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2013年07月26日(金)
『FUJI ROCK FESTIVAL '13』1日目

今年は金土参加。天候は例年通りと言う感じでした、昨年が珍しかったんだよねえ。個人的には雨好きなうえ暑さがちょう苦手(夏を憎むくらいに)なのでなかなか快適でした。しかしごはんやおやつの時間に雨降りまくられたのには参った…この時間に食べとかないともう暇がってなときに限って降るのねー。ジェラートやアイスは雨空の下で食べたら溶けちゃうし、お皿がふたつになっちゃうおにぎりと豚汁セットは屋根がないとこでは厳しい……結果いろいろと断念。今回いちばんうめー!と思ったのは、真夜中下山して越後湯沢駅付近のセブンイレブンで買った揚げ鶏でした(笑)。

早朝出発、新幹線からいつも眺める高崎観音が靄に隠れて全く見えません。こりゃ今年の天気は荒れそうだ。何せ金曜日のヘッドライナーがNINですし。前日、苗場で彼らがリハやってるときに豪雨になったと言うあまりにもあまりな話が伝わってきていたので、装備万全で慎重に動こうと決める。

■SOIL&"PIMP"SESSIONS(FIELD OF HEAVEN)
十周年おめでとうございます。丈青の服にウケた。いつもか。ここんとこ丈青観てても雨が降らない、雨男の称号は返上か?嬉しいことです(笑)。タブくんの音が柔らかくなった気がする〜弱音がすごく綺麗なの!トップバッターが似合うバンド、これ迄何度フェスの開幕でこのひとたち観ただろう。幸先いいぞ。

入場するなりいきなり奥地の方に来てしまった。下手にのぼったりおりたりして体力消耗するのはあかん、今日はとにかくグリーントリがメインだもの。どうしようかね〜と言いつつ更に奥地に行ってしまう(笑)。塩漬けきゅうり(うまかったー)なんぞを食べつつ日陰を探してまったり。

■あがた森魚(ORANGE COART)
妙に聴き馴染みのある声とギターが聴こえてくる。コーラスがムーンライダーズっぽいなあ…と見るとあれは白井良明ではないか?更に聴き憶えのあるギターの音色。そしてコーラスの声…白井さんがいた上手側から下手側へ目を移すと、サムライと言うか野武士みたいな男がギターを弾いている。
あれ……く、窪田晴男ではないか…………。
いやもう駆け込みましたよ前方に!知らなかった!最近あがたさんとお仕事してるってのはFBでも窺い知れていましたが、フジにも来ていたとは。フジで窪田さんを観られるとは…私の原点ですよいやマジで!
窪田さんと白井さんのギターバトル迄聴けてしまいました。しかもあがたさんが話振ってくれて「晴男くん呑んでる?呑んでないか」なんて。「いや、呑んでます」だってあはははは。いつからこんな呑んべえキャラになったかねえ、夜遊び人ではあったが(今もそうだが)。
ライダーズからは武川雅寛さんも参加しておりました。あとベースが、あの演奏スタイル…白い手袋……あれ?あれ?と思っていたら、ex.マルコシアスバンプの佐藤研二さんだった。むちゃ豪華!手練のメンバーがぐいぐいグルーヴを拡大していきます。
そこへ一陣の風のように吹くあがたさんの歌。「大寒町」が聴けた、嬉しかった。「(いつもやるとこより)ひとが多くて誰に向かって唄っていいかわからない。来なくていいのに」なんて言ってました(笑)チャーミング。
おら幸せものだ…いやもう今日はいい日だね、いいフジになるね!

この辺り迄は天気もよく日差しも強く気持ちよく、そのままオレンジの後方日陰で昼寝。BGMはTHE SEA AND CAKE。贅沢。さてSPARKSですよ。前方へ行ってみると、いるわいるわ知り合いが(笑)皆好きねえSPARKS。共通の知人とのトラブルに巻き込まれて、ちょっと疎遠になっていたひととも笑顔で会えたのが嬉しかったな。元気そうで楽しそうだった、よかった。ヘイチンとも久々に会ったんだが(と言うかここ数年SPARKSのライヴ会場でしか会ってない・笑)アベンジャーズ(て言うかスターク社長)にハマっており映画からフィギュアからコミコン迄短時間でマシンガントーク。濃い。

■SPARKS(ORANGE COART)
今年頭の『TWO HANDS, ONE MOUTH TOUR』と同じ編成、兄弟ふたりだけのライヴです。ロン兄のエレピとラッセル弟の声のみでステージがキラキラに。ハッピーに溢れたステージ。それにしてもエヴァーグリーンな音楽…ご本人たちも若々しいしね。演奏する側は全く変わっていないのに、イマドキのEDMぽく聴こえるサウンドもあったりして…時代は巡ると言うことか。そしてラッセル、今見るとベネディクト・カンバーバッチに似ている…って、順番が逆だ。年始に観たときはそんなこと思わなかったのになあ(苦笑)。足取りも軽くダンスダンス、エレピのリフに乗って踊るラッセルの格好いいこと!そうなんだよーこのバンド、リフに中毒性がある。同じフレーズの繰り返しでタイム感が狂うと言うか、延々聴いてても飽きないどころか迷宮に入り込んじゃった感じでいっつ迄でも聴いてられそうになる。
ラッセルのジャケットで汗を拭くロン兄、にんまりダンスのロン兄も観られて大盛り上がり。あーキュートな兄弟!素敵な兄弟!
最後の最後に雨が降り出した。雨用の装備に着替えようと、観客がわたわたしてるときに丁度ライヴが終わっちゃったって感じでちょっと残念でしたが、皆ニコニコで兄弟に手を振ってお別れ。また来てね!

