I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
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2016年06月19日(日) ■ |
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直枝政広×高橋徹也 |
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直枝政広×高橋徹也@風知空知
弾き語りツーマン。いーやーよかった〜。夏〜。誘ってくれたのは高橋くんだし、先に唄いたくなって、ってことでまず直枝さんから。
----- セットリスト(instagramから) 01. OOH! BABY 02. 市民プール 03. 幻想列車 04. I LOVE YOU 05. いつかここで会いましょう 06. 十字路 07. ANGEL -----
やーもう直枝さんの声、心臓わしづかみにされますわ。カーネーションは虫喰い状態で網羅出来ておりませんで、知らなかった一曲目からもうもってかれた。帰宅後即探して、『LIVING/LOVING』はここ数日ずっと聴いてます。赤いシャツが素敵、お似合い。「高橋くんフェロモンがすごいですよね…」「かっこいいですね…」とほめごろしかってなことを何度も言っておりましたがその言葉そのまま返すわ! フェロモンすごいのはあんたじゃ! いやもうやられた。地声の強さ、裏声の塩梅、ブレスの間、骨太の色気だだもれ。生々しいわ〜、素晴らしいわ〜。そんな声であの歌詞ですからね。で、声と双子のようなギターな! 骨太で生々しく色気がある。ポワ〜ともなりますわ。
既にステージにセッティングされている高橋さんのギターを見て「弾き語りでエレキですよ、スカしてますね〜」とか、「高橋くんのフェロモンに負けないように、アイラブユー連発の歌を唄います」とか対抗意識丸出し…というよりあれは大人の余裕だな。年長さんの余裕で高橋さんをいじったろう(ニヤニヤ)ってな感じが素敵でしたわ。といいつつ、「高橋くんとのライヴは気持ちよく唄えるんですよ、三年前所沢でやったときもそうで」「だから今日も気持ちよく唄える気がして、先に唄わせてほしいって言って」とも言っていた。「いつかここで会いましょう」は来月発売の新譜から初披露、出し惜しみなし。くだけたMCも楽しかったです。いや〜フェロモン……。
さて高橋さん。
----- セットリスト(暫定高橋さんのブログから) 01. The Orchestra 02. サマーピープル 03. 無口なピアノ 04. チャイナ・カフェ 05. 真っ赤な車 06. ブラックバード 07. 海流の沸点 08. 夏の出口 09. 犬と老人 10. いつだってさよなら -----
「真っ赤な車」迄ご本人がブログに書かれていた(そして直枝さんにスカしてると言われた・笑)新しいギター(Epiphone/ES-295)、以降はアコギ。新しいギターはいろいろ試しているというか感触を確かめつつやってる感じもしました。
それにしても……作品のなかの情景に聴き手をひきこむ力と言ったら。畏怖を通り越して恐怖すら感じる程。アコギを持ってからの「ブラックバード」〜「海流の沸点」では会場の空気が明らかに変わった気がした。風知空知はビルの四階、曇りとはいえ開演したときはテラスから外の光が差し込んでいた。徐々に夕暮れが迫る。まさに逢魔が時だ。手首を掴まれ、曲の世界にずるりとひきずり込まれるような感触。情景のなかの人物が、自分の背後で呼吸しているような気配。
「日曜日にライヴをすることって珍しくて、今日出かける前に『新婚さんいらっしゃい!』を久しぶりに見て……桂三枝って今坊主なんですね〜」。坊主もだけど、名前ももう三枝じゃないよ……。ほんとMCと演奏のギャップが素晴らしいですよね……。
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本編終了後、ふたりでお話タイム。「いやあ…僕が先だと思うじゃないですか…キャリアとか、そういう面からも……」「いやいや(ニヤニヤ)」「先攻のつもりでセットリスト組んでたんですよ…」「ははは。こうやって聴いてると、使うコードが似てるね! あと郊外を知ってる人間って感じ。俺もエレキで弾き語りやってみようかな」なんてやりとりから、「あの……ちょっと話しませんか。こういうところの方が話しやすい…楽屋だと緊張しちゃうので」と高橋さんが言い出す。以下思い出せるところを書いときます。記憶から起こしているのでそのままではありません。
