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2013年08月15日(木)
市川海老蔵 第一回自主公演『ABKAI ―えびかい―』

市川海老蔵 第一回自主公演『ABKAI ―えびかい―』@シアターコクーン

・歌舞伎十八番の内『蛇柳』
・新作歌舞伎『疾風如白狗怒涛之花咲翁物語。〜はなさかじいさん〜』

『蛇柳』はとても久し振りの上演(1947年以来)だそうで、ほぼ新作と言っていいくらい一から検証しなおし、作っていったそうです。しかし異形の者と仏道の者の闘いと言う図式は古典芸能でよくあるもので、それに伴う動きや装置、衣裳等は馴染みのあるものでした。『土蛛』や『黒塚』と通じるものがあったり。これを観た翌日、Eテレ『にっぽんの芸能』の勘三郎・團十郎追悼特集を観ていたら、『娘道成寺』の押戻の構成と衣裳がとてもよく似ていた。大青竹で悪霊たちを追い払う場面ね。

新作『疾風如白狗怒涛之花咲翁物語。』は副題にもあるとおりはなさかじいさんの話なんですが、宮沢章夫のホンなのでただのはなさかじいさんで済む筈がないのであった。おとぎ話マッシュアップ!桃太郎も一寸法師も出てくる!白いいぬを紅で染め、名前はシロからアカに!鳴き声もワンからあややに!自然をだいじにしない人間とか、失って気付くものとか、ひとの噂から魔女狩りみたいなことになるとか、笑いを交えつつもじんわりくる。いろいろと自分を振り返る。ひとを刺して傷付けもすれば、花粉を運び新しい命が生まれる手助けをする虫の存在がポイントで、子役の福太郎くんのかわいらしさと達者な演技に客席がわいておりました。

かなり盛り沢山の内容だったので、わたわたしてしまっていた感じはしました。台詞での説明が多かったり。宮沢さんのtwitterを見ていると、年明けから何度も書きなおしたりしていたようだった。それは歌舞伎のルールに則ってのことであったり、上演時間を考慮してのようだったり、演出が絡んでのことだったりといろいろあったようなので、その流れもちょっと知りたかったりしました。どこがどのように変わったのか、カットされたのか気になるー、初稿とか読んでみたい。「あやや」の書き声は作者と演者どちらのアイディアなのかとか知りたい(笑)。

そして笑えるところ、狙ってるとことそうでないとこの境目が判らないところがまた面白くて……シロが死んじゃって桜色の灰になる場面がですね、いぬがサクラチップで蒸し焼きにされて薫製になったみたいな姿で…いぬの形のまま桜色のかたまりになるから。こう、なんて言うんですか、その前に「アカ」と言う名前から牛肉の「あか」を連想したりしてニヤニヤしていたものですから、尚更笑いのツボに入ってしまい。宮本亜門の無邪気さ炸裂!な印象もありました。宮本さんて引用がピュアと言うか、他のひとの作品から「このアイディアすごいなあ、僕のところでも使ってみたい!」と素直に出してくる感じがあって、憎めなかったりする。

フードコーナーにはABKAツサンドとかありました。