すっかり本降り、とりあえずヘヴンに行ってみたはいいがこの雨ではおやつも食べられませんよ!お昼暑かったのできゅうりしか食べてないのね〜今食べとかないともうあとがないのね〜と思うものの、屋根のあるスペースがないよ。パン屋さんでカットチーズを買い、お店の庇を間借りしてちまちま食べる。山って感じー。このチーズ前にも食べた憶えがあるぞ、おいしいよー。紙に包んであるってのがまた山っぽい。そのうち小降りになってきたのでオレンジに戻る。

■TOWER OF POWER(ORANGE COART)
わかっちゃいたがアホみたいにホーンが巧い!巧すぎてスタジオ音源のようにすら聴こえる!そしてヴォーカルのおっちゃんがノセ上手。いやんいけず!
バリサクちょーかっこよかった…あとデヴィッド・ガリバルディのドラムセットが面白かった、バスドラの前にもうひとつちっちゃなタム?が設置されてるの(これ)。どういう効果があるんだろう?キックの振動を伝えて倍音を出すとかかな…サブキックとロゴが入っているので検索してみたら、解説が見付かりました。
・バスドラム録音。サブキックとは!! - Selfish Sound labo
……マイクだったんだ!
グリーンのNINに間に合うようにと時間を気にしつつ観る。被らなければフルで観たかった…当然だが終盤に向かうにつれどんどん盛り上がる訳ですよ。離れがたい!うひーんと思いつつ下山。

