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2015年06月20日(土) ■ |
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菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール 結成10周年記念公演『歴史は夜作られる』第一夜 |
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菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール 結成10周年記念公演『歴史は夜作られる』第一夜@品川インターシティホール
----- 菊地成孔(vo、sax)、林正樹(p)、鳥越啓介(b)、早川純(bdn)、堀米綾(hpf)、大儀見元(perc)、田中倫明(perc)/梶谷裕子(vn1)、高橋暁(vn2)、三木章子(va)、森田香織(vc) -----
第一夜・楽団員たちとともに(演奏のみ/インストオンリー)、第二夜・客演者たちとともに(歌唱のみ/ソングブック)と言うプログラム。第一夜のみ行ってきました。…いや、発表されたのが一ヶ月前くらいでしたよね? もうちょっと早く言ってくれれば……実のところこの日も他の芝居を入れていたのだが、チケットを譲渡出来たので行けることになった次第。結構あたふたした。
初めて行くホールだったので事前にアクセスやホール構造を見てみたら、なんとなく段差がなさそうな気配…規模は違えど初台オペラシティのコンサートホールと同じ感じか……果たして入場してみればそのとおりでございました。前述のとおり出足が遅れたのでちょっと後ろ目の席、よって視界は狭い。このオルケスタはヴィジュアル系(菊地談)なので、あの楽器と楽団員が佇む光景をしっかりと目にしたかったがまあ今回は仕方がない……その分音に集中出来たのはよかった。音響もよかったですし!
今回おわーとなったのは、まあそれが当たり前だと言えばそうですがやはり演奏でして、10周年と言う時間を感じさせつつもかつてないフレッシュな演奏が聴けたところ。楽曲が本来持っているポテンシャルを引き出す演奏と言うものは、やはりプレイヤーに依るものが大きい、と言うところ。これも当たり前か。今回初めてこのオルケスタのスコア(「嵐が丘」)がリリースされ、菊地さんが「早川くんのソロも大儀見のソロも起こしてあるんで完コピ出来ます…出来るのか?!」と仰ってましたが(笑)、コピーは出来るかも知れない。でもそのコピーは決してこのオルケスタとは同じようには鳴らないだろうなと思い知らされました。しかし再び菊地さんが言うとおり、「楽譜は眺めて(読んで)楽しむ、と言うことが出来ますからね。オタマジャクシを追いながら脳内再生したり、音源をかけて聴き乍ら読んだり」。……そうなると、どの音源からソロの譜面起こしたのか気になりますけどね…同じ演奏は絶対にないからね……。 (20150623追記:スコア出版の紹介記事(リンク先)に「『ニューヨーク・ヘルソニック・バレエ』(2009)収録音源に基づく徹底的な採譜」と記載されている、とむんむんさんにご指摘頂きました。ほんとや…(節穴)有難うございます!)
なんてことをうだうだ考えているのは、今回菊地さんと鳥越さんのやりとりがすごかったんですよ。いやどのメンバーも毎回すごいけど…なんて言うのか……何故コンダクターの正面に、PTAの場合は鳥越さん、dCprGの場合はアリガス、NKDSの場合は鈴木さんがいるのかってこと迄考えさせられた。ベースはバンドの屋台骨であり、同時に現場監督でもある。演奏の渦中にいて、コンダクターのグルーヴを演奏者に伝達する。今回マルチBPMのどの拍を拾ってソロを載せるか、今迄と変えてきたところがあったんですが、菊地さんが先なのか鳥越さんが仕掛けたのかもはや判らない…菊地さんだったかなー。どちらにしろいちばん反応が早いのが鳥越さんで、そこからバンド全体のグルーヴがギアチェンジするさまが何度生まれたことか。
最初にやりとりと書きましたが、もはや演奏においては一心同体のようにすら感じました。「ルペ・ベレスの葬儀」の主旋律はサックスとベースのユニゾンなんですが、まーこれがピタリと合っているにも程がある…と言うか、もうなんて言うんですか、肌を合わせていると言う表現が最もふさわしいのではないかと思う程。このあたりリハで詰めたところもあるでしょうが、あの反応の仕方は身体に流れているグルーヴが同じだとしか思えなかった。身体(=グルーヴ)の相性がいいのだな、と官能すら感じさせる。その後のメンバー紹介で菊地さんが鳥越さんのことを「プライベートは全く知らないし、普段何をしてるのかも知らない。だけど演奏でだけは深く繋がっている」と評したのですが(ふいをつかれて鳥越さん「えっ、僕ですか?」となってた・笑)宜なるかなと思わされた次第。「孔雀」や「プラザレアル」での拍の入れ方も、ふたりして面白かった。
そうそう、今回菊地さんの二面性がよく表れていたような…ふたご座、AB型の左利きの男が、両利きっぷりを出してきたみたいな。個人的な見解ですが、左利きのひとを見るときって、その名残=野性みたいに思っているところがあります。ひとの手が、社会のルールが入り込めなかった名残。社会を構成するひとりではあるけど、どうしても顔を出してしまう野性。右を使うからこそ輝く左、みたいななー(おかしいこと言ってる)。実のところは判らないけど、今回指揮も右手で振る場面がちょっと多かったように思いました。
あと面白かったことと言えば、菊地さんが大儀見さんのサポート仕事を紹介しようとして、SLTを思い出せなくてLRと言ったところ。脳内でLとRの間に矢印が入りました(笑)。「生まれたときからエースで四番」、大儀見元にワタシは依存している、大儀見がいなければどんな音楽をして、どんな服を着て、どんな飯を食べればいいか判らない。てなことも言ってました。大儀見さんの休業中、菊地さんは彼の窓口になっていた。多分後見人としても動いていた。そういうところがあるひとだ。「キリング・タイム」の大儀見さんのソロ、素晴らしかった。
そうそう、この日唯一のヴォーカルを聴かせた「嵐が丘」ですが、ハンドマイクだったところにおわっとなりました。この曲でハンドマイクは初めて見たような…? JAZZ DOMMUNISTERSの方は熱心に追ってはいないのですが(つーか追いきれん!)その流れか? 声量もすごく増えていて、あと以前に比べてピッチが鉄壁に安定してる。御年52、「見かけは若いけど中身はボロボロです」なんて言ってましたけど、のびしろですね!(本田)
「パトロネージもスポンサードも受けず、木戸銭主義でこの楽団を十年維持出来た」ことに対する誇りと、聴衆への感謝と。自虐的に維持費なあれこれもぶっちゃけ、数日前知ったeweクローズのニュースを思い出したりもしました。ちなみに当日配布のパンフレットによると、ewe時代の音源はリマスタリングされ、秋にTABOOレーベルからリイシューされるとのこと。市場から消えないのはだいじなこと。その音楽を必要とするひとたちに届けられる道が断たれないことはとてもだいじなこと。
台所事情を聴いてもなお粋、醒めたエレガントな夢を見せてくれる楽団。またの夜を楽しみに。
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セットリスト(こちらの画像を参考にさせて頂きました。有難うございます)
01. 微音即興〜はなればなれに〜アルファビル〜即興 02. バターフィールド8 - MC - 03. 京マチ子の夜 04. 孔雀 05. キリング・タイム - チューニング〜8 1/2 - 06. 導引〜プラザレアル 07. 嵐が丘 08. 儀式 09. ルペ・ベレスの葬儀 encore 10. メウ・アミーゴ・トム・ジョビン
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