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2015年07月01日(水)
『野火』爆撃上映&轟音ライブイベント

『野火』爆撃上映&轟音ライブイベント@Shibuya WWW

『野火』が遂に完成、公開される。塚本晋也はほぼリアルタイムにスクリーンで全作品を観ている唯一の映画作家。新作が公開される度、その関連イヴェントで「これから何を撮りたいか」と問われ『野火』と言い続けていたことをファンは知っているし、ずっと資金が集まらないと言っていたことを知っている。だからこそ、完成したときは本当に嬉しかったと同時に、監督の執念にはただただ頭が下がった。そして、今公開されることにこそ意味があると思っている。信じて待っていてよかった、待った甲斐があった。

イヴェントの内容に関しては各ニュースサイトを。映画ナタリーのレポートはとても丁寧、シネマトゥデイは映画公開迄の連載記事(文末)もお勧めです。ここにはそれ以外で印象に残ったことと、映画についてのおぼえがきを。公開されたらまた観ますし、ずっと考えます。

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・塚本晋也が「夏が来るたびに上映される作品になれば」と語る「野火」上映&ライブ - 映画ナタリー

・リリー・フランキー、塚本晋也監督『野火』完成に「痛快」 大音量上映で観客を圧倒! - シネマトゥデイ
・塚本晋也『野火』が爆音上映!中村達也&石川忠のライブセッションも!フォトギャラリー - シネマトゥデイ

(20150708追加:速報ではなく詳報、細かいところも拾ってくれてます。有難い!)
・INTRO | 『野火』爆激上映&轟音ライブイベントPART1 トークショー(リリー・フランキー×塚本晋也監督)レポート

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トーク:塚本晋也×リリー・フランキー×森優作(進行)

当日いきなり司会進行をやれと言われた森くん、緊張もありガタガタです(笑)。実質話のハンドルを握ってたのはリリーさん。監督との出会いから森くん出演の経緯、撮影現場の様子等、話を振るのが上手い。観客が知りたいであろうことを的確に監督や森くんから聞き出し、スタッフがどういう貢献をしたかもさりげなく披露し、それに対しての感謝も忘れない。漢気があると言うか、ああ見えてやり手だわと感心した…是枝裕和監督や橋口亮輔監督の現場に呼ばれる理由を垣間見たような。リリーさんいなかったらどうなっていたか。以下記事になってなくて印象に残ったところ。記憶で起こしているのでそのままではありません。

リ:出会いは石井輝男監督の『盲獣vs一寸法師』。ここで塚本さんと接したことで映画の現場は楽しいと思えた、それが今に繋がってる
塚:僕もひとみしりなんで、控え室におはようございまーすってバーンと入ってくるひととかが苦手で…リリーさんはそういうとこなかったから
(その後石井監督の現場のフリーダムっぷりについて盛り上がる)

(20150704追記:どうでもいいこと話してたのを今頃思い出した。ジワジワ面白いので書いておく)
塚:ひとみしりの僕にリリーさんが話し掛けてきて、ふたりともうさぎを飼ってて「うさぎってティモテしません?」「(……!)ティモテ! しますします!」って盛り上がって仲良くなって……
リ:ティモテするよね〜
塚:ね〜。ティモテ〜(身振り)するんだよねうさぎ〜
森:ティモテって何ですか?(おいていかれる若者)
リ:今売ってないんだよね〜ティモテ〜
(場内大ウケだったが笑ってたのはまあ、そういう世代ですよ……)

(20150706追記:もうひとつ思い出した……)
塚:観たひとはだいたい二日間くらいぐったりして感想とか言わなくなっちゃう
リ:渡辺真起子さんが試写で観て、ぐったりして帰る途中にバナナを一房持って歩いてくる塚本さんに遭ってすっごい怖かったって言ってたよ
塚:あのときは疲れてて……
リ:疲れた顔で、バナナ一房ってのがすっごい怖かったって! なんでバナナ? なんで一房?
塚:僕朝ごはんバナナなんですよ。疲れてるときの栄養補給にもいいし……
リ:しかし一房……あーでも一本だけってあんまり売ってないか

塚:メイキングも撮ってるんだけど、食べてなくて疲れてて転がってる兵士を淡々と撮ってるだけだから何の盛り上がりもなくて…宣伝用に映像くださいって言われてチェックしたんだけど、使えないわ……ってとこばっかりで
森:撮影時は役柄もありすごく痩せてたけど、今は居酒屋でバイトしてて魚がおいしいまかないを毎日食べてるんで太っちゃって

リ:(森くんは)シンデレラボーイだよね、プーかと思ってたらヴェネチアのレッドカーペットって、親もビックリだよ。なのになりたいのは通訳なんだって…なんなんだよ
森:いや、映画、お芝居には関わっていたいと思ってるんですけど……
リ:どうしてオーディションに来たの?
森:ともだちから、LINEでこういうのがあるよって
リ:ゆとりだ、ゆとり。監督はどうして森くんを選んだの?
塚:(森くんを見て)こういうとこと、(作品中での様子)ああいうとこです。ギャップがすごいなって

