ。言外が恐怖にしかならん!
とか言っといて、実はいちばん衝撃を受けたのはベニーの歌謡であった。やだうまい…美声……。リネさんに聞いてたんでいつだいつだとワクワクして待っていたけど、いざそのシーンになったら一瞬頭が真っ白に。そしてしばらく聴いていて「確かにベニーの声だけど、ほんとに唄ってるのかな……」と疑惑を抱くほどに。音の鳴りが違ったような気がしたのね。ここだけアフレコだったのかもしれない。で、帰宅後調べまわっていましたらまたリネさんに教えて頂きまして、IMDbに歌唱指導のクレジットがあるから間違いないと↓
・Escobar: Paradise Lost (2014) - Full Cast & Crew - IMDb ここの「Marta Woodhull ... singing coach to mr. del toro」てとこね。
やーんミュージカルも夢じゃないわ〜。そしてIMDb見てて思い出したが、今作にはハビエル・バルデムのお兄さん、カルロス・バルデムが出演しててえれえ怖いです。顔がバビエルよりもチェ・ミンシクに似てまして、『オールドボーイ』さながらのおっそろしい役でございました。
リネさんには小島秀夫さんのレヴュー動画も教えて頂きました。これ観てから行ってよかった〜有難い〜。
・HideoTube(ヒデチュー)第02回:小島監督の近況報告と映画紹介
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これで終わるのもつらいんで『ボーダーライン』もまた観ましたよね…(三回目)どのみちつらい。しかし『ボーダー〜』、スクリーンで観られるうちは何度でも観ておきたい映像美です。こんな二本立て組んでくれて有難う新文芸坐!
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