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2015年06月06日(土)
『不倫探偵〜最期の過ち〜』

日本総合悲劇協会『不倫探偵〜最期の過ち〜』@本多劇場

「ニッソーヒ」ももう五本目なんですね…と思ったのは、観劇後当日パンフレットのロゴにあしらわれた『VOL. FIVE』と言う文字を見たときでした。と言うか、それ迄ニッソーヒだと言うことを忘れていた。いや、観る前は憶えていた。観てる間に忘れた。これだけ笑ったニッソーヒは初めてだったからかも知れない。

えーとどう言えばいいかな。語弊があるかも知れませんが、手ざわりとしてはコントだったんです。描かれているのはまごうことなき松尾スズキの世界。その土地(今回は沖縄)だからこそ生まれうる澱、その澱に浸かってタフに生き抜く生活者から抽出された笑い。しかし今回は、それらがコントのフォーマットにレイアウトされているように感じたのですね。ブレイクに入るジングル(このジングルがまたキャッチーで、この日聴いただけなのに未だに脳内で鳴る! 刻み込まれてしまった!)、小窓(文字通り小窓がある)から語られる励ましのような解説、シャキーン! と効果音付きの決めポーズ。そして音楽の使い方。このリズム感、どっかで……。ここではたと気が付いた。シティボーイズだ。と言うか、天久聖一が演出したときのシティボーイズだ。

思えば今回松尾さんと作・演出を共同で手掛けた天久さんは『動かない蟻』の作・演出をしていた。『生きちゃってどうすんだ』の演出もされてますが、今回は出演者がひとりではなかったと言うこともあり、シティボーイズをディレクションしたときの印象に近かった。演出が舞台に与える影響は大きいなあ、とあたりまえのようなことに改めて感心した……と言うか、これ、シリーズとして今後も続けていけるんじゃなかろうか。不倫探偵・罪十郎も、その元相棒・赤星乱も一回きりでお別れするにはあまりにも惜しいキャラクターです。各々の過去や謎も思わせぶりですし、探偵ものですし、それこそ劇中の台詞にあったように「それからそれから?」と訊きたくなりますね。

人類が滅びる迄決して解決することはないであろう不幸のシステムも描かれていて気持ちが重くなりつつも、後味はカラッとしています。個人的には不倫探偵シリーズとして、ニッソーヒから独立したものも観てみたいですよー。

はーそれにしても片桐はいりが格好よかった。動きも美しい! あとやっぱ平岩紙がすごいわ……しみじみ思ったのが声のトーンで、ささやき声の通りっぷりのすごさ。軽やかなのに鋭く、キモの台詞はドシリと届く。シュミーズ女優(勝手に言ってる)としてのお姿も堪能致しました。役者の松尾さんをガッツリ観られたのも久し振りで、あの独特、と言うか松尾さんとしか言いようのない脱臼したかのような動き、声はやっぱり素晴らしいなー。そして二階堂ふみ。『不道徳教室』で驚かされたものですが、ホント舞台経験がまだ数本とは思えない威風堂々っぷりです。大人計画+松尾演出常連組のなかに放り込まれた今回も見事。叫ぶと台詞が聞き取れなくなったところが少しあったり、ギャグのタイミングがちょっとズレたりしてしまうところはあり、演じることでひとを笑わせるにはホント鍛錬が必要なのだなあ…としみじみ思ったのですが、いやいや彼女、スキルと精度さえ上がればもはや無敵やん…と思い至って震えあがりました。身体も切れるし今後が恐ろしい。

つくづく大人計画はリズム感が鋭いひとが多いな、と思った舞台でもありました。と言えば、今回すごい80年代な選曲でそこらへんもうらぶれ感あってシビれた。