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2016年01月31日(日) ■ |
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『私の愛、私の花嫁』 |
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『私の愛、私の花嫁』@シネマート新宿 スクリーン1
原題は『나의 사랑 나의 신부(私の愛 私の花嫁)』、英題は『My Love My Bride』。本国では2014年に公開され、日本での上映はもうないかな〜と思った頃に劇場公開となりました。スクリーンで観られた〜しかも大きい方で〜(シネマート新宿のスクリーン2は視聴覚室規模。それがうらぶれててよいときもあるが)、やー、有難いことです。
普段は観ないであろうジャンルの作品なんですが(笑)チェックしていたのはチョ・ジョンソクが主演だから。『観相師』や『王の涙』で壮絶な人生を演じた役者さんです。観た順番が前後したので、『建築学概論』を観たときには「ふつうの子(つってもまあ、妖精みたいなポジションだったが)を演じてるのをやっと観られた! この子にも穏やかな人生があった!」と涙ぐんだ(心象)ものです。いやーもうたいへんだったんだもの、歴史大作で自責の念に駆られて喉を掻っ切ったり暗殺者に育て上げられた天涯孤独な身の上だったりとかさ……。
今回は現代劇のラブコメ。新婚さんがちいさな幸せをつみかさね、同じくつみかさなったすれちがいの上に爆発した不和を乗り越え、絆を深めていくほろにがよい話でした。オムニバス形式で、夫と妻がそれぞれ出会う人物との交流を通し、長い人生をともにくらす伴侶について考えさせられる。どちらにも長所があり短所がある。どちらも家の外…仕事先や友人たちとのつきあいで楽しい思いをしたり悔しい思いをしたりする、そして家に帰ってくる。話したくないこともある、でも話さなければ伝わらない。逆に言葉を交わさなくとも伝わることはある。
映画やドラマのよいところでもありますが、打ち明けられなかった悩みの原因を、当人の知らぬところで相手が知る出来事が必ず起こります。それを都合がいい、といじわるな目線で見る気持ちにならないのは、そういうこともあるかも、というさじ加減が絶妙だから。そして夫も妻も、周囲のひとびとに助けられて成長していく。結婚によって諦めていた、あるいは中断していた夢を少しずつ実現していく。夫が尊敬する詩人と偶然出会い交流を深めていくのも、妻が仕事先の生意気な生徒からちいさな一歩を踏み出すきっかけを受け取るのも、本人たちの素直さを反映するエピソードが随所にちりばめられているので嫌味にならない。脚本家と監督の優しさが伝わるなあ。いやーホント、現実もそうあってほしいよね……(おのれを振り返る)。
しかしこの映画が甘いだけで終わらないのは、コミュニケーションを怠った代償を払うことになるところ。それは今後の長い人生、何度も起こるであろうと暗示があるところ。受験を前にした十代の女の子、残りの人生を静かに過ごす老人。過去と未来から、夫と妻は現在を見つめる。
台詞のやりとりも、画面の切り替わりの編集もテンポがよい。新婚時代何度も繰り返されるズボン脱ぎ(ももひき履いてたりしてるとこが寒い地域を連想させていいね!)のシーンもよかったなあ。ウケたウケた。モノローグというか心の声も程よく、説明過多にはならない。だいじなシーンは役者の表情をしっかり見せ、観客が心情を感じとれるようになっている。主演のふたりがとにかくかわいらしく、根はいいヤツってのが伝わります。周りが助けてあげたくなる、そして相談に乗りたくなる。このひとたちには笑顔でいてほしい、と。
妻役のシン・ミナって『甘い人生』のファムファタルだった子か! 役柄のせいかもしれないが、このときはまだぽやーんとした印象でした。今は顔立ちがしっかりしてきたというか、意志の強さを感じさせる表情が印象に残りました。そんな子が弱って泣いたりするとねえ、もうショックで。ジョンソク(役ですよ、役)気付けよ! おめー自分勝手すぎるだろー! と味方したくなりますね。で、夫役のジョンソクくん。この子(と言いたくなる)は静止画より動画が断然よい……動きが綺麗なんですよ。クローズアップや編集が出来ない舞台出身だからなのか、全身を見られる意識があるように思う。しかしそれとは別に、動きから表情からまー愛嬌がありますわ。ごはん食べ乍ら詩人の話を聞いている斜め後ろから撮ってるショットで、もぐもぐ動くほっぺたの愛らしいこと。チャームだわー。そういえば劇中このMoMAの傘使ってた。お気に入りなのか、もはや私物なのか。私の傘もこれなんで嬉しかったわー。ベタなペアルックにもつい微笑んでしまう、本当にかわいらしい夫婦でした。そうそう、女優さんの方のファン・ジョンミンも出ていましたよ。
登場人物が、身近にいる友人のように思えてくる。愛すべき良作でした。
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