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2014年11月27日(木) ■ |
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pafe.GWC 2014『歌舞伎ラボ 実験上演』 |
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pafe.GWC 2014『歌舞伎ラボ 実験上演』@学習院女子大学 やわらぎホール
受講してきましたよ〜。pafe.GWCとは『学習院女子大学 パフィーミングアーツフェスティバル(performing arts festival at Gakushuin Women's College) 2014』の愛称。今回で十周年だそうです。正門入口に学生さんたちが待っていて、次々に「ごきげんよう」と声を掛けてくれました。ホールに入場すると、既に前座の『聞かなくても損はしないけど、聞くと得をするかもしれない前座講義』が始まっておりました。「伝統芸能の歴史的名演を木ノ下裕一がマニアックにナビゲート」とのことで、美空ひばりとか義太夫の方(名前失念)の名演音源が聴けました。
さて開講。ちゃんとチャイムが鳴りました、久し振りに聴く音だ…なんだか背筋が伸びますよ。直前、同じ列に座って来たひとをふと見ると、新悟くんのご両親…そうです彌十郎さんと奥さまです。キエー緊張する(離れてはいたけど間に誰も座ってなかったので尚更)! 新悟くんの授業参観みたい(笑)。以下メモから起こしているのでそのままではありません、ご了承ください。明らかな間違い等あればご指摘ください。
皆さんラボらしく、白衣を羽織っての登場です(武谷さんは蝶ネクタイにスーツ、新悟くんは羽織袴の上に白衣。宣美の衣裳と同じ?)。
二部構成。まずは『歌舞伎ラボ』の活動方針と自己紹介。ラボは昭和八十九年に設立。今回の催しは学会研究シンポジウム、とのことでした。
--- 木ノ下裕一:所長・研究員 坂東新悟:研究員・歌舞伎研究部門室長 武谷公雄:研究員・現代演劇研究部門室長 関亜弓:理事長・進行 ---
武谷さんは早稲田大学の演劇サークルで土を食べたり裸おにごっこをしていたそうです。ははは、劇研をはじめとする早稲田の演劇サークルのイメージを裏切らない。新悟くんは歌舞伎界に送り込まれたスパイだそうです。何のスパイかはわからない。ふたりともあることないことしれっと言うな! 自己紹介の際デモとして、松谷さんが『麦秋』の原節子と子役、『北の国から』の五郎と純、『古畑任三郎』の田村正和、無声映画『雄呂血』の阪東妻三郎を模写実演。「田村さんとバンツマ、父子両方とも出来るんですね〜」と木之下さんがさりげなく解説。このときはゲラゲラ笑って観ていましたが、時間が経つにつれ松谷さんの「模写から役を作り上げる」技量をまざまざと思い知ることになります。
まずは学生からのアンケート回答をもとにディスカッション。「歌舞伎を観たことはある?」「観たひとは今迄に何回観てる?」「歌舞伎と聞いて連想することは?」「歌舞伎に対して思うことは?」の設問で、面白かったのは歌舞伎と聞いて連想することの三位が「海老蔵」だったこと。「六本木の件もありましたしねえ」と木之下さん、ギリギリなコメントをぶっこんできました(笑)。あかん面白い。しかし木之下さんのコメントは歌舞伎をはじめとする伝統芸能への愛が溢れまくっていて、こうしたツッコミも楽しく聞けてしまいます。
さてここから本格的な実演に入ります。歌舞伎と現代演劇の違いを4セクションに分け、武谷さんと新悟くんがそれぞれ演じてみせる。
