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2015年01月17日(土)
『近藤良平のモダンタイムス』

芸劇dance ダンスファーム『近藤良平のモダンタイムス』@東京芸術劇場 プレイハウス

近藤さんの新プロジェクトである『ダンスファーム』に、小林十市さんが出演すると言うことで喜び勇んで観に行きました。現在はフランスで指導者として活動されている十市さんが久し振りに里帰り+舞台に立つ+しかも近藤さんと踊る! 貴重な機会です。昨年帰国されているときブログやtwitterにちょこちょこワークショップらしき光景をアップしていて、非公開で何かやっているんだなあとは思っていましたが、これに関連することだったのかな。

当初発表されていた出演者は近藤さん、十市さんと篠原ともえさん、たむらぱんさん。ここにスズキ拓朗さんら7名と、一般参加の30名が加わるとのこと。たむらさんが音楽担当だろうな、篠原さんは唄うのかな? 全く内容の予想がつかず。蓋を開けてみれば、41名の出演者全員がプリンシパルでありアンサンブルでもある、観ていてとても幸せになる作品でした。祝祭空間を前に、終始笑顔で観ていた気がする。

舞台上手にパーカッションの楽器一式、下手にアップライトピアノとマイク。ウクレレを手に近藤さんが現れて、弾き語りを始めます。こんにちは、ようこそ。どんな内容か判らないでしょう、とっちらかってますよ、でもこんな立派なところでやるのですから、ちゃんとした作品です。綺麗なプレイハウス、椅子の赤が映えますね、野田さんセンスい〜い。なんで僕が出て来たかと言うと、皆をなごませるためです♪ みたいなことをぽろぽろと。やがてダンサーたちが登場、開演です。

全員にソロがあったんじゃないだろうか? ノンストップの二時間弱、緩急自在でまったく集中力が切れずに観られた。地球に生きる人類、世界と人間が向き合う風景の数々。その世界観は流石の近藤さん。遠藤豊さんディレクションによる、プレイハウスの盆を活かし三分割された環状のセット、白いそれらに映し出される映像も美しい。

一般参加のメンバー、と言っても見るからに腕に覚えありのひとたち。そしてダンスは身体表現全般のことでもある。全員しっかり踊れるひとであり乍ら歌も唄うし楽器も演奏する。叫ぶ、喋る、跳ぶ、走る。またたくまにヴィヴィッドな色彩がステージに拡がる。その色彩には衣裳も大きく貢献。コスチュームディレクションを手掛けた篠原さんのポップな手腕が発揮されていました。身体の線をはっきり見せるもの、逆にふわりと覆うもの、パーツのこまかさとおおきさ。メンバーのキャラクターを捉えている。ヘッドドレス等のアクセサリーも劇場のサイズをよく考えたのだろうなあと思えるもので、ダンサーの動きに寄り添い、身体の表情を美しく彩る。

そうそう、篠原さんてすごい踊れるひとだったんですね! 舞台で何度か観たことあったけど知らなかった。動きが綺麗なだけでなく踊るときの表情がとてもゆたかで、ついつい目が行ってしまう。MCの役まわりも担当、観客の視線と関心を掴むのが巧い。ちなみに今回最前ド真ん中の席だったので、しっかり客いじりされましたよね…うまく対応出来たか自信ないけど、とてもフレンドリーに話しかけてくださったのでがんばりましたよ……。帰宅して調べてみたら、バレエ経験者でした。確かにあれはちゃんとやってるひとの動き、身体のやわらかさ。衣裳替えも沢山あったんですが、そのうちの一着は当時の衣裳をアレンジしたものだったそうです。十市さんとふたりで踊るシーンの色気のあること! 素敵でした。

十市さんは腰が痛い等の自虐ネタから始めておりました。コンテンポラリーで観ると言うのも新鮮。女性ファンにキャーキャー言われる寸劇? や、ドラゴンボール好きなところをアピール? したダンサー対決、ファージャケットを着て近藤さんのクレジットカードでお買いもの(笑)等、あのユーモア感覚も健在。しかし終盤、『アルルの女』「ファランドール」でのソロ(「十市最期の日」と言うパートだったそう)となると表情もまとう空気もがらりと変わる。ベジャール時代を彷彿させるもので、その気迫に息を呑むばかり。また踊るのが観られて嬉しい、と強く思う。次があるかは判らない。ここ数年、十市さんの踊りは毎回が最後なのだと思う。ご自身の振付かなと思っていたら、近藤さんの振付だったとのこと。近藤さんと十市さんが一緒に踊るシーンはもう、こんなものが観られる日が来るなんてと拳を握りしめましたよね…よがっだ……十市さんのコンドルズ跳び(あれね!)が観られたのも貴重!

前述のとおり弾き語りから始めた近藤さん、その後しばらく出番がなかったので、今回は進行に専念するのかなとちょっと不安になりましたが中盤からまた出て来てガッツリ踊ってくれました。衣裳がゆったりめのツナギだったのに、四肢の動きがシャープ。振りの大きさがはっきり分かる。身体に強靭な芯を持っている。たむらさんの胸元にはフクロウ。大きなシッポのついた衣裳も相俟って、ダンスの世界に住むケモノのよう。歩き方もかわいらしく、なんだかアトムの足音がしそう。ぽつんと立っている姿も絵になる。言葉を記号的に使いリズムを生む声と演奏、そして流麗な腕の振りも魅力的。

当日パンフレットには全員の顔写真。あ、あの面白かったひとだ、あのかわいらしかったひとだ。すぐに舞台上の姿と結びつく。41人もいたのに! 演者の力量は勿論ですが、これらをまとめた近藤さんの構成力に恐れ入った次第。

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・芸劇ch『近藤良平のモダン・タイムス』東京芸術劇場
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