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2013年07月04日(木) ■ |
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『シレンシオ』 |
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『シレンシオ』@東京芸術劇場 プレイハウス
シレンシオと聞いて思い出すのはクラブシレンシオ(『マルホランド・ドライブ』)、ブルブルブル。沈黙、静寂を意味するsilenzio。と言う訳で不穏な予感を抱きつつ、ビクビクしながら芸劇へ向かいましたよ。
演者たちによってスライドされる机は、取調室の机になったり、食事をするレストランのテーブルになったり、ダンスのためのステージになったりする。照明は終始暗め、ソロを踊るダンサーを他の演者がハンディライトで照らす場面もあり、数々のイメージスケッチをオムニバスのように見せる。ダンスにはさまざまな動きがある。バレエ的なダンス、マイム的なダンス、超絶技巧を反映させる身体。ただ歩く、食事をする、日常の動作をステージで見せる仕様に変換する身体。ちょっとした仕草でその人物像があぶり出される。ハンドバッグをどのように持つか、カトラリーをどう扱うか。
男性三人、女性三人の衣裳はほぼ同じ。特に女性のワンピース、靴下の丈は全くと言っていい程に同じ。二階最前の席だったのだけど、序盤「原田知世さんこんなに背が高かったっけ?」と思ったら藤田桃子さんだった(苦笑)。やがて、各々の動きによって区別がつくようになってくる。反面男性陣は、同じような服を着ていても髪型と体格が極端に違う方ばかりだったので動く以前に区別がつく。その違いも面白かったなあ。何もしなくても個人が出てくる。女性陣の衣裳が制服的でもあった、と言うこともあるか。と思ったのは最近やなぎみわさんの作品『エレベーターガール』を見直したりしていたからですな。
首藤康之さんも川合ロンさんも、筋力が必要とされるポーズをゆったりと変化させていく、しなやかなダンスが印象的。対照的に梶原暁子さんは躍動感溢れるキレッキレのダンス。原田知世さんの前でテーブルに載り、踊る首藤さんの色香漂うソロにはグッときた。二階席からでも判る足の甲のラインの美しさ。観客に背を向けて首藤さんを見ている原田さんの表情を想像…いや、見えていたとしても無表情なのだろうが、その奥で何を感じているのかを想像する楽しさがありました。
ちょっと劇場が広いかなとは感じました。『日々の暮し方』くらいのキャパで観たかったな。と言えば、原田さんは『日々の暮し方』の南果歩さんのような、他のダンサーとの接触がなかった分その身体の必然性が見えづらかった。ダンサーに囲まれるダンサーではない身体の扱いが希薄に感じた。そこらへんもちょっと惜しい。継続して続けていくと見えてくるものもあるかも知れない。今回原田さんが声掛けしたプロジェクトだそうなので、一回で終わらず次もあってほしい。
暗闇のなかに消えて行く登場人物。「そして残るは沈黙」と言うハムレットの台詞を思い出しました。沈黙の先は死なのだろうか。彼らが融けていった暗闇を見つめる。プレイハウスはその広さの割に暗転がちゃんと暗くていいなあ。
それにしても隣のおっちゃんがいびきズーズーであった。なのにカーテンコールでむっちゃ盛大に拍手しておった。ずっと照明暗かったし台詞も殆どなかったからね……とは言えいろいろと納得がいかない(笑)いや、作品にではなくそのおっちゃんに。
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