1. 女形 新悟:歩き方、所作等女形の型を実演。流麗な動きにほおお…と言った声があちこちから。「内股にするため、膝に紙をはさんで歩くと言う稽古方法もあります」。お姫さまと町娘、老齢の女性が自分を指差す所作等、細かい型も見せてくれる。「お姫さまはおっとりしてる、町娘は元気がいい感じですね」。「じゃあ鬱っぽい町娘は? 鬱なお姫さまは? 気持ちは姫の町娘は?」と木之下さんがじゃんじゃんお題を出すと、ぽんぽん応じていく。これがちゃんと“そう見える”! 武谷:蜷川幸雄演出『王女メディア』、平幹二朗演じるメディアを模写。ちゃんと音楽もかかる。「男であることを隠さない女形なんですね」。
2. 身体 新悟:歌舞伎舞踊『鷺娘』、鷺足の型を披露。武谷「それ、鶴でも使えそう」。 武谷:『夕鶴』、山本安英演じるつうの模写。木之下「歌舞伎は様式、新劇は形態模写やね」、武谷「スタニスラフスキーシステムと言うのがあってですね!」、木之下「雀もできひん? 夕雀」「じゃあ孔雀は? 夕孔雀」、次々やってみせる武谷さん。「チュン♪」「いっちょにくらちゅのよ〜」とか言う。孔雀のときの声色は、木之下「美輪明宏に似てる」。大ウケ。
3. 台詞 武谷:鈴木忠志演出『トロイアの女』、白石加代子を模写。あまりに迫真のため、新悟「こわい!」。木之下「鈴木メソッドですね。身体と言葉が分離している」「こういうところは歌舞伎に近い。新劇よりもアングラの方が歌舞伎と共通性がある」。強力なメソッドなので、なかなかこの型が抜けないと白石さんが言ってた、って蜷川さんが言っていたなあと思い出す。 新悟:黙阿弥『三人吉三廓初買』、お嬢吉三の七五調「月も朧おぼろに白魚の篝かがりも霞む春の空〜こいつぁ春から縁起がいいわえ」。木之下「意味を考えちゃうと、何言ってるか解らないと感じますよね。調子(リズム)重視と言うか」、武谷「だいたい内緒にしとかなきゃいけない、お金をとったことを…」、木之下「言いふらしてる!」、新悟「台詞の意味をすんなり解らせないで伝えるために、まわりくどくなっているんだと思います」。
4. 劇構造 武谷:いやーこれは見モノでしたよ、岡田利規『三月の5日間』! 木之下さんとふたりでどんな構成の戯曲か説明している…と思いきや、いつのまにか劇世界のなか。どこから台詞だったか判らない。そしてさりげな〜く新悟くんが舞台に上がってくる。台詞を口にはしていないけど、あのだらっとした現代の若者のたたずまいはチェルフィッチュの出演者の身体表現! 貴重〜! 武谷「『おー』『あー』『えっとー』とか、ちゃんと台詞に書かれてます。あのだらっとした動きも全部ト書きで指定されてるんです」。木之下「新悟さんチェルフィッチュから出演依頼来るかもしれませんよ」。 新悟:実盛物語(『源平布引滝』)。新悟くんのこのかたり、声色が海老蔵さんに似てるな〜と思った。口跡はまた違うんですが。木之下「入口が違うんですよね。歌舞伎は『この強度で行きます! これはものがたりです!』って最初に見せてそのまま行くんですよね。チェルフィッチュはリアルからすうっと劇世界に入る」。新悟「舟も風も再現しますからね。自然現象を表す型もありますし」、木之下「扇子をバッと振ることで風が表現されたり」、武谷「強度がすごい」。
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休憩をはさみ、後半はこれらの手法を応用し『壺坂霊験記』第一景を実演してみる異種格闘技戦。「歌舞伎と現代演劇は共演出来るのか?」。新悟くんは和装、武谷さんは洋装の稽古着に着替えて臨みます。舞台の上には火鉢とスリッパ。『壺坂霊験記』は九月の『やごの会』で、沢市=彌十郎さん、お里=新悟くんで上演されたものが記憶に新しく、細かいあれこれを楽しく観ることが出来ました。
1. 沢市=武谷、お里=新悟。どちらも歌舞伎調 武谷さんの沢市、彌十郎さんの模写かな?
