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2013年12月12日(木)
『汚れた血』

『汚れた血』@早稲田松竹

今これをスクリーンで観ることが出来るとは…早稲田松竹さん有難う!そしてこの企画の端緒であっただろう、レオス・カラックス新作撮ってくれて有難うですよ!ああ『ボーイ・ミーツ・ガール』も観たかった。

そんな訳で、「ジュリエット・ビノシュとの出会いはこの作品からだったなあ、この5年後にカラックスは『ポンヌフの恋人』を撮り、26年後に『ホーリー・モーターズ』を撮ったのだなあ」と言う気持ちで観ると言う作業がついてくる。アレックスの留守番電話のメロディーはプロコフィエフの「ロミオとジュリエット」で、今これを聴いて即浮かぶのはソフトバンクのCMだ。携帯電話なんて当時はなく、アレックスは固定電話のコードを極限迄延ばし外に出て、向かいのホテルにいるアンナの姿を追う。今では殆ど見ることの出来ない風景だ。喪われたものを思うせつなさと、それを今目に出来る嬉しさを思う。

フィルムはかなり傷んでおり、沢山ノイズが入っている。しかし映画のなかの光景や、登場人物たちは瑞々しいままだ。単純にうっわドニ・ラヴァンわっかい!かわいい!おはだつるつる!勿論ビノシュも!ミシェル・ピコリは今すっごい渋い面構えだけど、当時もいい感じの中年だなあ…惚れなおす……なんて思ったりもするけれど、それだけではなくて、とにかく若いのだ。構図や色彩の美しさは、若さ故に計算し尽くした感じにもとれる。勿論、ホンも若い。気恥ずかしくなる程の、登場人物たちの言動。その後自分が歩く道をまだ知らない監督が描く世界。

この監督が四半世紀後、『ホーリー・モーターズ』のような作品を撮るとは…と言う思いと、いや、彼の根幹はずっと変わっていない、と言う思いと。あの画作り、音楽との関係性、アレックスからオスカーへのバトン。そしてジャン=イヴ・エスコフィエの不在。そして何より、あの編集、あのリズム感。

デヴィッド・ボウイの「モダン・ラヴ」とともに疾走するアレックスをスクリーンで観ることが出来た。編集とリズム。夢が叶った、と言ってもいいな。嬉しかった。