移動中FLYING LOTUSをチラ見。ステージ前にスクリーン張ってた?音もギチギチで面白かったんだけどグリーンに行かねばならぬのだ。

■NINE INCH NAILS(GREEN STAGE)
雨がまた強くなったきた…雷もゴロゴロ言い出した……。SUMMER SONIC '09の雷雨が思い出されます。あれは面白かったわー、大変だったけど。
それにしても今このサマソニ09の日記を読み返して気付いた。ロビンが帰ってきた!ロビンの声とギターで「Gave Up」やら「Head Like a Hole」が聴けた!と感激しておりましたが私ロビン観てるんじゃん。そういえばそうだった…アーロンが辞めたあと、WAVE GOODBYEツアーはロビンが戻ってきてたんだった。初来日を逃しているので、「あの」メンバーを生で観られていないと言う無念が強過ぎるんだな(どう「あの」かは察してください)。そして今回ロビンだけ遅れてアナウンスされたから「帰ってきたー!」て印象が強過ぎた。自分の記憶が信用出来ない、トホホ。
しかしこうやってみると、なんだかんだでロビンも長いですよねNIN。今ではいちばんの古株だ、トレントが荒れ荒れだった(いろんな意味で)頃を知ってる唯一のメンバー。ああ見えてトレントもロビンのことを信頼してるんでしょう、いざと言うときは声掛けるし。レコーディングではどうか知らないけど、ステージではロビンの好きなようにさせてる感じですし。
さてそれはともかく今夜のステージです。
どんな構成、演出になるんだろう……と待つこと数十分。上手側すみっこに置かれたMacにビニールシートがかけられる。アレッサンドロが使うのかな。後方には大きな白い幕。あれに映像を投影するのかな。両サイドからスモークが流され始めるが、風が強くて上手側のスモークはどんどん逆流している(笑)。それにしてもいつ迄たってもステージがからっぽだ…スタート時刻を過ぎてもステージに楽器が設置されない。どうなってる?何かトラブルでも起きているのだろうか。
不安になった頃、スタッフがちいさなシンセセットとマイクを持ってきてステージ中央へ置いた。歓声が起こるがまだ何が何やら判らない、あれだけ?と思っていたら……なんか四角いひとが出てきた。黒のタンクトップ、黒のハーフパンツ。と、トレント!?大きなどよめきが起こる。スタスタ(テクテク?)中央に歩みより、おもむろに演奏開始。ええ、えええ?
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Setlist
01. Copy of A
02. Sanctified
03. Came Back Haunted
04. 1,000,000
05. March of the Pigs
06. Piggy
07. Reptile
08. Terrible Lie
09. Closer
10. Gave Up
11. Help Me I am In Hell
12. Me, I'm Not
13. Find My Way
14. The Way Out Is Through
15. Wish
16. Survivalism
17. The Good Soldier
18. Only
19. The Hand That Feeds
20. Head Like a Hole
21. Hurt
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その入場してきた瞬間が入ってないが、こんな感じ↑です。段々楽器が運び込まれ、ひとりずつメンバーが現れ、五人揃って暗転した瞬間、やっと「わわわっ、始まった!」と実感出来た。一曲目はまるでクラフトワークのステージのようなヴィジュアル。何しろどんな編成でやるかも謎でしたし、皆さんマルチプレイヤーですので最初から最後迄これで行くのか?と思いもしましたが……そうはならなかった。生音ガッツリのバンドサウンドあり、アイランがチェロを弾いたりロビンがリュート(かな)弾いたりとアコースティックな側面も見せる。サンプリングも今回は多用。ううむ、エイドリアン・ブリューが離脱しなかったらどうなっていただろう。
帰宅後、今回のステージはトーキングヘッズの『Stop Making Sense』からインスパイアされたものだと言うことを知りました(Nine Inch Nails Is Back Onstage, With a Vengeance - NYTimes.com)。成程!非常に演劇的な、究極のアナログである人力をフルに活かしたステージだったのです。その転換スタッフの多いこと。曲毎に編成が変わる楽器やステージセットを運び込んだり、はたまた片付けたり、6枚(確か)ある(追記:映像で確認してみたら、8枚はあった)襖状のLEDフェンスを裏から支えてスライドさせ、フォーメーションをみるみる変えていく。まるで黒子のようです。当然のように彼らは着ているものの色味も黒に統一していました。しかもドリフばりの素早い転換。このたとえ、若い子にはわからんか……。どれもがきっちり制御された動きです。ステージにはバミリテープがびっしり張ってあったそうです(映像でも確認出来る)。これは演劇ばりにステージと同じ尺のスペース使って入念に稽古(もはやリハと言いたくない)したんだろうなと思いました。段取りが山のようにある。ひとつ間違えればフェンスが衝突して、ステージ中断どころかケガ人も出るかもしれない。注目される再始動バンドのツアー初日、初お披露目の楽曲も多い。相当な緊張感もあったと思われます。ちなみに今回フジでは珍しいライヴストリーミングが行われ、NINのステージはフルセットで配信されたのですが、YouTubeでの配信にも関わらず視聴出来るのは日本国内のみだったとか。その後すぐフジテレビNEXTでのディレイ中継があったので、権利の問題でしょうか。やー、ツアー初日に日本を選んでくれて有難うトレント!
そんなふうに、ステージプラン含めて最新型のNINだったのですが、そのなかに過去のステージからの引用もあったのが嬉しかった。日本には持って来れなかったLights In The Skyツアーのステージアートが観られたのです。「Only」でトレントの顔にライヴでエフェクトかけるやつとかね。思えば初来日のステージアートの運搬費用ってトレント側の持ち出しだったんだっけか…なんてことも思い出した。見せたいものは見せたい!中途半端なものは見せない!て姿勢ホント素晴らしいし有難い。バンドのライヴアーカイヴとしても楽しめました。ここらへんフェスならでは。
そしてNINと言えばのPAスタッフ!もともとフジのグリーンはものっそ音いいんですが、いやはや今回もあの豪雨のなかめっさエグかった、音質も音圧も。特に「Reptile」はすごかった…モッシュピットより後方で観ていたのに、雨がバタバタ顔に当たる状況だったのに、それでも音圧で頬がビリッときましたよ。寒さでなく歯も鳴りそうな勢い。それに自然も味方(か?)したか、すっごいいいタイミングで雷鳴が轟くんですよ。「March of the Pigs」で“Now doesn't that make you feel better?”…ゴロゴロピシャーン!観客おおおおお、みたいな(爆笑)。もうこうなると面白い…ステージ上のメンバーには聴こえてたのかなあ。あれはよかったぞ!他では聴けないぞ!絵に描いたような稲光も何度も見ました、その絵になることといったら!
“We're back.”とぼそっと言ったトレント格好よかったなー。途中パーカー着たので寒かったんだね…と思いました……ロビンも途中上っ張り着たよね(笑)。やっぱ雨の苗場は寒いよね。オーラスは「Hurt」。そしてここにもアーカイヴ、スクリーンに映し出されたのは蛇の映像…あの映像だ!瞬時に了解した観客から大きなどよめきが起こる。

これね。いやはやこれには鳥肌立ちましたわ…何度目の鳥肌か。蛇以外のところは新しく編集されてたかな。死体等のエグい映像の比率が低くなっていたのはテレビ中継を見越してのことか、それとも二児の父親となったトレントの心境の変化か。最新型であり乍ら普遍性を併せ持つ。ここには確かに時代を、トレント・レズナーの音楽人生を眺望する“劇場”が存在していました。
ライヴが終わるとほぼ同時に雨が止んだ。夢見心地で宿に戻る。温泉入ってさっぱりして、おやつ食べて(やっとありつけた)ぼんやりテレビ観て、部屋の灯りを消す。“I would find a way”の歌声が耳に甦りました。