2. 沢市=新悟、お里=武谷。どちらも現代劇調 武谷「杉村春子調でやります」。「最初の歌は明るいものでやってください」と言う木之下さんのリクエストに、新悟くんはエアギターの「恋するフォーチュンクッキー」で応え大ウケ。その後もノリノリ、「ぶっちゃけ」とか「〜じゃん!」とか言う。それを受けて武谷さんもノリノリ。木之下さん笑いつつも「主張強過ぎ! 抑えて!」とダメ出し(笑)。「話が小さいね〜。渡鬼の音楽がかかる」。
3. 沢市=武谷=現代劇調、お里=新悟=歌舞伎調 武谷さん冒頭の弾き語り「涙のキッス」、新悟「サザンオールスターズなんか唄うて」とアドリブで応酬。木之下「選曲が安直だねー」。木之下さんズバズバ言いますが、合間にこの場面で沢市が唄っている歌詞の内容等をさりげなく説明していきます、こういうとこ流石。この辺りから、演者が作品の台詞は勿論その構造、言葉の意味を身体に叩き込んでいるのでどんな要求にもすぐ応えられるのだと実感してくる。と同時にお互いがお互いのジャンルを翻訳する実力にも感服。
4. お里の「くどき」を新悟くんが実演(歌舞伎調) 浄瑠璃(録音)が流れ、歌詞の内容をプロジェクターで映写。木之下「全身で表現するんですね。オペラのアリアみたい」。
5. お里の「くどき」を武谷さんが実演(現代劇調) 劇伴は同じ浄瑠璃。木之下「ジェスチャーになるなー、心情表現になっていかない」。
6. お里の「くどき」を新悟くんが実演(歌舞伎調) 劇伴を中村美津子「壷坂情話」で。木之下「タイトルから判るように、このお話からインスパイアされた歌なんですよね」。前奏が長く曲調も明るい。いまいち。
7. お里=新悟=歌舞伎調、沢市=武谷=現代劇調と歌舞伎調のミックス。「くどき」場面から最後迄通す 劇伴をJ-POP。木之下「なんだっけ、あのー女の子のヴォーカルのグループの、ELT?(ここに辿り着く迄にいろんな間違った名前が出た(笑)。木之下さんJ-POPには弱い様子)の歌の歌詞をくどきの替え歌にして、歌の上手な学生さんにカラオケで唄ってもらいました。上手でね〜、準備いいでしょ」。この歌詞ってのが突然の疱瘡でつらい暮らしを強いられたよね〜♪とか、それでもその目に光は差さない♪とか、もう、見事で(笑)。終盤には忌野清志郎「JUMP」もかかりました。ここらへん即興で対応したようです。こ〜れ〜が〜合ってた! ここらへん、木之下さんが『東海道四谷怪談』上演の際指摘していた「その時代における流行歌」と言うことですよね。当時の歌舞伎の舞台には、そのときの「ポップス」が流れていたのだから、それを現代劇に翻訳するなら音楽も今のポップスで成立するのではないか、と言う試み。
最後に、実演してみた感想を。
武谷「面白かったです。歌舞伎の身体は型を体感して理解している、だから柔軟に動ける。近代の劇は型がないので悲しい」。 新悟「型がないところから作っていく現代劇は模写等を駆使出来る。歌舞伎は鷺は出来ても、そこから孔雀をやることは出来ない」。
い〜や〜むたむた面白かった…木ノ下さんの探究心と発想力はすごいなあ。実験と言いつつちゃんと“見せる”ものになっている構成も見事。武谷さんの観察眼と、それを即身体に落とし込む技量にも脱帽したし、新悟くんが演じる現代劇が観られたのも貴重でした。ホントにチェルフィッチュから出演依頼が来たらいい!
口々に「面白かったわねえ」と言いつつ帰っていく方多数。次回があったらまた行きたい!
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メモ。
・歌舞伎ラボ公式サイト
・歌舞伎ラボ(pafe.GWC2014)(@kabuki_labo) twitterアカウント。稽古の様子などが見られます。期間限定で新悟くんもツイートしてたよー
・歌舞伎ラボ - Togetterまとめ
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