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2012年09月22日(土) ■ |
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『ウエスト・サイド物語』シネマティック・フルオーケストラ・コンサート |
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『ウエスト・サイド物語』シネマティック・フルオーケストラ・コンサート@東京国際フォーラム ホールA
パンフが完売だったので、経緯とかもう少し詳しく知りたい…。WSS50周年(1961年製作)に際して持ち上がった企画が、LA、NY、シカゴに続き日本でも実現。最新のデジタル技術により、マスターから台詞、歌声、効果音は残し、オケ部分のみを消去。映像に合わせてフルオーケストラが演奏。映画製作の際作曲のみで指揮をしていなかったと言うバーンスタインが、改めてアレンジを施し、初めて指揮・レコーディングした1984年版のアレンジを採用、とのことです。
・歴史上初!!前代未聞の「ウエスト・サイド物語」 ついに来日!
オケの背後にスクリーンを設置してあるので、映像を観乍ら演奏することは出来ません。佐渡裕さんの指揮がたより。指揮者殆ど見ないで演奏されてるオケって結構あるけど(プレイヤーがいちばんたよりにしているのはコンマスだって極論もありますしね・笑)今回はキュー出し等結構リハしたのではないかなあと思いました。そして佐渡さんは、オケと合わせる前にも随分個人練習したのではなかろうか。歌に合わせる以前に、イントロがあるじゃないですか…映像にそのきっかけが入っている訳ではないから、このシーンのここからイントロスタートってキチっと憶えておかないといけない。映像の歌い手は、イントロがコンマ何秒ズレたからと言って待ってはくれませんからね。それともイヤーモニターとかできっかけもらってたのかなあ。
席が後ろの方だったので、そういう細かいところはチェック出来ませんでした。目は映画を観ていますし。それにしても贅沢な話…耳は演奏に集中してはいるけど、目は映像、心はストーリーに持っていかれます。
歌声はどこかの(確認出来なかった)スピーカーから流れている筈で、演奏は生音がステージ上から発せられている。しかし不思議と違和感がありません。ところどころ演奏と歌にディレイが起こり我に返る場面もありましたが、それがまたよかったりしました。むしろ歌の方が「タメて」唄っているように聴こえるのです。それがライヴ感になる。既に亡くなっているひともいる出演者が、本当にこの場で唄っているような錯覚…映画の素晴らしさに改めて感じ入りました。
本編をちゃんと観たのは小学校のとき以来。まず映像が綺麗なのにビックリ。人物は当時ならではのメイク(ドーランしっかり塗ってる感じ)でクラシックな感じがするのですが、風景の輪郭がクッキリしていました。デジタル処理で映像もクリーンナップされたのかな。フィルムならではの滲みが減っている感じで、これはよしあしかも。紫で統一されているプエルトリカン組の衣裳が色鮮やか。あとここ迄ガッツリミュージカルだったかと今更…踊るシーンは勿論、乱闘シーンにもしっかりとダンス的な振付があります。もとが舞台作品の映画化、と言うのが明確だったのだなあ。
ストーリーに関しては、大人になった今観ると、いちばん気の毒なのはアニタではないかともぎゃーとなる。ケーサツはジェッツびいきだし彼氏は殺されるしその彼氏を殺したのは彼氏の妹の彼氏だししかもその妹に請われてジェッツの連中に伝言を伝えに行くことになるし(ここで行ってあげるところがまたさ!)…で、毅然とし、ちゃんと話し合いをしようと行ったその先では結局陵辱されかかるし!いや…かかるじゃないわ、あれはもう陵辱だろう!そりゃもう白人大嫌いとかなるヨ!咄嗟に出たあの嘘はもー仕方ないネ!しかもこれ全部一晩のことですよ…つ、つらしま……。
しかし〜こうやってプエルトリカンを差別しているジェッツだってイタリア系移民。そしてトニーはポーランドからの移民なのですよ…劇中ポーラックって台詞もある。この呼称、個人的には『欲望という名の電車』での使われ方が印象深いので「わっ今ポーラックって言った!」とガーンとなったり。もおーなんて言うんですか、移民の国の複雑っぷりが…ホントのアメリカ人って何よってなものです。自分がアメリカ人と名乗ればアメリカ人!その誇りがアメリカの素地の筈なのに、結局は肌の色や見掛けで差別しちゃうんだわ、お互いを。やーもう皆仲良くして…それが出来れば苦労はしないわね……根深いー。
「アメリカ」がやはり象徴的で、当時は曲がとにかく大好きだったがこうやってストーリーの流れで聴いていくと、改めて歌詞の素晴らしさにガーンとなる。アニタに代表される女性とベルナルドに代表される男性、移民たちがアメリカの光と闇を唄う。女性たちはそれでもまだアメリカでやっていこう、アメリカは自由の国で移民も受け入れてくれる!と言うあっけらかんとした希望みたいなものが込められているけど、男性たちは諦めと憎しみの方が強調されている。その後ああいうことになる訳で、アメリカに踏み躙られていくアニタの心情を思うと胸が潰れるわ……いやもう。作詞はソンドハイム。ミュージカルに疎いので彼の名を覚えたのは最近で、そんな昔から活躍されている方だとはつゆ知らず腰が抜けました…って、このひとそもそも代表作が今作でしょうに。しかもこれ27歳のときの作品なんですね。す、すごい……。NY出身、ユダヤ系ドイツ人移民と言うルーツを知りまたじんねりしました。
それにしても「アメリカ」、名曲中の名曲で、単体で聴いても素晴らしいし慣れ親しんでいるものですが、今回改めて映画本編で聴けてよかったなあ。歌詞も振付も…いやもうここは感極まりましたよ。ストーリーがその後どうなるか知っているってのもあるけど、あのシーンの登場人物たちホント幸せそうなんだもの。人生って素晴らしいと思える、生命力溢れる一瞬が描かれている。
カーテンコールで佐渡さん涙ぐんでました。バーンスタインの最後のお弟子さんですから、去来する思いがあったのでしょうね。素敵なステージでした。
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