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2014年10月25日(土) ■ |
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『ポリグラフ ―嘘発見器―』『半神』 |
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『ポリグラフ ―嘘発見器―』@東京芸術劇場 シアターイースト
一昨年の初演がほんっと面白くて、「フランスに持っていければいいのに!」と書いていたら実現しましたがなー。しかもそのまま日本に持って帰って来て再演、願ったり叶ったり。キャスト、スタッフも変更なし、チーム・フキコシ/ポリグラフズ!
リズム、テンポにより磨きがかかり、構成も解りやすくなっていたように思います。上演時間も若干短縮されていたような…あと太田さんが唄う曲が変わっていたかな。初演を観て展開を知っていると言うアドバンテージがあったので、余裕を持っていろんな要素を楽しめたこともよかった。今回は“洒落っ気”と“スウィート”を堪能。森山さんと野良猫の格闘に笑い、森山さんがクラブのトイレで聴く演歌にニヤニヤし。そうそうここ、初演観たあとどのシーンだったか失念していたので思い出せてよかった(笑)。コカインをキメ、クラブミュージックで激しく踊り、暴力に満ちたセックスをして、ひとりきりになったところでド演歌がかかるギャップがせつないんですよね……。
このシーンですが、クラブのフロア、トイレのなか、防音ドアの中と外、と、音が見事に再現されているところもすごい。ちゃんとクラブで鳴る音に聴こえる。このリアルさは、舞台ではなかなかお目(耳か)にかかれない。台詞がなく、なおかつ森山さんの身体に説得力があるからこそ成立するシーンだと思います。吹越さんの音の扱い方、むっちゃ好きだなー。選ぶ曲調も、音の響き方も、そのボリュームの扱いも。
幕切れの映像に、宣美でも印象的に使われているカリグラフィーフォントで“fin”と記すところも、おフランスですのよと言う吹越さんの毒と洒落っ気を感じました。
ちなみに野良猫のパートは、フキコシソロアクト「坊ちゃんとアルゼンチンババアがキッチンでダンス・ダンス・ダ〜ンス」ネタのノウハウが活かされています。ムーチョ村松さんのスタイリッシュかつリズミカルかつユーモラスな映像と、プロジェクションマッピングのアイディアも素晴らしい。しかし吹越さんがすごいのは、それらアイディアと身体性を密接に結びつける演出力と、具現化する身体能力だと思います。共演者にもそれは求められ、森山さんと太田さんが選ばれた。納得。
そして“スウィート”、吹越さんのロマンティストな面が現れるシーン。デイヴィッドとルーシーが初めてキスする流れの緩急や、フランソワとルーシーが友人の一線を越えるシーンの甘いこと。セックスシーンも結構踏み込んだ演出なのですが、演者の動きに照れや躊躇がないので、こちらも安心して彼らの“役”を観ることが出来る。エロティックなのにスタイリッシュ。前日の「出口なし」に続き、異性愛者と同(両)性愛者の三角関係を観る不思議。
開演前の諸注意、ご挨拶、カーテンコールでの三者三様が見られるのも楽しいです。飄々とした吹越さん、かわいらしさを見せる太田さん、緊張なのかキャラクターなのか、無口で通す森山さん。
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『半神』@東京芸術劇場 プレイハウス
あの名作を日本のプロダクション、韓国のキャストで。てらいなく名作と言ってしまいますが、やっぱ名作、名作だよ……。言葉が違う、イヤホンガイドに慣れない、そんな戸惑いを軽く飛び越えてタンゴのシーンでは涙が出るし、音を作ってやろうと言う台詞には涙が出る。そして霧笛を奏でるマリアの声は、言葉の理解を超えるもの。
初めてマリアに心を寄せて観たような気がする。シュラと離れて一年と24時間、その時間を生きたマリア。シュラのように賢く、ものごとを理解し、両親の愛を理解し、自分がどうなるかを知っているマリア。演じたチョン・ソンミンさんが素晴らしかった。美しさと愛情を一身に受ける無垢の十年と、そこに意識が宿った一年と24時間。表情が変わる、目が変わる、声の力が変わる。
オーディションで選ばれたと言うキャストは個性派揃い。遊眠社版、NODA・MAP版と観てきていますが、歴代いちばんいい身体の風呂太郎を観ました(笑)モムチャンの国だ〜。しかし全員がモムチャンでプロポーションがいい訳ではない。それぞれの時間を重ねたそれぞれ違う身体。その身体から発せられる力のある声、惹き付けられる表情。舞台の上で躍動する身体。この公演、当初は字幕上演と発表されていたところイヤホンガイド上演に変更になったんですよね。野田さんは出演者を“見て”ほしい、と思ったのでしょう。字幕に惑わされず、視覚を全部舞台上に使えたのはとてもよかった。
しかしイヤホンガイドはなかなか難しい…吹き替えではないので目の前の役者の声はバリバリに聴こえているし、ガイドの声は同時通訳調なので感情表現がないのです。ストーリー知ってるひとはいいけど初見のひとはちょっと大変だったかも。録音ではなくリアルタイムで台本を読んで(アドリブがあったら付加して)いたようで、タイミングはカッチリ合うんですけど、ときどきガイドの方が噛んだりする(笑)のはご愛嬌。
そして公演前のインタヴューで、野田さんが「『ひとりじゃないの』に替わるピッタリの歌を韓国の歌謡曲に見付けたんだ」と言っていたシーン。わーん歌詞の通訳がなかったよー。と言うか、歌が始まったとき一瞬何か言ったんですよねーガイド。でも音が被って聴き取れなかった。曲名と歌詞を知りたいよう。あと「火曜サスペンス別荘シリーズ」てとこ、明洞で上演したときどうしたんだろ(笑)。
客席と舞台上がお互いに拍手を送るカーテンコールも素敵でした。
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と言う訳で芸劇に入り浸りの一日。合間にごはんどころの新規開拓も出来てよかった。
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