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ライヴ:石川忠+中村達也

石川さんが鳴らすバックトラックに被せてインプロ。塚本映画のサウンドトラックからの引用も多く、「BULLET BALLET」の曲が聴けたのが嬉しかったなあ。ライヴで初めて聴いた。あのイントロでもうあがった。演奏するふたりをじっくり観たいんだが、ステージ後ろのスクリーンには塚本映画のリミクス映像が流れるもんだから困る(笑)。目が泳ぐわ。

それにしても、塚本さんの映画はすごく好きで全部観てるんだけど回数としてはそんなには観てない筈なんです。体力も気力も持ってかれるので日常的には観られないと言う意味で。なのに、あ、これ知らないって映像がなかった。かなりのカット数だったんだが…それだけワンカットワンカットの「画」圧がすごいんだなと。

金属音がすごいのは事前に分かっていたし最近ライヴ後の耳鳴りが増えてきたので耳栓用意してった。役に立った…耳栓いいですね、爆音の体感やヴォリュームは変わらず、キーンてとこだけカットしてくれる感じ。

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『野火』

トークもライヴも面白かったんだけどやはり映画が凄まじくて、終わったあと思い出せるのはしばらく映画のことばかりだった。皆観るといいと思う。私も公開されたらまた観ます。

開幕の頬を打たれる衝撃、それに続く病院と分隊の往復ループは少しユーモラスで、不条理劇に放り込まれた感が強い。しかしその不条理が現実のものでしかないと体感するのに、そう時間はかからない。のろのろと揉み合う傷病兵と医師の間に、何の予告もなく衝撃音が飛び込み、ひとがバタバタと倒れ、病院が爆破される。そこから主人公の地獄めぐりが始まる。否応なく戦場に放り込まれた人間の道行きだ。

原作のエピソードは残らずと言っていいくらい生かされており、構成を若干変えている(伍長と将校が被ったり、場所が移動していたり)。原作の、書き手の独白と言う面は抑えられており、主人公の考えていることは彼が時折ぼそりとつぶやくひとり言くらいにしか表れない。よって、辿り着いた教会で主人公が得たある種の啓示も、彼の内面に留まることになる。彼が食べることの執着を捨てていく過程、反して消し去ることが出来ない本能としての食欲は、ひたすら「状況」で伝えられる。するとどうなるか。

信仰、宗教観は自然に置き換えられる。ジャングルの濃密な緑、熱帯に咲く花の鮮烈な紅。自然の美しさは、人間がいることで地獄になる。人間は死ぬと物体になる。自然に還る。それらを滋養とする大地はますます生命にあふれ、空は、海はひたすら美しい。翻って、その物体を口にしようとする人間たちはひたすらみすぼらしくなっていく。その描写には容赦がないが、誇張にはならない。リリーさんがトークで「グロいって言われるけど判らない。あたりまえだよね」と言った意味が判る。生き物は死ねば腐る。死ななくても蛆が湧く。飢えれば共喰いもする。この状況を前にして、それでも理性を失わなかった、人間は素晴らしいなんてことをこの映画は一切主張しない。むしろ、それらが一切失われてしまうということをひたすら描く。失われたものは二度と戻らないと言うことを描く。美しいと思うのは自然の風景だけで、そこに人間の心が介入する余地などない。そのことが画面に焼き付いている。

以前twitterにこう書いたことを思い出した。そうだ、日本には塚本監督がいた。

塚本監督、終戦記念日とかに毎年上映されるようになればいいなと言ってた(それを「『ロッキー・ホラー・ショー』みたいに」と言っちゃう辺り、このひとらしいユーモアだ)。原作を中学生のとき以来再読するために買いなおしたら109刷だった。映画も同じように見続けられるといい。

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終映後に監督や出演者が出てきたときは「わー生きててよかった」なんて素で思いました。トークのときさんざんゆとりだなんだ言われてた森くんが、上映後の挨拶でいちばんしっかりしたいいこと言った。なんだかとても頼もしく見えた。心からの拍手を贈る。今作には参加していないようだが、フロアには川原伸一の姿も。資金がなくて気心知れたスタッフを呼ぶことが出来なかった、と監督が言っていたことを思い出す。配給も自分たちでやっていくとのこと。監督痩せたまんまだな、元々ボクサー体型だけど。身体には気を付けてください。映画を届けていくためにも。

去り際中村さんがひとこと「全部夢だよ、ゆーめ」。『BULLET BALLET』の台詞だ。シビれた。

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・連載『野火』への道〜塚本晋也の頭の中〜 - シネマトゥデイ
まだ続いてます。制作過程、バックステージを丁寧に追ってる

・INTRO | 中村達也(俳優・ドラマー)11000文字ロングインタビュー:映画『野火』について
このインタヴューとてもよかった