「『新婚さんいらっしゃい』を観ていることに驚いたんだけど。テレビ見るんだ?」「どんなテレビ見てるの?」「映画は?」「鍛えてたりする?」「最近聴いてるもの」「好きな食べものは」「酒は」。話しませんかと提案したのは高橋さんだったが、質問攻めにしたのは直枝さんの方であった。「テレビ見ますよ! なんだろう…バラエティが多いですね。マツコ・デラックスが出てるのとか好きです(『夜の巷を徘徊する』とか)」「走ってますねえ、朝(このとき「あ〜(やっぱね〜運動してるのね〜)」みたいな直枝さんの反応が面白かった)」「呑まないんですよ、ノンアルコールビールが好きで」と微妙に噛みあわないんですが、『海街diary』がよかったという話と、若いころは平気だったのに歳とってから気圧に体調が左右されるようになったという話で意気投合。直枝さんは邦画をよく観るそうで、最近では『リップヴァンウィンクルの花嫁』が気に入ったとのこと。気圧によって出る症状は、高橋さんは頭痛、直枝さんはくしゃみだそうです。
面白かったのは高橋さんがカーネーションを知ったきっかけ。ギリギリ十代、19くらいのときに「埼玉のミュートマジャパンみたいな番組」で紹介されていたそう。“ミュートマジャパン”、共通言語として絶妙よなー。「『EDO RIVER』のころかな?」「いや、もっと前です。帽子被ってて、こわかったんですよ」だって。そっからだったか郊外の話からだったか、「やあ、今日、ゴメンゴメンゴメンゴメン♪ を生で(聴きたかった)……」みたいなことを高橋さんがボソッと言ったら「やる? 一緒に」と今からでも全然オッケーそうな直枝さん、「いやいやいや」と恐縮する高橋さんという図が楽しかった。秋にmolnでライヴをやるという直枝さんに「僕も何度かライヴやってるとこで、いいご夫婦がやってるんですよー、いいとこなんですよー。……あっ、僕、その日行ってもいいですか」という高橋さん、「おお! いいよいいよ!」(兄貴)と応える直枝さんも微笑ましかった。直枝さんは高橋さんの反応を楽しんでいるようなところもあって、「(ライヴの)告知をさせてください」「ちゃんと断りを入れるんだね。こういうところ紳士ですよねえ」とか「先生みたいだよね。服の感じとかも」とか、いじるいじる(笑)。微笑ましい。
真面目な(?)話としてはなんでそんな声が出るのか、そんなふうに声を出したいと高橋さん。「レコーディングに行くとき、車のなかでスティーヴィー・ワンダーを聴くんです。ズドーンと声が出る。直枝さんもそんな感じ」。応える直枝さん曰く「いや、俺もライヴはじめた頃は全然出なかったよ。やってるうちに出るようになった。あと前に腰をやっちゃった状態でライヴをやったとき…黙ってやり通したんだけど……そのときすごく声が出た(笑)。腰にサポーター(コルセット的な?)巻くじゃない、あれで体幹が動かなかったのがよかったのかな」。ひい、声が出たのはいいけどおだいじにしてください!
そしてイギー・ポップの新譜がよかったって話。な! な! QOTSAも宜しくな(何様)! そこからイギーとデヴィッド・ボウイの話に。「ブリティッシュロックが好きな感じわかる、イギーは違う(アメリカだ)けど……高橋くんはボウイが好きなんだよね」「ええ」「ボウイに似てるよね」「ええ、ええ(スルーしかけた)……え、えええ? いやいやいや!」てやりとりにはウケた。イギリスとアメリカはお互いの国の音楽を「洋楽」として聴いてるって話は興味深かったな。という訳でアンコールはイギー・ポップヴァージョンの「China Girl」でした。ハモりも素敵。
今回ふたりの演奏と歌を聴いたことで、曲調の展開(直枝さんの「コードが似てる」って言葉で合点がいく)や地声と裏声の切り替え等、魅力の共通項に気付いたのは収穫だったなー。声質は全然違うんだけど、歌詞=言葉がない箇所の唄いまわし…こぶしとかうなりの部分にはっとしたり。
いやーいい時間だった。夏は苦手だけど、ふたりの歌から夏の魅力を教えてもらった感じもした。
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前夜、twitterのTLに維新派・松本雄吉の訃報が流れてくる。公式に発表される迄拡散しない方がよいだろう(信じたくなかったということもある)と思い、ひとまず眠る。翌朝の朝刊には記事が出ていた。あの時間迄情報が漏れてこなかったのに朝刊に載っていたということは、報道機関にはきちんと伝えられていたわけだ。劇団にそうしたい事情があったのだと思う。維新派のSNSやサイトは全く更新されていない(6/21に更新)。経緯を知っていたらしい関係者の方たちも沈黙していた。
あの世代のひとが亡くなっていくのは自然の流れで、いつかは必ず、とは思っていても、今じゃなくてもいいじゃないか。なんで今なんだ、という思いが、怒りに変わりそうだった。やりきれない気分で風知空知に向かい、そこで高橋さんの「犬と老人」を聴いた。
僕はどうしても その列に 加わる事が出来ない それでも良いんだ 最後まで しっかりと見届けよう 手を振って見送るんだ この目に灼き付けるんだ 恥ずべき事は何も無い 胸を張って見届けよう
いつも胸に迫る歌詞だが今回は殊更きた。見送る側である限り、そうありたいと強く思った。
ワルいおっちゃん、松本さん。彼が日本のあちこちに出現させた街、そこに幾度か迷い込めたこと。蜃気楼のような旅団に遭遇させてもらえたこと。維新派の観客になれたことはなにものにも代え難い経験だった。感謝の念に堪えないが、それでも途方にくれている。
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